くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パワー・オブ・ザ・ドッグ」「アメリカの友人」(4Kレストア版)

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

画面の構図は抜群に美しいし、物語の展開も秀逸、なかなかの作品なのですが、配信映画の当たり前のように画質のクオリティが極端に悪く、本当に残念な映画です。監督はジェーン・カンピオン

 

牧場を営む兄フィルと弟のジョージ。兄はどちらかというと男くさく荒々しいが、実はインテリである。一方の弟は紳士然としているが兄ほどの頭の回転はない。ある時、使用人の男たちと食堂へ出かけたフィルとジョージだが、フィルが傍若無人に振る舞い、さらに食堂の女主人ローズの息子でいかにも美男子のピーターを揶揄う。フィルの言動に不快な思いをしたジョージだがみんなが帰ったあと一人泣いているローズを見て彼女に惹かれていく。そして間も無く結婚するが、兄のフィルは気分が良くなく、何かにつけ嫌がらせをし始める。そんなフィルの態度に次第に精神的に追い詰められていくローズは酒に溺れていく。息子のピーターが大学で学ぶべく牧場を離れ、時々一人になるローズはますます病んでいく。

 

やがて夏休み、ピーターが帰ってくるが、フィルたちに揶揄われる。ピーターはローズが弱っているのを見て、自分が守ってやると約束する。そんなピーターに次第にフィルは心を開き始める。フィルには今は亡き親友ブロンコへの憧れがいまだにひきづっていて、どこかピーターにその面影を見て、可愛がるようになる。乗馬も覚えたピーターは一人崖の向こうへ行きそこで炭疽病で死んだ馬を発見、その皮を剥いで持ち帰る。

 

一方、フィルはピーターが学校へ戻るまでに革のロープを編んでやると約束する。しかし、干していた生皮をローズが先住民にくれてやる。落胆するフィルだが、ピーターが、自分が生皮を持っていると言う。そしてその皮でフィルはピーターに革のロープを編んで仕上げるがその翌朝、体調を崩したフィルはそのまま死んでしまう。フィルは炭疽病にかかっていた。

 

葬儀の後、ピーターはフィルにもらったロープをゴムの手袋をしたままベッドの下に隠す。外ではジョージとローズがキスをしていた。こうして映画は終わる。なるほどそういうことだったかと思うラストです。

 

前半が少ししんどいのですが後半に進むにつれどんどん引き込まれていき、ラストはお見事と唸ってしまいました。フィルがピーターに惹かれるくだりはやや弱い気がしますがそれでもなかなかの秀作だった気がします。

 

アメリカの友人」

これはなかなかいい映画でした。赤、オレンジ、黄色を画面の至る所に配置した絵作りも美しいし、サスペンスをおしゃれに色付けした演出も粋で面白い。ちょっと長い気がしなくもありませんが退屈はしませんでした。パトリシア・ハイスミス原作のリプリーシリーズの映画化です。監督はヴィム・ヴェンダース

 

真っ黄色のタクシーを乗り付けてカウボーイハットの男リプリーが降り立つところから映画は幕を開ける。彼は年老いた一人の贋作画家のところへ行き一枚の絵を仕入れる。そしてオークション会場、リプリーの持ち込んだが高値になっていく中、後ろにいた額縁を作る男ヨナタンは、何かおかしいと呟く。しかし、結局絵は高額で落札される。オークションの主催者はリプリーヨナタンは腕のいい額縁職人だが血液の病気で余命幾許もないとつぶやく。

 

ヨナタンハンブルグの店で仕事をしているとミノという一人の男が現れ、パリで殺しをしてくれと持ちかけてくる。パリで専門医も紹介すると言われヨナタンは妻マリアンに内緒でパリへ向かう。そして駅でターゲットを付け回した末銃で撃ち殺す。戻ってきたヨナタンは今度はミュンヘンで殺しをしてほしいと依頼される。ミュンヘンからハンブルグに戻る列車の中で実行してほしいと持ちかけてくる。躊躇したヨナタンだが、マリアンに内緒でミュンヘンへ向かい、帰りの汽車に乗る。ところが、ことを起こそうとしてタイミングを外してしまいピンチになる。そこにリプリーが現れ、二人でターゲットとそのボディガードを殺して列車の外に捨てる。実はミノに依頼したのはリプリーだった。

 

戻ってきた二人だが、リプリーが加わったことがミノにばれたこととターゲットの属していた組織が復讐にくるからと、ヨナタンを連れてリプリーの邸宅で待ち伏せすることにする。夫の行動に不審を持ったマリアンはヨナタンと口喧嘩してしまうのだが、結局心配で探し回った挙句リプリーの邸宅にやってくる。救急車をカモフラージュにしてミノたちが襲ってきていて、返り討ちにした直後だった。

 

ヨナタンはマリアンの車に乗り、救急車には返り討ちにした死体を乗せてリプリーが運転し、浜辺までいく。そこで、救急車を燃やすが、ヨナタンとマリアンはリプリーを残して走り去る。ところが、運転している途中、ヨナタンは寿命が尽きて死んでしまう。残されたリプリーのカットから贋作画家のカットへ移って映画は終わる。

 

サスペンスだがおしゃれな映像で、そのアンバランスが独特の仕上がりになっている名作です。面白かった。