くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「GUNDA グンダ」

「GUNDAグンダ」

モノクロ映像と音楽を廃して環境音だけでつづるある農場の母豚と子豚を捉えたドキュメンタリーですが、とにかく、カメラがすごい。あそこまで動物に寄ることが可能なのかと思えるようなクローズアップで描写する映像はまるで動物の表情をとらえるかのような迫力があります。しかも、詩的な中にドラマがある展開に次第に引き込まれてしまいます。ドキュメンタリーは見ないのですがこの作品の評判につられて見に行って正解でした。監督はビクトル・コサコフスキー。

 

四角にくり抜かれた板塀、豚小屋でしょうか一匹の母豚が寝そべっている。まもなくして生まれたばかりの子豚が次々と出てきて、やがて十二匹くらいが、母親豚のお乳を貪り始める。最後の一匹は干草の中に埋もれていて、母豚に掘り出されるが、踏まれて足を怪我してしまう。

 

カットが変わり、ゲージから次々と鶏が出てくる。執拗に足の動きをカメラが捉える。しばらくすると現れたのは片足の鶏。しかも器用にすっくと立ち、羽を使いながら移動していく。場面が変わるとたくさんの牛が牛小屋から出て来る。蝿が群がって牛の顔にたかっていく。牛同士尻尾でお互いの顔の蝿をはらっていく。

 

冒頭の母豚の子供たちは成長して大きくなっている。もはやお乳もいらないのか、母豚は泥の中に体を沈めて、乳房の周りは泥だらけである。大きくなった子豚たちだが、母豚の周りにまとわりつきながら母豚と一緒に農場を移動していく。

 

母豚らが小屋の中で寝そべっていると、機械の音が近づいてくる。母豚が神経質に板塀を齧り始める。そして巨大な運搬車が豚小屋のそばに止まる。大きくなった子豚たちが運搬車に乗せられているようである、ここでも、映されるのは運搬車と豚だけである。

 

やがて運搬車に乗せられた子豚たちは母豚の元を去っていく。母豚はいたたまれないふうにあちこち動き回っては子豚の気配を探す。何度も小屋の中を覗いては外に出て来て子豚を探している。延々と続くクライマックス、そして、諦めたかのように小屋の中に母豚は消えていく。四角い暗闇だけが画面に残り映画は終わる。

 

ドキュメンタリーですが、物語が伝わって来ます。もちろん、母親の思いを想像するのは人間の勝手なエゴかもしれませんが、それでも、自然と胸が熱くなる。いい作品でした。