「ダムネーション/天罰」
映画史上最も美しいモノクロ映像というキャッチコピーで、確かに美しいシーンは多々あるけれど例によって退屈。タル・ベーラ監督のスタイルとなる、左右にパンしたり上下にティルトしたり、ズームアウトしたりをゆっくりと繰り返しながら、セリフや音楽が被っていく作風が確立した作品です。最初から最後まで、眠くなる自分との戦いでした。
石炭を運ぶ滑車が延々と彼方まで続く景色から映画が幕を開け、ゆっくりとカメラが引くと一人の男カーレルの後ろ姿となる。髭を剃ってある場所へ出かける。夫がいる歌手と不倫をしているカーレルは、彼女の部屋を訪れるが追い返され、酒場へ行く。酒場の主人からある小包を運ぶ仕事を紹介される。カーレルは街を離れたくないので、歌手の夫にその仕事を持ちかける。
雨が降る場面、水たまり、壁に染みる水の模様、人々の顔、歌手の歌う姿などなどを延々と捉えながら、カーレルの台詞で物語が進んでいく。酒場の主人から、小包の中身が開けられていて、量が減っていたと言われる。カーレルは全てを警察に届けて一人道を歩き去る姿で映画は終わる。
とまあ、こんな物語だったと思うのですが、とにかくカメラワークがゆっくり過ぎてしんどい。決して凡作ではないというのはなんとなくわかるのですが、それでも見ていてぐったりしてしまうのはこの監督の作品ならではでした。
「国境の夜想曲」
イラン、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影したドキュメンタリーで、正直、なんの知識もないとほとんど理解できない作品でした。監督はジャンフランコ・ロージ。
夜明け近く、派遣軍の兵士が掛け声と共に走っている場面から映画は幕を開ける。国境付近で見張に立つ兵士たち、彼方から聞こえる銃声の音、ISISに拉致された子供たちの証言や、今なお拉致され、母と極秘の通信を繰り返す娘、精神病院で演じられる演劇、彼方の戦火の明かりを背景に沼地を進む男のショット、水浸しになる道路を進む車、なんのナレーションもなくひたすら映像だけが繰り返される。映画は道に佇む一人の青年のアップで終わる。
ドキュメンタリーの出来不出来は判断できなかったけれど、緊張感は感じることができました。