くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「TITANE チタン」「シッダールタ」

「TITANE チタン」

とんでもない映画がカンヌ映画祭パルムドール賞を受賞した。と、もっぱらの話題の映画を早速見にいく。一体この監督、ぶっ飛んだ芸術家か悪趣味な表現者か、バカと天才は紙一重のその一重の線上にいることはたしかだった。スタイリッシュすぎるエロティックでグロテスクな映像、そして、音楽センスの良さ、画面作り、ストーリーテリングの秀逸さは素直に認めるが、果たしてこの物語はなんだろう。一歩間違えばZ級のホラー映画である。それが一級品の映像に昇華されている。唖然とする傑作だった。ただ、私はあまり好きではない。監督はジュリア・デュクルノー

 

一人の少女が車の後尾座席でエンジン音を口ずさんでいる。運転しているのは父親か、後ろの声がうざいのでラジオのボリュームを上げる。それに合わせて口ずさむ声を大きくするので、とうとう父親がキレる。その瞬間、少女がシートベルトを外してしまうので、父が後ろを向いて罵声を上げた途端ハンドルを誤って事故を起こす。手術で、頭に金属の輪を嵌められ、大手術の跡が伺われる少女のシーン。彼女の頭にはチタンプレートが埋め込まれたということで、頭に手術跡が残る。

 

場面が変わり、今やセクシーな女性に成長したアレクシアは、高級車の周りで妖艶なダンスを繰り広げるイベントのダンサーの一人として人気だった。この日もショーが終わり、シャワーを浴びた後帰ろうとすると一人の男が追いかけてくる。車に乗ったアレクシアに、ファンだと名乗る男は、窓から顔を入れて強引にキスをし、アレクシアもそれに応えるが、突然、髪留めしていた鋭利な櫛で男の耳穴から刺し殺す。死体を捨てた後、体が汚れたアレクシアは、イベント会場に戻り、シャワーを浴びていると、ドアを激しく叩く音がする。アレクシアがドアを開けると、ショーで彼女が踊ったキャデラックがライトをつけて止まっている。アレクシアはその車に乗り、車は激しく上下運動を始める。アレクシアはこの車とSEXしている。

 

翌朝、自宅で目覚めたアレクシアは、股間に油のような黒い汚れを見つける。まもなく、下腹に不快感を感じ、妊娠したように膨らんでいるのに気がつく。医師でもある父親が診察するが、冷たい視線を送る。そんな父親を部屋に閉じ込め、家に火をつけてアレクシアは出ていく。

 

アレクシアは、イベントで知り合った女性と体を合わせ、そのまま彼女のシェアルームへ招かれるが、そこでも、相手の女性を刺殺し、一緒に住んでいる男女を次々と殺す。そして、駅に向かうが、そこで彼女が指名手配されている看板を発見、洗面所で髪を切り、鼻の骨を折り、男のような姿になる。そして、どういう経緯か、息子を失って悲嘆に暮れる消防隊長のヴィンセントと出会い、彼の息子として暮らし始める。消防隊員らは、アレクシアを疑うが、ヴィンセントの強硬な態度に黙ってしまう。

 

次々と危険な任務をヴィンセントとこなすアレクシアは、いつの間にかヴィンセントを父親のように慕い始める。しかし、お腹はみるみる大きくなり、乳房から油のような黒い液体も流れ始める。必死で隠しながら生活するが、ある時、ヴィンセントは妻を呼び寄せた。妻はすぐに、アレクシアを女だと見破るが、ヴィンセントのことを頼むと去っていく。

 

アレクシアのお腹はどんどん大きくなり、それと共に女性としての母性が大きくなり、消防隊員と大騒ぎしている時に、踊ってくれと言われて、かつてのセクシーなダンスを消防車の上で踊って、隊員たちに引かれてしまう。

 

そして、とうとう陣痛が始まる。全てを見られたアレクシアはヴィンセントのベッドに行き、助けてと懇願、一時は去ろうとしたヴィンセントだが、戻ってアレクシアの出産を助ける。そして赤ん坊を取り上げるが、アレクシアは息を引き取る。ヴィンセントは生まれた赤ん坊を抱きながら、自分がいるから大丈夫だと言い聞かす。赤ん坊の背骨はチタンの輝きをしていた。こうして映画は終わる。

 

物語だけ追っていくと、ゲテモノホラーであるが、映像表現とドラマ演出の秀逸さ、シュールな演出は並の映画のレベルを超えている。優れた映像作品であることは認めるが、奇抜さで引き込むという安易さを私は受け入れられないものがありました。

 

「シッダールタ」

スヴェン・ニクヴェストのカメラが抜群に美しい。淡々と流れるストーリーは主人公シッダールタの人生を静かに捉えるだけで、そこにインド哲学が語られるというものの、それほど染み入る作品ではなかった。監督はコンラッド・ルークス。

 

シッダールタが、友人のゴーヴァンダと旅に出る場面から映画は始まる。ブッダの弟子に認められたというゴーヴァンダと別れたシッダールタは、商売を知り、カマーラという恋人もでき、船頭の弟子になって、ひたすら川を行き来しながら人生を見つめ直して行く。やがて師と仰ぐ船頭が引退し、ブッダの涅槃に立ち会い、そこで母を失った息子を得るが、親となるもののまた一つ親の悲しみを知る。船頭なき後、一人川を渡し始めるが、道を見失ったゴーヴァンダと再会、二人で川をすすんで行って映画は終わる。

 

静かに流れるインド哲学を見つめる一本という感じの作品で、物語にうねりもないので淡々と終わる映画です。上質の一本と言えばそれまでですが、退屈というのも正しい感想です。