くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」「マイスモールランド」

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」

とっても素敵な映画でした。ファッションが抜群に素晴らしいし、ニューヨークの景色を切り取った映像が洒落ている。しかもセンスのいい音楽で映画全体がリズミカルにかつ心地よく展開していきます。手紙の書き手が観客に向かって語りかける手法や、自然と挿入されるダンスシーンなども素敵、質の高い大人の映画でした。監督はフィリップ・ファラルドー。

 

黄色いステンドグラスの前でこちらに語りかける主人公ジョアンナのショットから映画は幕を開ける。詩人として作家デビューを夢みるジョアンナは勉強もがんばり、相当な成績で卒業、憧れのニューヨークへやってくる。時は1995年。しかし、出版社に勤めようとするが、出版エージェントの会社がいいのではと、ある会社を紹介される。

 

そこのボスマーガレットに気に入られ入社したが、新しいことを拒むマーガレットはパソコンより古臭いタイプライターでの仕事を推奨していた。この会社が扱う作家にサリンジャーがいた。マーガレットはジョアンナに、サリンジャー宛のファンレターの返事というか、サリンジャーがファンレターを受け取らないという手紙を送る仕事を与える。

 

何か違和感を持ちながらも、タイプライターでひたすら返事を書くジョアンナ。ファンレターの送り主が観客に語りかける演出と洒落た景色と登場人物のファッションにどんどん映画に惹かれて行く。そんな頃、サリンジャーから、30年ぶりかの新刊の出版の話が持ち上がる。マーガレットの代理人として電話で話すようになっていたジョアンナは、その出版にマーガレットに代わって奔走する。一方、ニューヨークでできた恋人ドンとの間にはいつの間にか溝ができ始めていた。

 

声しか知らないサリンジャーの仕事に一生懸命になるジョアンナだが、時折電話で話をするサリンジャーに、書き続けなければいけないとアドバイスされる。いつのまにかジョアンナは、サリンジャーに代わってファンレターの返事を描き始めるが、一人のファンから会社に怒鳴り込まれ明るみに出る。それでも首にしないマーガレットはジョアンナの才能を見抜いていた。

 

そんな頃、マーガレットの愛人で、ジョアンナも可愛がってもらっていた職場のダニエルがピストル自殺をする。落ち込むマーガレットをジョアンナは見舞う。

 

やがて、ジョアンナの努力が報いられ、エージェントとして独り立ちできるようになったが、兼ねてから、夢は作家になることと決めていたジョアンナは、これを機に会社をやめる決心をする。ドンとも別れ、自分が書いた詩集をかつてパーティで知り合ったニューヨーカー誌の友人に届け、自分の後任が決まるまではとマーガレットの元で働くジョアンナに、来客の知らせが届く。それは、旧友マーガレットに会いにきたサリンジャーだった。ようやく顔を見ることができて嬉々とするジョアンナの表情のアップで映画は終わる。

 

レストランで、かつての恋人カールとダンスをする場面に周りの人たちも踊る演出など、おしゃれな場面も散りばめられ、美しく切り取った景色に引き込まれながら、趣味の良い音楽に乗せられて行く。あっさりとしたストーリーで少々描き込み足りなく見えるところもありますが、全編、とっても詩的な綺麗な映画でした。

 

「マイスモールランド」

何を描きたいのかわからない薄っぺらい脚本と演出で、ダラダラとやたら長く感じる映画でした。主演の嵐莉奈がやたら可愛いのがかえって浮いてしまった感じのチグハグな映画で、脇役も適当な配置で全く本気が見られない一本でした。監督は川和田恵真。

 

クルド人の結婚式の場面から映画は始まる。サーリャとその家族も参列していて、風習として手に真っ赤な色をサーリャは入れている。埼玉県の普通の高校に通うサーリャは、将来小学校の先生になり夢を持ち、コンビニでバイトをしながら普通の生活を送っていた。バイト先で同じ高校生の聡太と出会いほのかな恋心も芽生え始めていた。

 

そんな時、難民申請の更新ができず、許可が却下されてしまう。仕事につけなくなった父は、以前の勤め先で警官に職質され逮捕されてしまう。東京のコンビニでバイトしていたサーリャも首になり、難民ビザが降りないことで進学も取りやめになり、友達の誘いでパパ活までしてしまう。そんな彼女を聡太は河原に連れ出し励ましたりする。

 

父は、本国に送り返されることを了解した。それは、父が日本を出ることで残った家族にビザが降りたことがあると知ったためだった。そんな父に最後の面会をするサーリャ。家に帰ってきたサーリャが見たのは弟や妹たちが紙で作った故郷だった。サーリャはそれを見て、新たな未来に行く決意を擦り。

 

何を言いたいのか。難民申請の不具合を訴えたいのか、難民たちの生活の窮状を訴えたいのか、苦境の中での主人公たちの物語を描きたいのか、なんともいえなく視点が見えない上に、ありきたりのセリフと展開にとにかく長く感じてしまった。難民申請の仕組みを全く説明していない適当な脚本も素人レベルで、普通の映画以下というレベルの一本でした。