くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おれの行く道」「ノロワ」「デュエル」

「おれの行く道」

たわいにないプログラムピクチャーで、なんの変哲もないストーリーと、気楽に仕上げた演出という感じの一本でした。監督は山根成之田中絹代の遺作である。

 

信州で大学に通う耕三が、父の一周忌で、成田で旅館をしている兄の家に帰ってくるところから映画は幕を開ける。北海道に住む祖母のキクも戻ってきたが、子供らは、キクの遺産を我が物にすべく積極的に老後の世話を申し出る。物語は三軒の子供たちの家をたらい回しにされながら暮らすキクの姿と、子供たちとのコミカルな展開が中心となる。

 

ところが、そんな子供たちにキクは、土地を売った金は全て老人ホームに寄付したと言ったことで態度が一変、邪魔者扱いされ始めたキクは北海道へ逃亡するが、末の子供の梅子が迎えにきたことでもう一度成田に帰ってくる。折しも、信州から耕三も帰って来るが、兄貴たちの態度が変わったことに腹をたて、自分がキクの面倒を見ると連れ帰る。途中、キクは、別に持っていた二億円の大金を耕三に預けると告白して映画は終わる。

 

なんのことはない、シンプルで普通のプログラムピクチャーで、当時大量生産されていた一本という感じの映画でした。

 

ノロワ」

これは参りました。アングラ劇のような演出で展開する復讐劇という感じなのですが、なぜ、どういう経緯かが全て削除されて、おそらく深い意味があるだろうセリフの数々とシュールな動きで表現されていく。赤、青の色彩演出と月の光、画面に赤く色付けしたりモノクロにしたりして描写する映像演出も非常に抽象的で、まさに芸術。凡作とは言わないが難解そのものだった。監督はジャック・リヴェット

 

本土から離れた島の海岸、モラグと弟のシェーンが打ち上げられている。シェーンは死んだいるようで、モラグはある復讐のための十三人のターゲットを求めてやってきたらしい。エリカという女性に推薦されて、海賊団だろうかのリーダーのボディガードとなる。

 

復讐の機会を探りながら一人また一人と殺していくモラグ。そして最後の最後、リーダー?もモラグと同士討ちで殺して映画は終わるのだが、果たしてこの理解で正しいのか。終盤はモノクロになったり、赤い画面になったりと、より複雑になって来るので何とも言えない感覚に囚われていく。しかも、演技が全て舞踏演劇の如く展開するし、第何幕の何場等のテロップを繰り返していくので、まさに舞台劇である。独特の映像体験になる一本でした。

 

「デュエル」

これは傑作でした。ファンタジーなのですが、赤と黒を基調にした空間の色彩演出が抜群に美しいし、鏡を利用した幻覚的な画面も秀逸、物語がちょっと不思議な話なので、惑わされる感がありますが、サスペンスタッチの出だしから次第にファンタジーに変化していく様に引き込まれました。監督はジャック・リヴェット

 

ホテルの受付の夜のバイトをしているリュシが玉乗りの練習をしている場面から映画は始まる。そこへレニという女性が現れ、一人の男性の写真を見せて調査してほしいという。リュシは早速、調査を始めるが、そこに自分の兄ピエールの存在を突き止める。ピエールはヴィヴァという女性と懇意にしていたが、レニによればヴィヴァは危険な女なのだという。一方のヴィヴァもレニのことを危険な女だとリュシに教える。実は二人は月と太陽の女王で、地上に生を受けるためのお互い魔法の石を探していた。

 

リュシの周りで、シルビアという女性が殺され、彼女の首に丸い石のアザがあった。さらに、エルサも殺される。ピエールは、リュシに魔法の石を隠してあるコインロッカーの鍵を託し、レニと対決しに向かうが、反撃され殺されてしまう。一方、石を手にしたリュシにヴィヴァが迫って来るが、リュシの手首の血が石に光を与え、ヴィヴァは消えてしまう。最後にリュシはレニと対決するが、リュシは自らの血を石にかぶせ光を放ってレナを倒してしまう。こうして映画は終わる。

 

物語自体はファンタジーですが、前半のサスペンスタッチの出だしと、男と女の話を絡ませたストーリーが深みを生み出しています。逆に、そのアンバランスがちょっと煩雑な話にしたという欠点もあるかもしれません。いずれにせよ、光と影、赤と黒を見事に画面に生かした色彩映像が実に美しい。見事な作品でした。