くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「生きててよかった」「チェルノブイリ1986」

「生きててよかった」

非常に荒削りな映画ですが、映画作りのセンスを感じさせる演出とストーリー展開がとっても良い作品で、ラストはどこか不思議な感動に胸が熱くなってしまいました。掘り出し物発見という一本でした。監督は鈴木太一。

 

暗闇にスパーリングのミットを打つパンチの音から、ジムで練習をする主人公創太の場面になって映画は幕を開ける。窓越しにとらえるこのオープニングが実にうまい。長年試合をしてきてボクシングしかない創太だが、ドクターストップもかかり限界がきていて、次の試合が最後だった。恋人の幸子に見にきてほしいとジムの会長が頼むが、幸子は創太の試合を見に行ったことがなかった。

 

そして試合に臨んだ創太だが、今回も負けてしまう。引退し、会長のコネで仕事についた創太だがうまくいかない。幸子との結婚生活もどこかギクシャクしたままだった。一方、創太と幸子の幼馴染で役者を目指している健児も、エキストラまがいの役ばかりで悩んでいた。創太のことで一人公園で飲んでいた幸子は健児を誘う。ひとしきり酔っ払った時、健児に映画のオーディション合格の連絡が入る。嬉々として帰る健児。

 

一方、創太は最初の会社を首になり、現場仕事をしていたがそこでも喧嘩をしてしまう。そんな彼に地下格闘技を仕切る新堂が近づいてくる。最初は相手にしなかった創太だが、行き場を失い、格闘技場を訪ねていく。そこで、素人相手に負けてしまう。自暴自棄に帰ってきた創太だが、幸子は体を求めてきた。しかし、うまく幸子を抱けない創太だった。そんな創太に幸子は、創太の試合の日はいつもセフレとSEXをしていたと白状する。

 

そんな時、一生懸命役作りをしていた健児に、映画中止の連絡が入る。そんな健児の前に、離婚してきたという創太が現れる。そして散々に殴りあった後、創太は、練習に付き合えと健児に言う。そして、創太は地下格闘技で再度チャレンジするべく健児と練習をし、そして、ついに勝つ。そのまま創太は地下格闘技で連戦全勝を続け、健児もトレーナーとして傍に立つようになる。ところが、ある時、新堂から、次の試合に負けるようにと申し出が入る。了解した創太だが健児は大反対する。

 

そして試合の日、健児は幸子の家を訪ね、創太の試合を見に来てほしいという。最初は拒否したが、考えてみると自分には創太しかないことに気がついた幸子は試合を見にいく。創太は、幸子の姿を認めて最後は試合に勝ってしまう。最初は嫌な顔をしていた新堂の顔にも笑みが浮かぶ。

 

カットが変わり、子供の時から遊びに来ていた創太の母の家で幸子はカレーを食べていた。そんな幸子に母は誕生日のプレゼントを渡す。それは、創太の部屋にあったのだという。創太は幸子と付き合っていた時、毎回誕生日に趣味の悪いネックレスを渡していたのだ。カメラがパンすると、そばには創太の遺影が立てられていた。そして、幸子は実はカレーが嫌いだったと母に話して笑いながら映画は終わる。

 

太夫妻、健児夫妻の二組の家族を描きながら、生きていくこと、本当に生きることを問い詰めていく。脇役の心理描写にも配慮した演出も丁寧で、映画全体が真摯に作られています。少々突拍子もない流れがないわけではないけれどその荒削りさが映画にバイタリティを与えた感じがします。面白い作品でした。

 

チェルノブイリ1986」

無駄にダラダラと長い感じがしますが、普通のパニックドラマでした。チェルノブイリ原発の事故を題材にしたフィクションならもうちょっとコンパクトに仕上げた方が良かったように思います。監督はダニーラ・コズロフスキー。

 

チェルノブイリ原発のすぐそばの街、美容院に勤めるオリガは消防士の元恋人アレクセイと十年ぶりに再会する。アレクセイは、執拗にオリガに迫り、家まで押しかけていくがそこで同じ名前の男の子と出会う。どうやらオリガと別れた時にできていた子供らしい。アレクセイは翌日のデートを強引に約束して帰るが、翌日現れず二週間が経つ。二週間ぶりに息子のアレクセイに会ったアレクセイは、8ミリカメラをプレゼントする。アレクセイはキエフに転勤が決まっていた。

 

オリガの息子アレクセイは友達と夜の原発の撮影に行くが、アレクセイの目の前で原発が爆発する。夜が明けて、酒を飲んだ帰りの消防士のアレクセイは、原発から異様な光が出ているのを発見し、通りかかった消防車に乗って現場に急行、そこでかつての同僚たちが事故に巻き込まれているのに遭遇する。その場の活動に参加した後、被曝した可能性があるので病院へ行ったアレクセイだが、街は緊急避難の対象となっていた。さらに原発内の排水弁を開かないと大惨事になるということで、作業に参加するメンバーを募るがアレクセイは躊躇する。

 

オリガの家に行ったアレクセイは、オリガの息子の体調が悪くなっているのを見る。そして街を脱出する途中のバスの中で、アレクセイは、作業員として参加し、作業員への報酬としてのスイスでの治療に息子のアレクセイを選んでもらうことを考える。

 

アレクセイは、原発内のチームと現場へ向かうが、電気システムによる排水弁稼働は失敗に終わる。とりあえず、息子のアレクセイはスイスへ旅立つ。外に出て、治療を受けるアレクセイは、オリガにことの次第を説明して、オリガの元を訪れる。しかし復縁を希望するアレクセイにオリガは冷たかった。アレクセイは、再度手動による排水弁操作のチームに参加することを決意しオリガの元を去る。

 

作業は難航、なんとか排水弁は開き、任務は成功するが水中から脱出できないままに気を失ってしまう。アレクセイが発見されたと聞いたオリガがアレクセイのベッドに行くと、全身火傷を負って横たわるアレクセイがいた。そっと添い寝をするオリガ。まもなくして、回復したオリガの息子アレクセイが帰ってくる。こうして映画は終わる。

 

同じ展開を何度も繰り返すという間延びしたストーリー展開ですが、不謹慎ながら退屈はしませんでした。