くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シング・ア・ソング!笑顔を咲かす歌声」「ハケンアニメ!」

「シング・ア・ソング!笑顔を咲かす歌声」

実話という制限もあるのだが、何ともまとまりのない演出、ラストに向かっていかない脚本にまいった。凡作というレベルの一本でした。軍人の残された妻の苦悩は見え隠れするものの、それも弱い。監督はピーター・カッタネオ。

 

大佐の妻ケイトがイギリスの軍事基地にやって来るところから映画は始まる。時はアフガニスタン侵攻の真っ最中で、それに対抗すべく多国籍軍としてイギリス軍も次々と出征していた。ケイトの息子ジェイミーは戦死していた。この日、新たな任務でケイトの夫リチャードも、新たに軍曹になったリサの夫も出征していく。残された基地で、毎日不安に過ごす妻たちをまとめるのがリサの仕事になるが、頼りないリサに何かにつけ口を出すケイトだった。

 

そして、何かをしようという流れの中で、合唱団を組織するということになるが、なかなかメンバーもまとまらないし、ストイックに指導しようとするケイトにリサも反発を隠せなくなる。そんな合唱団の姿を上官がたまたま見かけ、ロンドンの大ホールで毎年催す遺族の追悼イベントで歌ってほしいと招待される。ケイトらは歓喜して喜ぶが、折しもメンバーの一人サラの夫が戦死する。メンバーが落ち込む中、イベントへの出場もやめようというが、サラの激励で、再度みんなはオリジナル曲を作って臨むということになる。

 

家族からの手紙を寄せ集めた歌詞で曲は完成に近づくが、最後の最後、ジェイミーの手紙の言葉をケイトに無断でリサが入れたことで、これから出発という時に喧嘩別れしてしまう。しかし、ケイトの夫リチャードの温かい言葉もあり、気を取り直したケイトはオンボロの自分の車でリチャードと一緒にメンバーのバスを追いかける。そして無事イベントは終了、映画は終わっていく。

 

挿入されるエピソードがとってつけたようで、さらにクリスティ・スコット・トーマスが妙に浮いていて、映画全体に馴染んでいかない。熱演しているのはわかるがそれをまとめるのが監督の手腕なのですがそれができていないし、それぞれの人物の心の変化、全員がまとまっていく流れの理由づけなど何もかもがおざなりになっていて、とにかくアンバランスな出来栄えになった映画でした。

 

ハケンアニメ!」

全く期待してなかったのですが、普通のドラマとしてみるに堪える映画になっていました。アニメ業界の現実を、ややフィクションめいているとはいえ、ちゃんと描写しているのがいい。ただ、ストーリーやそれぞれのエピソードが一昔前の状態で、そのリアリティのなさゆえに映画は普通の作品になってしまった感じです。でも、劇中劇の形のアニメのラストシーンはなかなか胸が熱くするものがありました。監督は吉野耕平。

 

新人のアニメ監督として作品を発表することになった斉藤瞳が、その制作に向かってがむしゃらに打ち込んでいる場面から映画は始まる。天才と言われたアニメ監督、王子千晴に感動して県庁を辞めてこの業界に入った斎藤は、ようやく王子に対峙するまでになった。ここまでの展開が今ひとつ弱いのですが、そこは脚本のテクニックとして許します。

 

王子と一緒に出るイベントで、斎藤は、視聴率で王子の作品を超え、ハケンをとって見せると豪語してしまう。ここからは、必死になる斎藤とその周辺のスタッフとの軋轢や共感のドラマを描くと共に、対する王子と制作リーダーとのドラマも交えて展開する。ラストシーンでそれぞれのこだわりを熱意で納得させるというよくある流れの後、王子の作品が視聴率トップとなり、斎藤の作品は二位になる。エピローグで、その後のソフトの売上で逆転したシーンで映画は終わる。

 

非常にシンプルな話を二時間以上に引きにばした感があちこちに見られるのがちょっと勿体無い。アニメ業界の裏事情や、制作側の苦悩の姿などもまじめに描いていきますが、時に間延び感が見られる。クライマックスのそれぞれのアニメの最終話はよくできているのですが、全体をもう少し思い切ってコンパクトに集約すればもっといい映画になった気がしました。