くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「1640日の家族」

「1640日の家族」

思いのほかいい映画でした。物語のテンポが実にいいし、よくあるお話で、ラストも予想できるものなのに引き込まれてしまいました。お母さん役のメアリー・ティエリーの演技が抜群で、ストーリーを牽引していく。一見、わがままな女のようで、しっかりと大人としての存在感を見せるのが実にいい。なかなかの佳作でした。監督はファビアン・ゴルジュアール。

 

ジャングルを模したようなプール、大勢の子どもたち、大人たちが遊んでいる。ここに、一歳半から里親として一人の子供シモンを預かっているアンナら家族も息子、娘、夫のドリスらとにぎやかにあそんでいる。子供たちも幼いシモンのことが大好きだった。とっても微笑ましい場面から映画は幕を開けるが、ここの描写が実に上手い。

 

月に一度、シモンは実父のエディと過ごすことになっていたが、ある時、エディはシモンを引き取って育てたいと申し出てくる。妻を無くして意気消沈し、シモンの世話ができなくなってアンナたちに預けたエディだが、ようやく立ち直り、シモンのことが見れるようになったのだ。しかし、アンナは困惑する。あまりにシモンに心がのめり込んでしまったためである。しかも子供たちもシモンを手放したくない。シモンもアンナから離れることは耐えられなかった。

 

週に一度エディのもとですごすようになったシモンだが、ことあるごとにアンナに寄り添ってくる。クリスマスが迫るある日、アンナたちは友人の別荘に行くことになる。そこは雪景色のある山深い小屋で、シモンも行きたいと訴えるが、クリスマスはエディと過ごすという取り決めもあり戸惑ってしまう。しかしアンナの本心はシモンも連れていきたかった。エディのところにシモンを届けたアンナは、クリスマスのことを話す。シモンも行きたいとエディに訴え、エディも何気なく承諾する。

 

山深い小屋で楽しく過ごすアンナたちだが、エディから連絡が入る。ああ言ったものの、シモンがいないことが耐えられないのである。警察沙汰になりそうになり、いつも間に立ち世話をする調停員を交えてお互いの誤解を解くようにする。そして、シモンは一旦アンナら家族の元を離れ、施設のようなところへ預けられることになる。

 

アンナとドリスがシモンを施設に届け、エディに引き渡すが、シモンはアンナたちの車を追いかけてくる。しかし、ドリスが強引にシモンを引き離し、アンナたちは帰ってくる。

 

後日、家族で過ごすアンナたちは、買い物帰りシモンを見かける。娘たちが追いかけようとするのをアンナが止める。この演出が素晴らしい。遠く、エディと歩くシモンの姿は、幸せそうな親子だった。こうして映画は終わる。

 

とにかく映像のテンポが抜群に良くて、妙な湿っぽさをあっさりとかわす演出が素晴らしい。決して一級品ではないかもしれませんが、意外なほどいい映画でした。