くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マックスとリリー」「離愁」

「マックスとリリー」

面白いといえば面白いのですが、相当に無理のあるストーリーと唐突なラストは流石にフィクションのレベルを超えている感じです。まあ、ロミー・シュナイダーを見にきているのでそれでよしとする映画でした。日本初公開です。監督はクロード・ソーテ

 

一人の刑事が何やら意味ありげに上司の元へやってきる所から映画は幕を開ける。マックス刑事が何か起こしたかのようなセリフが交わされ映画は始まる。強盗事件が起こり、マックス刑事が駆けつけるが時すでに遅く犯人を取り逃す。捜査の中で、マックスは中古屋へ持ち込まれた強盗に使われたと思われる車を持ってきた男を調べるためやってきたが、その男をに泳がせて尾行することを考える。しかし、その男はマックスのかつての兵隊仲間のアベルだった。アベルが金属やスクラップを盗んでは売っているコソ泥みたいな仕事をしていることを知ったマックスは、大きな犯罪を犯すように仕向けることで現行犯逮捕する計画を立てる。なんとも、あり得ない流れである。

 

アベルの愛人で娼婦をしているリリーに近づいたマックスは、自らを銀行員だと称し、何度も会う中で、小さな銀行の一支店に大金が持ち込まれる日があることを仄めかす。一方で、アベルには、いつまでもコソ泥みたいな仕事をしていても先がないかのように思わせるように持って行く。しかし、マックスとリリーはお互いに心を惹かれ始める。

 

アベルたちがその気になったらしいことを知ったマックスは決行日を決めるための情報を流す。やがてアベルたちは、自分達の計画通り銀行へやって来る。しかしマックスたちは完璧に待ち伏せをする。心配になったリリーは遅れて現場に向かう。あっという間にアベルたちはマックスらに逮捕されてしまい、駆けつけたリリーにマックスは真相を話す。

 

しかし、地元の管轄の署長はアベルたちも当然だが、共犯になるリリーたちも逮捕すると言い出す。マックスが取りなそうとするが全く受け入れない署長にマックスは銃を向け所長を撃ち殺してしまう。冒頭の場面になりこうして映画は終わって行く。

 

さすがに警察が犯罪を誘発するという根幹があり得なさすぎやし、ラストでいきなり署長を撃ち殺す刑事っていくらリリーが好きになったからと言ってという動機付けがちょっと破綻しています。それをそっちのけにしたら、まあ見ていられるかなという映画でした

 

「離愁」

さすがに名作です。列車の中だけというシンプルなストーリーですが、きっちりと人間ドラマを描き、ラストをしっかりと締めくくる。練り込まれた脚本とはこういう作品を言います。監督はピエール・グラニエ=ドフェール。

 

ベルギーに近い村、時は1940年、ドイツの侵攻が近づき、ジュリアンは、不安げに空を見上げて映画は幕を開ける。妻は妊娠していて、七歳の娘が一人いる。ジュリアンの家族は疎開を決め列車に乗り込む。女性と子供は客車に、男性は貨物車に乗る。やがて汽車は出発するが、貨物車の中でジュリアンは美しいアンナという女性と知り合う。

 

疎開地へ向かう汽車は途中の駅で客車を切り離し、ジュリアンと妻子は別々に目的地へ向かうことになる。ジュリアンは、次第にアンナと心を通わせ、とうとう体を重ねる。アンナはユダヤ人だった。途中、ドイツ軍の爆撃に遭い、貨車の中の人々が亡くなったりしながらも、なんとか終着駅に到着、ジュリアンは、妻が男の子を産んだという病院へアンナと向かう。ジュリアンは病室へ向かうが、しばらく待っていたアンナは、意を結してその場を離れ、一人バスで去って行く。

 

それから3年が経つ。ジュリアンは妻と子供たちと穏やかに暮らしていたが、突然、憲兵に呼び出される。そこで見せられたのはスパイ容疑で捕まったアンナの身分証だった。疎開で終着駅に着いた際、ユダヤ人であることを隠すためにジュリアンはアンナに妻の名前を使わせて、仮の身分証を発行していたのだ。一旦は知らないふりをするジュリアンだが、捜査官はアンナをその場に呼び寄せる。ジュリアンとアンナは最初は目を合わせず他人の振りをするが、ジュリアンは去り際に耐えられなくなり思わずアンナの頬に手を添える。アンナも堰を切ったようにジュリアンに顔を埋める。こうして映画は終わります。

 

他人のフリをして別れるエンディングもあったかもしれませんが、こういうラストもある。汽車で向かう途中、長閑な郊外で突然爆撃機が襲ってきて一瞬で人々が死ぬ場面や、さりげない悲劇を繰り返す描写が実に良くできています。悲恋ドラマでもあり、戦争映画でもあり、人間ドラマも垣間見られる。これが名作ですね。