くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サン・スーシの女」「夕なぎ」

「サン・スーシの女」

ロミー・シュナイダーの遺作。正直なところ、ちょっとしんどい作品でした。第二次大戦下の過去の物語と現代の裁判シーンとのバランスが悪いのか、いまひとつ物語にのめりこめないところがあって、結局、ナチス反対映画というテーマなのか、一人の男性にかけた強い女性のドラマなのか纏まりきらない感じの作品でした。監督はジャック・ルーフィオ。

 

一人の女性リナが空港へやってきて、この日、夫のマックスを出迎えるところから映画は始まる。マックスは足が悪く、いつもびっこをひいている。マックスは人権擁護団体を設立しその代表として講演を行いホテルに帰って来るが、そこへ封書が届く。中を開けてみると、パラグアイ大使の写真が同封されているが、それを見たマックスは突然出かけ、パラグアイ大使の元へ行く。そして大使の本名を確認すると銃で撃ち殺してしまう。大使はドイツ人でマックスが幼い日、パリのドイツ大使だった。

 

逮捕されたマックスは裁判において第二次対戦中の物語を語り始める。ユダヤ人だったマックスは父と散歩していて突撃隊に襲われ、父は殺され、マックスは足を怪我をさせられる。そんな彼を養子に迎えて保護したのが、ドイツ人のエルザと夫ミシェルだった。ミシェルは、反ナチスの記事を載せる新聞を発行していて、目をつけられていた。エルザは、マックスを育てながら、ミシェルの解放を画策する。

 

たまたまパリへ行く汽車にのっていてモーリスは、一人の男に金をパリのエルザに届けてほしいと頼まれる。その男はミシェルで間も無くゲシュタポに逮捕される。モーリスはエルザに金を届けた後もエルザのそばにいて、エルザはモーリスに支えられながら、ミシェル解放の方法を考える。やがて、ドイツ大使と親しくなったエルザは、大使と寝ることでミシェルを解放するように求める。

 

まもなくしてミシェルは収容所から解放されエルザの元へ戻って来るが、ドイツ大使は、その日ミシェルを街頭で撃ち殺してしまう。そして舞台は最後の裁判シーンへ。結局、マックスは執行猶予となって釈放されるが、傍聴人の一部はリナに罵声を浴びせる。テロップが流れ六ヶ月後二人は自宅前で銃で撃たれて死亡すると出てエンディング。

 

非常に組み立ての悪い作品で、しんどい。殺人を堂々とやった男が、理由がどうあれ、執行猶予となる下はさすがにラストシーンとしては納得できないし、六ヶ月後に亡くなったというテロップで救われるとはいえ、反ナチス映画であるのか、人間ドラマなのか、恋愛ドラマなのか、どこか焦点がぼやけた映画でした。

 

「夕なぎ」

これは面白かった。というか、とっても良い映画でした。フランス映画らしい、倫理観も何もない自由奔放なストーリーといえばそれまでですが、物語に勢いがあるし映画のテンポもいい。さらにイヴ・モンタンの存在感ゆえに映画が破綻せずに最後まで走れるからいい。ラストシーンは不思議と感動してしまう。名作という表現はおかしいですが、秀作でした。少女時代のイザベル・ユベールが出ています。監督はクロード・ソーテ

 

漫画雑誌を作っているダヴィッドが、友人の画家のアントワーヌのアトリエにやって来るところから映画は始まる。解体業で成功を収めたセザールはこの日恋人のロザリーを伴ってロザリーの母シュリーの三度目の結婚式に向かっていた。そこへ招待されたのがロザリーのかつての恋人ダヴィッドで、彼がいると知ってセザールも動揺する。式の後の披露宴に向かう途中で、セザールはダヴィッドの車と競争して事故寸前になってしまう。パーティ会場でもセザールは何かにつけてロザリーは自分のものだとダヴィッドに主張するが、そんなセザールの姿を疎ましく思うロザリーだった。

 

パーティの後、自宅で深夜までポーカーをしていたセザールは、ロザリーの姿がないことに気がつく。一心不乱にロザリーを探すセザール。実はロザリーはダヴィッドの仕事場に来ていた。セザールのダヴィッドへの嫉妬はどんどん高まり、陽気なセザールに惹かれる一方、若さに溢れるダヴィッドにも惹かれるロザリーの心も揺れ動く。

 

セザールは次第に憔悴し始め、とうとうダヴィッドのところへ行って、ロザリーと近々結婚すること、ロザリーは妊娠していると嘘を言ってしまう。そのことを知ったロザリーはセザールの元を去ろうとするが暴力的に必死で止めるセザール。それでもロザリーは出て行ってしまい、セザールはダヴィッドの仕事場に行って部屋を無茶苦茶にしてしまう。それを見たロザリーとダヴィッドはセザールの事務所へ行き損害金を取る。

 

ロザリーとダヴィッドは娘のカトリーヌと三人で暮らすが、居場所を突き止めたセザールがやってきて、海辺にアトリエを買ったから一緒に住もうと提案する。ロザリーとカトリーヌ、セザールは海辺で暮らし始める。しかしロザリーの心は空だった。そんなロザリーを見かねたセザールはダヴィッドの事務所を訪ねて、ダヴィッドを無理やりアトリエに連れてきて、一緒の生活が始まる。次第にセザールとダヴィッドも友人同士のように心が通い始める。そんな姿を見たロザリーは、二人を残してカトリーヌを連れて去ってしまう。

 

時が流れ、海のアトリエも閉めて、セザールはパリに戻ってくる。ダヴィッドは、新しいアトリエで仕事を続ける。ある時、セザールはダヴィッドを訪ね、二人がセザールの自宅で食事をしていると、表にロザリーが現れる。ロザリーは、ゆっくりと門をくぐってきて映画は終わる。

 

よく考えると倫理観が破綻している気がしますが、そこがフランス映画という感じで突っ走ります。二人の男性に揺れ動く一人の女性、一人の女性を愛した二人の男の心の葛藤、そして男同士のドラマ、全てがラストシーンで心地よく締めくくる。映画の作りを徹底的に利用した作劇が見事な一本です。面白い秀作という作品でした。