くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「12日の殺人」「πパイ」(デジタルリマスター)

「12日の殺人」

ミステリーというより、人間ドラマという範疇の作品で、特に映像演出が優れているとかもなく、物語の構成や展開も面白いわけでもなく、鬼気迫るおもしろさもカリスマ的な魅力もない映画だった。監督はドミニク・モル。

 

トラック場を自転車で疾走する一人の青年の姿からカットが変わり、2016年10月12日、グルノーブル警察署の一室の窓が映されて映画は幕を開ける。室内では新しい班長ヨアンの歓迎と退任する前班長の送迎パーティが開かれていた。その日の深夜、女子大生クララは親友のナニーの家を出て夜道を帰路につく。スマホで電話をしながら歩いていると、公園から何者かが現れ、ガソリンをクララにかけてライターで火をつける。クララは火にまみれ公園で倒れる。

 

ヨアン達が捜査を開始する。ヨアンはベテラン刑事マルソーと容疑者らしい人物の聞き込みを始めるが、容疑者の男たちは全員クララと関係があり、しかもクララは男好きだったという言葉も出て来る。マルソーは妻に浮気され、さらに妊娠までされて離婚を申し出られ、夫婦仲は最悪の状況の中での捜査になってしまう。ヨアンとマルソーは、容疑者らしい人物に会うたびに次第に事件の糸口も見えず闇の中に引き込まれていくようになる。

 

3年の月日が経ったある日、ヨアンは一人の女性判事に呼び出される。着任したばかりの彼女は間も無く迎えるクララの命日を捜査書類から知り、事件捜査のその後を聴取するが、ヨアンは、あの後結局クララ殺害事件の糸口が見つからないまま、捜査の予算がなく迷宮入りしたのだと答える。判事は予算の都合をつけ、命日に備えて、事件現場の張り込みとクララの墓の前に隠しカメラを置くことを勧める。

 

やがて10月12日夜、ヨアンは新任の刑事と張り込むが、現れたのはクララを偲ぶ人たちの姿だけだった。ところが墓の隠しカメラには一人の髭面の男が現れ、何やら儀式めいたことをしているのが映る。その男が口ずさんだ歌からSNSを駆使して男を特定し逮捕するが、3年前の事件の夜、彼は精神病院に入院していたことがわかる。

 

再び暗礁に乗り上げる中、ヨアンは退任したマルソーに手紙を送る。以前マルソーは、ヨアンがいつもトラック場で自転車を走らせている事に言及して、外を走ってみてはどうかと勧めたことがあった。ヨアンはトラック場を出て山々が広がる山道を自転車で走りながらマルソーへの言葉を呟いて映画は終わる。

 

人間ドラマとして深く掘り下げた感もそれほど感じないし、フランスではセザール賞を獲ったとなっているものの、それほど優れた映画だと思わなかった。普通の映画だった気がします。

 

「πパイ」

細かいカットの切り返しの連続と振り回すカメラワーク、さらに主人公の叫び声の連続、溢れんばかりの数字の羅列とシュールなストーリーに、目頭が痛くなり何度も気を失ってしまいぐったりしてしまいました。お世辞にも面白いと言えない映画ですが、根本的にはサスペンスミステリーなのでしょう。主人公が発見した216桁の数字の真実に謎の集団が迫って来る展開を楽しめればいいのですが、いかんせん映像がしんどい。まさにデビュー作らしいバイタリティあふれる映画だった。監督はダーレン・アロノフスキー。長編デビュー作である。

 

チャイナタウン、並外れたIQを持つ主人公マックスは、自宅のドアにたくさんの鍵をつけ、部屋の中はパソコンとその配線で覆われ、そんな中で生活をしている。この日も部屋を出たら、中国人の少女が電卓を持って計算式を問いかけて来るので暗算で回答するマックス。彼には世の中全てが数字に変換できるように見えてしまい、株価の変化も宗教真理も彼にとっては数式化できてしまうように思われていた。

 

数字の謎を追求していた友人のソルは、その世界にのめり込む事の危険を察知して身を引いたが、そんなソルにもう一度数字の謎を追求しようとマックスは持ちかけるも応じなかった。マックスは行きつけのカフェでレニというユダヤ教の宗教家に問いかけられ、宗教の中にあるものは全て数字に置き換えられるのではないかと持ちかけられる。マックスはレニを胡散臭く思うものの彼の説に一理あると考えるようになる。

 

マックスはますます神秘の数字の法則を追い求めていき、次第にその核心に近づいた手応えを感じ始めるにつけ、自身の頭の中が目まぐるしく変化していくのを実感し始める。その頃、謎の組織のメンバーから接触を受け、さらに何者かに監視されている様な感覚に囚われ始める。ある時、謎の組織に拉致されかかって、レニら宗教団体に助けられるが、レニらもまたマックスが突き止めた216桁の数字の謎を求めていた。しかし、マックスはそれに答えず、次第に自身の脳内が狂っていくようになる。

 

幻覚を見始め、頭の一角に違和感を覚え、とうとうドリルを頭に突き当てる。気がつくとマックスは公園にいた。そこへ中国人の少女がいつものように暗算を持ちかけてくるがマックスはわからないと答える。こうして映画は終わる。

 

全編モノクロで、時折赤い部分は挿入されているシュールな映像と、細かいカット編集を繰り返し、カメラワークも目まぐるしく動き回るし、主人公に迫って来る謎の組織の正体も見えないままにストーリー展開するので、90分足らずの作品なのに体力が持ちません。これも映像表現のひとつかと思いますが、いかんせん疲れ切ってしまう作品だった。