「ホワイトリリー」
ロマンポルノリブート企画の一本で、監督は中田秀夫。今回はレズビアンを物語の根幹に、男と女、愛とSEXについて描いて行くという内容。作品の出来栄えは中ぐらいという感じでした。
有名な陶芸家の登紀子のもとに住むはるか、二人はお互いに体の関係にあり、その濃厚なシーンから映画が幕を開ける。しかし、元来SEXのみを求める男好きの登紀子はことあるごとに酒に酔い、男を連れ込んでくる。
そんな登紀子への想いから嫉妬に感情的になるはるか。
ある日登紀子が連れてきた二階堂という若者は著名な陶芸家の息子で、そのブランド力と美男ぶりにはるかの嫉妬心をどんどんエスカレート。さらに二階堂の恋人も絡んで、とうとう殺傷事件へと発展する。
登紀子をかばったはるかは、傷を負うが、命に別状なく半年後、はるかは登紀子に別れを告げ去って行ってエンディング。
どいうモイスパイスのたりない一本という感じで、エロスさも普通で、サスペンス色も弱い普通の作品だった。
「未来よこんにちは」
ミア・ハンセン=ラブ監督らしい感性で描かれる女の自立の物語、その独特の繊細な映像のリズムが心地よいのですが、どうも主演のイザベル・ユペールが元来好みの女優ではないので、なかなか入っていけなかった。でも、ラストの処理の美しさに、しんみりと胸に訴えかけてくる感動がなかなかの映画でした。
パリの高校で哲学を教える主人公ナタリー。子供達も独立し夫と母と3人で暮らす日々だったが、突然、夫から離婚を切り出される。原因は別に好きな女性ができたこと。ドロドロしたものもなく、あっさりと夫は出て行くのだが、続いて、母が他界してしまい、一人ぼっちになってしまう。
猫アレルギーにもかかわらず、母の残した猫が唯一の友達となるが、毎日の生活に変わりもなく、淡々と過ごして行く。
そして、孫が誕生、一年の時が流れ、子供達が遊びにきて、孫をあやすナタリーの姿を画面の隅に捉えながらカメラがゆっくりとひいて行くラストが実にうまい。
果たして未来を生きて行く意味を見出したのか、ナタリーの姿にかすかな希望が見える気がします。これがミア・ハンセン=ラブですね。
「パッセンジャー」
ジョン・スパイツの脚本が実によく組み立てられている作品で 、何気ないウィットを散りばめた登場人物の配置やエピソードの配分、退屈させない展開のうまさに感心する作品でした。監督はモルテン・ティルドムです。
5000人を乗せた宇宙船アヴァロン号が目的の惑星に向かっている映像から映画が幕を開ける。やがて、隕石と衝突するが、 なんとか潜り抜けたかに思える。ところが船内で眠るクルーの一人ジムの冬眠装置が作動し、なんと目的地まで90年を残し目覚めてしまう。
一時は絶望するも、なんとか一年を過ごすのだが、彼の相手になるアンドロイドのバーテンの存在が実にうまく配置されている。機械的な返事が、かえってウィット 満天に聞こえるのが実に巧妙だし、クールな表情に映る笑顔もスパイスになって良い。
ある時、一人の女性オーロラに自分の理想の女性を見たジムは、悩んだ末に彼女の冬眠装置を故障させ 目覚めさせる。そうとは知らないオーロラは船内でたった二人の男女としてやがて恋に落ちて行く。
ところが次々と船内に不具合が発生し始め、フロア主任のガスが目覚める。しかし、船は危機的状況に陥っていて、装置の不具合でガスは間も無く死んだが、この船を修理するべくジムとオーロラが奮闘、なんとか危機を脱出して物語の本編が終わる。
エピローグは、ジムたちがすでに亡くなって 後、無事目的地に着いたアヴァロン号の姿でエンディング。
いったいなんでこういう大規模な移住計画があるのか、 なぜジムとオーロラは地球を脱出したのかなどの理屈部分はあっさり削除された脚本の組み立てのうまさに感心してしまいます。もちろん、理由は裏に定められているのでしょうが、一切を排除して見せるべく部分だけ徹底的に描かれたストレートな娯楽映画でとっても楽しかった。