くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」

いい映画でした。水彩画のような素朴な色調の画面とスタンダードのフレームで、不思議なレトロ感を生み出し、主人公ルイスを演じたベネディクト・カンバーバッチのコミカルな演技が映画をとっても個性的なものに仕上げています。もちろん実話なので、作られた部分はわずかかもしれませんが、ストーリー展開がとってもリズミカルなので、いつのまにかルイスの人生に引き込まれてしまいました。映画のクオリティは特に秀でているわけではないのですが、心地よい映画でした。監督はウィル・シャープ。

 

白い服を着た白髪の老人が何やら踊っている場面に被さって、葬儀の場面。物語は1881年、農業祭の帰りの汽車の中、たくさんの動物や人がひしめく車内で一人の男性ルイスは人混みを離れて連結場所にしゃがんでいる。隣にいた一人の男が自分のペットの犬の絵を頼む。ルイスは絵を描くのが好きで、しかも驚くほど早かった。

 

ルイスの家族は、父は亡くなっていて、母は自由奔放で家庭を顧みず、長女のキャサリンが妹たちの面倒を見ていたが、男はルイスだけだったので、ルイスに経済的な負担がかかっていた。地元の編集者サー・ウィリアムの仕事をするべくルイスは面談を受ける。ウィリアムは挿絵画家を探していたが、ルイスの早描きに興味を示して採用することになる。一方、家庭では妹たちの家庭教師としてエミリーを雇うことになるが、ルイスはエミリーに一目惚れしてしまう。

 

ルイスはエミリーや、妹たちとシェークスピアの舞台を行く計画を立て、観劇に行くが、幼い頃から溺れることにトラウマがあるルイスは、テンペストの演目に気分が悪くなりトイレに逃げ込む。心配したエミリーは男子トイレに行ってルイスを介抱するが、それが噂になってしまう。しかも、そこでルイスとエミリーはキスを交わす。

 

まもなくしてルイスとエミリーは結婚することになるが、当時は身分の差を許せない時代だった。仕方なく、郊外の家でルイスとエミリーは暮らし始めるが、エミリーが末期の乳がんだと診断される。その告知の日、庭にいた子猫をエミリーが可愛がったことから、ルイスはエミリーのために猫の絵を描き始める。拾った猫はピーターと名付ける。

 

まだまだ猫は蔑まれていた時代でしたが、ルイスの描く猫の絵は愛くるしく、擬人化されて面白かったので、みるみる人気が出る。しかし、程なくエミリーは亡くなってしまう。ルイスの猫の絵に対する意欲は異常なほどに高まっていき、それに連れて、猫の地位も上がり、ペットとしても公に認められていく。

 

しかし、金銭的な感覚が皆無に近いルイスは、版権を手にしていなくて、家族はどんどん貧しくなっていく。そんな頃、妹のマリーは精神病を患ってしまう。ウィリアムの好意で海辺の別荘に移り住んだルイスたちは、しばらくは平穏に暮らしたものの、マリーの回復は見られず入院することになる。

 

ルイスはイギリスでは収入を産まないと、アメリカに売り込みに行く。しかし、長女キャロラインも世を去ってしまう。元々、やや偏執的な精神状態だったルイスは、とうとう、施設に入ることになる。貧しい施設で黙々と絵を描くルイスを見つけたのは、かつて汽車の中で犬の絵を描いてもらった男だった。彼は、資金集めを呼びかけ、著名人なども賛同して、ルイスは立派な施設へ転院する。そこで、さらに猫の絵を手がけ、その日、一人、施設のそばの湖に佇んでいる姿で映画は終わる。

 

ベネディクト・カンバーバッチの演技個性が映画を牽引していく作品になっていますが、エピソードの構成配分もとってもテンポいいので。話がよく伝わります。傑作とかいうタイプの映画ではないけれど、個人的に好きな映画でした。