くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マッドゴッド」「冬の旅」

「マッドゴッド」

ジュラシック・パーク」の出現で、CGの時代への変化を感じたため制作を中断、その後、当時のセットを発見した若手の呼びかけで再始動して、構想から三十年を経て完成したストップアニメーション。ストップアニメではあるがかなりグロテスクなシーンが展開するダークファンタジーで、異形の生き物が次々と現れて、物語らしきものが前に進んでいく展開はかなりシュールである。しかもセリフがないので映像から推測していかざるを得ない。とはいえ、独特の世界観は楽しめる一本で、要するに世界終末を語る作品なのだろうという理解はできた。クライマックス「2001年宇宙の旅」のモノリスや赤ん坊のショットなどにんまりする場面もあり面白かった。監督はフィル・ティペット

 

バベルの塔の場面からレビ記を語る巻物が映され、カットが変わるとカプセルに乗って、ゴーグルをかけた人間?らしきものが空から降りてくる。こうして映画は始まる。迎え撃つ高射砲を避けながら地上らしきところに降り立つと、さまざまな異形の生物が闊歩している。地図を見ながらそこを抜け、さらに地下へ地下へと下っていく。しかし、何やらバケモノのようなものに捕まり、そのまま体を解剖されて、赤ん坊らしきものを取り出される。その赤ん坊は看護師が連れていき、くちばしのある生き物に手渡される。

 

一方解剖された人間は、頭にドリルが当てられ頭の中をモニターで見ると、彼を送り込んだ、最後の人間が見えてくる。その人間はカプセルに乗せてその男を送り出すが、世界は核爆弾が爆発して都市も人間も死に絶えてしまったようであるの。そんな出来事を記憶の中から映し出していく。

 

一方、取り出された、赤ん坊の鳴き声をする異形の生き物は、何やら地下のようなところにあづけられ、赤ん坊らしき物は砕かれて金属の粉のようになって、それが空にばら撒かれると、宇宙が形成されたかのようになり、モノリスが飛び交い、カプセルの赤ん坊が映り、ビル築かれるが、核戦争のような展開で一瞬で破壊されて、混沌とした世界になる。人類の誕生から破滅の出来事を一瞬で見せるのか、異形の生物が現れては消え、突然色鮮やかな植物が埋め尽くしたり、惑星直列が出てきたり、壮大というしかない映像を交えるクライマックスを経て、映画は終わっていく。

 

とにかくシュールそのもののダークファンタジーですが、なんとなく物語は感じ取れる作品に仕上がっておます。どう評価すべきなのか自分のレベルではうまく言えませんが、面白い作品でした。

 

「冬の旅」

どう解釈する映画かわからないのですが、自由奔放に生きる一人の女性の様々な人との関わりから、その最後までを描く、ある意味、自由を選んだ少女の人生のロードムービーのような作品で、これという劇的な展開も何もないのに、作品が実に充実した色合いを見せています。決して面白いという映画ではないけれども、一見の値打ちのある一本でした。監督はアニエス・ヴァルダ

 

ある農場で、一人の農夫が、畦の隅に死んでいる女性を発見するところから映画は幕を開ける。どうやら凍死らしいことが判明、18歳のモナの、死に至るまでの数週間が、彼女に出会った人たちの証言によって語られていく。

 

カメラがティリトアップすると彼方に見える海岸から一人の少女モナが上がってくる。遠目に見る青年ポロの場面がかぶさり、モナがリュックとテントを担いでヒッチハイクする場面につながっていく。途中、彼女を車に乗せた何人かの証言、特に汚なかったと証言したりさまざまな言葉と、モナが出会う人たちとのさりげない物語が淡々と描かれていく。

 

大学教授のランディエと出会い、しばらく彼女の車の中で暮らす場面が比較的長い。そのほか、農場で働きながら暮らせばいいと勧められるも、仕事に身が入らず追い出され、いかにも下心ありそうなトラックに乗せられるも悪態をついて車を降りたりする。老婦人の世話をするヨランドと出会ったり、老婦人と意気投合したりするモナだが、清潔にするとか、規則正しくするとかいうのは全くその気がなく、見ていても彼女の姿がいかにも汚れているのが伝わってくる。それが自由に生きる代償と言わんばかりである。

 

その日暮らしのように、車を洗うバイトをしたり、何気ない仕事をして日銭を稼いでいたが、次第に食べ物にも困りだし、冬の寒さがこたえてくる頃、泥を投げ合う村祭りの場に遭遇し、誰にも相手にされないまま、ある農場の畦に足を滑らせて転げ落ちそのまま気を失って死んでしまう。こうして映画は終わる。

 

全くたわいない物語なのですが、展開のリズムが実によくできていて、一人の少女の人生を垣間見るような思いに囚われてしまいます。自由で生きることは結局孤独に耐えることなのか、さりげなく挿入される女性軽視、レイプシーン、さらには体を売る場面もある。全てを捨てて自由になることの代償がこういう結末になるというなんとも言えない切なさが伝わる。決して好みの映画ではないけれども、独特の空気のある秀作だった。