くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「肉体の悪魔」(デジタルリマスター版)「狂熱の孤独」(デジタルリマスター版)「ジェラール・フィリップ最後の冬」

肉体の悪魔」(1947年版)

ジェラール・フィリップ生誕百年映画祭で見る。とってもいい映画でした。好き放題に不倫している男と女の話で、最初は全く共感できないのですが、映画の展開としてしっかりしている上に、手を抜かない絵作りも見事で、クオリティの高い映画とはこういうものだという典型的な作品でした。よかったです。監督はクロード・オータン=ララ

 

第一次大戦終戦が決まって街が沸いている日、一人の青年が家から出てくる。途中、棺を積んだ馬車を見てその後を追って教会へ向かう。こうして映画は始まり、時間が遡る。高校に通う主人公フランソワの学校は軍の病院にも使われていた。そこへ、マルトという女性が看護婦としてやってくるが、間も無く倒れてしまう。どうやら彼女は体が弱いようである。マルトを支えてフランソワは連れ出すが、すっかりマルトに一目惚れしてしまう。しかし、彼女は婚約をしていて、相手は戦地に行っている兵士だった。

 

マルトとフランソワは頻繁に会うようになるが、そんなマルトを彼女の母は危惧していた。やがてフランソワは長期休みがきて、フランソワとマルトと会う機会は少なくなる。休みが明けて学校へ来たフランソワは、マルトから結婚した旨を伝えられる。最初はこれきりと思ったが、フランソワの気持ちは再燃、さらにマルトもフランソワへ気持ちが募り始める。夫のラコンプからの手紙にも返事をせず、マルトとフランソワは逢瀬を繰り返す。そして、戦争も間も無く終わるという空気が広まった頃、マルトは妊娠した事をフランソワに知らせる。

 

間も無く、戦争が終わり、夫のラコンプが帰ってくることになる、最後の夜、マルトとフランソワは酒場を周り夜を徹して楽しむが、マルトは体調を崩してしまう。駆けつけたマルトの母は、彼女を病院へ連れ去る。しばらくして病院へやってきたフランソワは、やってきたラコンプと偶然出会う。ラコンプがマルトの病室に行くと赤ん坊の鳴き声が聞こえていた。しかし、マルトは力尽きて死んでしまう。葬儀の場面になり、棺が出棺していくところで映画は終わっていきます。

 

過去と現代を何度か繰り返しながら、主人公達の恋の物語を膨らませていく構成が実に見事で、あまりに身勝手な恋の行方の如く見えるのですが、次第にその情熱に翻弄されている自分が見えてきます。名作とはこういう完成度を言うのでしょうね。素晴らしい映画でした。

 

「狂熱の孤独」

誰を中心に展開するのか今一つ視点が定まらないままに、なるほどそう言うことかと唐突にエンディングを迎える作品で、伝染病の事、酔いどれ医師のドラマ、旅先で困る女性のドラマ、そのどれもが結局どう言う事なのか描ききれず、ラテン音楽的なセンスの悪い曲で彩って行く品のなさがどうにもまとまらない映画でした。ただ、ジェラール・フィリップの熱演が光ります。監督はイヴ・アレグレ。

 

スペインの街でしょうか、やたら叫ぶだけの音楽と、復活祭を前にした爆竹の騒がしい風景に、一人の酔っ払いジョルジュがフラフラ歩いている場面で映画は始まる。この酔っ払いは、どうやら元医師らしいが、豚の頭を受け取りに行ってホテルに届け、酒をもらう日々である。のちにわかるが、妻を誤って亡くしてしまって以来酒浸りなのだそうだ。

 

ここに旅行客夫婦がいて、そのうちの夫が熱と嘔吐で倒れていると言う連絡が入る。たまたま医師がいたので、診察するが、どうやら伝染病らしいからと病院へ連れて行く。そんな夫婦に何気なく関わるジョルジュ。間も無くして夫が亡くなってしまい、一人残された妻のネリーは途方に暮れる。そんな彼女にホテルのオーナーが言い寄ってきたりするので、ますます不安になる。そして何かにつけ関わってくるジョルジュをいつの間にか慕うようになる。

 

やがて伝染病は街に広がり始め、街は隔離されてしまう。人手が不足する中、医師はジョルジュにもう一度助手になってほしいと頼み、酒を絶って気持ちを切り替えたジョルジュは浜辺に診察場所を作り始める。すっかりジョルジュに惚れてしまったネリーがジョルジュの元に駆け寄って唐突に映画は終わる。

 

一体何の話かと出来事を追いかけていくがいつまでも、筋の通ったものが見えないまま、ラストはいきなり恋が成就して終わる。ジェラール・フィリップのカリスマ的な演技が光る作品なのですが、物語は今ひとつまとまっていない気がしました。

 

ジェラール・フィリップ 最後の冬」

ジェラール・フィリップのドキュメンタリー。1959年11月に亡くなる日をクライマックスに遡りながらの映像で、彼の人柄を手短に語る感じの展開で見やすいドキュメンタリーでした。監督はパトリック・ジュディ。

 

1959年の最後の夏に子供達と遊ぶジェラール・フィリップの姿から映像が幕を開ける。そして、誕生の頃から彼が全盛期を迎える1950年代へと映像が進み、舞台役者としての成功、映画スターとしての存在感、世の中の様々な問題への参加、彼の人柄を丁寧に描いていきます。ほとんど彼について知識のない私には、とってもいい刺激になりました。