くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大失恋。」「「さよなら」の女たち」「T.R.Y.」

「大失恋。」

大森一樹監督追悼特集。とっても洒落た恋愛ファンタジーで、本当に楽しかった。8組のカップルの三ヶ月余りの青春の一ページを遊園地を舞台に描かれる様が素敵で心地よい。思いの外の佳作で、見て良かった。監督は大森一樹

 

「美しき青木ドナウ」が流れる中、夜の遊園地の観覧車の中でのカップルの様子が次々と描かれて映画は幕を開けます。時は12月の金曜日、語るのはこの遊園地の声です。

 

どこかうまく行きそうでどこかギクシャクしたほのぼのしたカップル。結婚詐欺師と女刑事、たまたまぶつかり合った男女、誘拐事件を起こそうと中学生と恋愛ごっこする青年、友達の彼氏に一目惚れしてしまった女の子、不倫カップルと、見合い相手との三角関係、バーチャルゲームの女性に惚れてしまう中年男性、ナンパした女の子とバレンタインデーでの再会を約束する男の子、色んな恋が入り乱れ、映像も交錯し、やがてバレンタインデーの夜の遊園地でクライマックスを迎える。そしてそれぞれの恋は不思議な失恋劇になって、人生の機微が心地よい一瞬の時間で次へ流れていきます。

 

傑作ではないまでも、素敵な佳作という表現がぴったりの映画でした。

 

「「さよなら」の女たち」

肩残らない、不思議な魅力のある作品でした。監督は大森一樹

 

札幌の地方誌で編集者のバイトをしている郁子に電話が入る。父が歌手になるために教師の職を辞したのだという。郁子は慌てて小樽の実家に向かう。父の決意を聞き、諦めてしまうが、郁子は大学の同級生が宝塚のスターを目指し、宝塚に行ってしまったのを聞いて、宝塚に向かう。映画は宝塚に着いた郁子が山ノ内淑子と出会い、郁子の両親に新しい命が生まれ、郁子が父に自分の夢を続けてほしいと告げる。

 

郁子や周りの人たちが恋愛や人生について考え経験しながら成長していく姿を描きながら、最後は淑子が自分の家を取り壊させ、次の人生に向かう郁子達の姿を見せて映画は終わる。

 

軽いタッチのドタバタ劇を盛り込みながらの展開は大森一樹らしさが満載ですが、全体のテンポが少し悪いのか、物語が見えてこない。彼の作品としては中の下という感じの一本でした。

 

T.R.Y.

二転三転するラストシーンが実に面白い話なのですが、原作のスケール感とアメリカンニューシネマを意識した脚本と演出がどこか噛み合わなくなって、平凡な娯楽映画に仕上がった感じがします。しかも主演の織田裕二に、百戦錬磨の詐欺師のカリスマ性が表現しきれていないので、全体が面白くなくなった感じがとっても残念。監督は大森一樹

 

セピア調の映像の中で、世界を股にかける詐欺師伊沢の活躍するシーンが紹介されて映画は始まります。中国人マフィアに命を狙われるようになった伊沢を助けた関は、伊沢に中国反乱軍の武器を手に入れる詐欺を計画して欲しいと依頼する。

 

その作戦は日本陸軍の幹部東を騙して大量の武器を手に入れることだった。伊沢は、早速下拵えを始め、東に近づき、作戦を開始する。途中、チンピラの東の弟の登場で素性がバレかけたりもするが、巧みに交わしながらいよいよ作戦決行日が近づく。

 

ところがここにきて東は伊沢の素性を見抜き拷問を加え、自分に味方するように誘導する。命の危険を感じた伊沢は東の言いなりになり情報を流す。そして取引日、伊沢は関の仲間として武器を手に入れかけるが、目の前で関を裏切り、東に武器を取り戻させる。

 

ところが突然、庶民の反乱軍が乱入し、余計なところに関わりたくない東らは、司令部が反乱軍に制圧されたという情報を得て急遽引き返す。ところが庶民の反乱は伊沢の仕掛けた作戦だった。まんまと最後の最後で東を騙した伊沢は関に無事武器を渡すが、そこへ東の弟が現れ武器を横取り、列車ごと逃走を図る。

 

必死で追いついた伊沢は東の弟を排除するが、汽車を止める術がなく、汽車は脱線、武器は大爆発を起こして吹っ飛んでしまう。全てが無になった伊沢に、関は感謝の意を伝える。その後、伊沢の行方はわからなくなるが、相変わらず世界各地で暗躍する姿がセピア映像で語られて映画は終わる。

 

非常に面白いストーリー展開なのに、どこか噛み合わないところがあって、傑作の一歩手前で仕上がった感じの映画でした。