くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「冬薔薇」

「冬薔薇」

伊藤健太郎復帰のために芸達者の知り合い俳優を集めて、適当な脚本を書いて作り上げた作品に見えてしまう、とっても雑なしかも古臭い物語の映画でした。そもそも伊藤健太郎にカムバックしてやろうという意気込みが全く見られないのはどうなんだろうという感じでした。監督は阪本順治

 

港町に土砂を運んでいる仕事をしている船のカットから、そこで働く渡口義一らの姿を捉えて映画は始まる。一緒に働く永原らはすでに高齢で、しかも仕事も減る一方で妻の道子も資金繰りに四苦八苦である。場面が変わるといかにも半グレみたいな連中が、痛ぶられている仲間を助けるかのように武器を持ってやって来る、一番後ろからくるのは義一の息子の淳だった。淳が怪我をさせられたがリーダー格の美崎はさっさと引き上げてしまい、仲間の君原は唖然と見つめる。

 

入院したという知らせを、淳の同級生の友利に聞いて義一らは病室へ行くが、これという言葉もかけられず、親子の関係はギクシャクしている。淳の兄は幼い頃、義一の船に遊びに行ったときに転落して死んだらしい。淳は、デザイナーの専門学校もろくに行かず、ぐれて、同級生らしい友利に金を借りたりしている。美崎らのグループは詐欺まがいのことを繰り返していたが、君原は子供もいるので抜けようとしている。

 

そんな頃、義一の義兄中本が息子の貴史を連れて出て来る。仕事がなくなり、教師をしていた貴史も暴力沙汰で首になりこちらに来たのだという。淳は従兄弟でもある貴史と懐かしんで飲んだりするが、美崎の義理の妹智花が襲われる事件が起こる。ドライブレコーダーのアップサイトから犯人を特定した美崎と君原は犯人を待ち伏せ、君原は美崎の指示で犯人を刺し殺す。その犯人とは貴史だった。淳は知っていたが黙っていた。

 

淳は覚悟を決め、倉敷で実家のデニム製造の会社を継いだ友利に連絡をし、仕事をさせてほしいと頼む。そして両親に別れを言って覚悟を決めて深夜バスに乗るべく横浜へ向かう。一方、義一は、船を売って仕事を止める決心をしていた。

 

何度連絡をしても返事をしてくれない友利にようやく電話が通じた淳だが、友利からの返事は冷たかった。自暴自棄になり、路地でしゃがんでいる淳に雪が降り始める。そこへ、君原も去って一人になった美崎が現れ、お互い友達だからと手を差し伸べる。

 

義一の家の周りには妻の道子が植えた冬薔薇が今冬の花を終え、来年のために植え替えていた。船を降りた義一も、時の流れを実感する。カットが変わり、美崎のサングラスをかけた淳がゆっくり振り返り映画は終わる。

 

殺人事件が起こっているのに警察の影は全く無いし、そもそも、半グレで荒んでいる淳が、そういうふうに全く見えない。もっと役作りして臨んでこないと演じられないレベルの役だと思うがその気迫が全くない上に、登場人物の背後の人生が全く描かれずに物語が希薄だし、義一ら古参の船員たちのコミカルな軽口も浮いてしまっている。どうしようもない出来栄えに一本でした。