くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「我が人生最悪の時」(4Kリマスター版)「キングダム 運命の炎」

「我が人生最悪の時」

濱マイクシリーズ第一作。モノクロームで、古の日活アクションと光と影を多用したフィルムノワールのような絵作りが癖になる魅力のある作品で、ストーリー展開はシンプルな人探しとヤクザ抗争の話ながら、クライマックスの場面でモノクロームが真っ赤になる一瞬や階段に映し出される手すりの縞模様、極端な斜めの構図の繰り返し等、映画の面白さを堪能できました。監督は林海象

 

横浜黄金町にある老舗映画横浜日劇の二階にある探偵事務所に一人の外国人が仕事の依頼にやってくるところから映画は幕を開ける。東洋人でも平等に仕事を受ける探偵濱マイクは、かつてはチンピラだったが今はその頃の人脈を使って探偵業を営んでいた。しかし仕事によっては危険な目に遭うこともあった。たった一人の妹を大学に行かせるのを夢に、相棒で白タクの運転手星野と仕事をしている。

 

雀荘で麻雀をしていたマイクは、隣の席のヤクザ者が台湾人の従業員楊に文句を言い、仲裁に入ったマイクはヤクザ者に小指を切られる事件になる。その縁で楊が行方不明の兄を探して欲しいと依頼してくる。マイクは星野と、楊の兄でいまは日本人として帰化している山本が所属する神野の黒杜会にいることを突き止める。楊の兄は香港マフィアのヒットマンだったが、日本で一人の女性と結婚し、その女性にヤクザ者のヒモがいたことから神野に助けられた縁で香港マフィアを裏切って黒杜会にいたのだった。しかし、実は香港での利権を得るために神野は楊たちを利用していたのだ。

 

香港マフィアが送り込んだヒットマンこそ楊だった。楊は兄を殺すためにアパートに向かうが、そこで兄が女性と幸せそうに暮らしているのを見て、ためらってしまう。しかし、日本に来ていた香港マフィアの幹部が山本に殺されるに及んで、楊への圧力がかかる。楊は意を決して兄を倒すために黒杜会の事務所に乗り込むべく準備をするが、マイクは、たとえ兄を殺しても楊は殺されることがわかっているので、楊を拉致して警察に差し出そうとする。しかし、楊はマイクの足を撃って逃げ、黒杜会の事務所へ向かう。

 

山本は楊に、撃つのをやめるように説得するが、背後から神野の手下が山本を撃つ。さらに楊を羽交締めにして、同じく日本帰化した手下の加藤に楊を撃ち殺させる。楊を撃つ場面のみ真っ赤な画面になる。マイクは星野の車で駆けつけたが時すでに遅く、生前楊が、台湾に帰ったら結婚するつもりの女性に渡す指輪だけ血の海の中に落ちていた。マイクはその指輪を台湾に届けに行く。

 

横浜日劇の二階の事務所に戻ったマイクは、CLOSEの看板をひっくり返し、to be continuedと出して映画は終わる。そして、エピローグとして、濱マイクシリーズの第二話へ続く予告編とともにエンドクレジットとなる。

 

とにかく、古き良きノスタルジーに浸ることができる遊び心満載の映画で、見ていて本当に楽しい。こういう映画が少なくなったなあと感じます。

 

「キングダム 運命の炎」

映画は決して技術だけではないというのを目の当たりにする娯楽大作です。一級品のアクションシーンが描ききれていないのは残念ですが、手際よく物語を前に進め、見せ場もそれなりに面白かった。原作を知るものにとっては、前半のクライマックスに向けての展開を十分に楽しめました。監督は佐藤信介。

 

趙の大軍が秦に向かって攻めてきて、最重要地を奪われんとする危機に見舞われるところから映画は幕を開ける。王騎将軍のもとで修行した信は、王騎将軍に認められ百人隊の隊長として次の出番を待っている。秦の王衛青は、趙を迎え撃つべく秦軍の総大将に王騎将軍を抜擢するが、王騎将軍がその任を受けるにはそれなりの理由があった。

 

王騎将軍は衛青に、今回の戦いの覚悟を確認し、その際、衛青はかつて趙に捉えられていた不具の時代から、闇商人紫夏によって趙を脱出、秦に辿り着くまでの出来事を語った上で、戦のない世のために戦いを続けることを決意した旨を話す。

 

王騎将軍は、信の百人隊に飛信隊と名付け、趙国の馮忌将軍を撃つ任務を与える。本隊同士の戦いの中、奇襲戦法で本陣に迫る飛信体は見事馮忌将軍を倒し、勝敗は決したかに見えたが、趙軍の背後にいる更なる敵で、王騎の宿敵、龐けんが登場し物語はいよいよ前半のクライマックスに差し掛かり映画は終わる。

 

原作を知るものにはこれからの劇的な展開の序章として楽しめるが、全く知らないものには、いかにも中途半端に見えるエンディングかもしれません。合戦シーンも今ひとつ躍動感や迫力に欠けるのは、序章的な部分ゆえかもしれません。説明シーンが長いというのも今回の弱点ですが、この後の展開を楽しみに終わらせたのはうまくいった感じでした。