くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鏡の女たち」「リボルバー・リリー」

「鏡の女たち」

さまざまな過去がある女のドラマを執念のように描いていく重苦しい作品で、少しくらい息を抜いたらいいと思うが徹底的に深みへ深みへ突き落としていく演出は、さすがと言えばそれまでだが、しんどかった。映画のクオリティはトップクラスながらも、見終わってぐったりしてしまう。監督は吉田喜重

 

一人の女性川瀬愛が家を出て役所へ向かうところから映画は幕を開ける。戸籍係についた彼女は、係の人に、ある女性が持っていた母子手帳に、二十数年前に失踪した娘美和の名と孫の夏来があったことを知らされる。その女性は11日に公園で少女を誘拐した嫌疑で警察にいるという。駆けつけた友人の合田と警察に行くが会わせてもらえない。愛はアメリカにいる孫娘夏来を呼び戻す。

 

しばらくして、女性が釈放されたことを知り、合田とマンションに向かう。その女性は尾上正子と言って、記憶喪失だった。しかし、愛の家にある美和が家を出る時につけた鏡のひび割れと同じひび割れが正子の部屋にもありさらに確信する。夏来は、愛の説明に納得いかず、生まれてすぐ自分を捨てた母は母と思っていないと告げる。しかし、愛、夏来、正子は三人で会うことにする。そんな頃、広島に原爆が投下された際に一人のアメリカ人が被爆した事件を追って一人のテレビプロデューサーの女性が夏来に近づいて来る。そのアメリカ人を診察したのは川瀬医師、愛の夫らしいと話す。

 

正子は、幼い頃、広島の病院の部屋から海に浮かぶ島々を見た記憶があると言ったことから、愛、正子、夏来は広島へ向かう。そこで、愛は二人に衝撃に話をする。原爆が投下された日、愛は当時の夫伊沢に防空壕へ呼ばれた。伊沢は当時通訳をしていて、捕虜となった一人のアメリカ人を護送する途中だった。直後、原爆が投下されたが、伊沢は思わず外に出てしまう。愛も出ようとするのを止めたのが、これが原爆だと知っていたアメリカ人だった。まもなくして伊沢が広島の病院で亡くなるが、その頃、娘美和が生まれていたのだ。

 

戦後の混乱で一人で生きることができない愛は川瀬医師と再婚、現代に至ったが、その夫も5年前に亡くなっていた。正子が美和と同一人物かどうかあやふやなまま、愛と正子は何度か会う。実は正子には愛人がいた。東京に戻って間も無く、正子の実の両親だという男が現れる。その老夫婦の娘は生まれたばかりの赤ん坊を殺して失踪したのだという。しかしDNA鑑定の結果、正子はその老夫婦の娘ではなかった。

 

愛は正子に、幼女になってくれと頼むが正子は断る。夏来はアメリカに恋人がいるようだったが、祖母の愛が心配であるのと、自分が一体何ものかを確かめたく日本に残ることにする。ところが、正子の愛人からの連絡で昌子が失踪したという。合田がアパートに行って見ると母子手帳も一緒に亡くなっていた。合田は愛にそのことを話す。そこへテレビプロデューサーが現れ、被爆したアメリカ人がまだ存命であることと、愛の夫に命を助けられたことに感謝していると告げに来る。そしてテレビプロデューサーの女性はアメリカに立つ。愛と正子の行方を案じながら、夏来に、幼い頃の美和の影を語って映画は終わっていく。

 

なんとも言えない重苦しい映画で、しかもエピソードがてんこ盛りに描かれるので、何を見ていくのか整理に困ってしまう。被爆批判なのか、それにともなう一人の女の苦悩なのか、娘の人生なのか、ちょっと戸惑いを隠せない映画でした。

 

リボルバー・リリー」

普通に面白いアクション映画ですが、すでに世界大戦の史実はフィクションの彼方に行ってしまった感じです。背景のCGは今時なので構わないけれど、エキストラをケチったために、アクションのスケールが子供騙しになってしまって、せっかく頑張ってる綾瀬はるかは引き立ってこないし、脚本の弱さか、終盤に向かってに盛り上がりに欠けるし、かろうじて原作の面白さでなんとか持ち堪えたという映画でした。監督は行定勲

 

滝田洋装店、一人の女性がオーナーに挨拶をして店を出る。大震災直後、秩父、大勢の男たちが細見家に押し入り、当主の居場所を強引に聞いている。軒下では息子の慎太が隠れていて、邸内では次々と使用人たちが殺されていく。東京の玉ノ井、ここで今は居酒屋を営む一人の女性小曽根百合がいたが、新聞で秩父の細見家で惨殺事件があったと知って秩父へ向かう。

 

汽車の中で、たまたま一人の少年慎太を救った小曽根だが、実は慎太は玉ノ井にいる小曽根百合を頼るようにと父細見欣也から言いつかって、あるものを持って向かっているところだった。鮮やかに敵を倒した小曽根だが、彼女は台湾で水野寛蔵に育てられた諜報員で、57人もの殺人を実行したが、諜報機関内部の争いの中、水野の不在中に反乱が起き、水野と小曽根の間の子供も殺されてしまった。以来小曽根は姿をくらまし日本に来ていた。

 

細見欣也は、陸軍の武器を横流しして天才的な投資才覚で巨大な富を築き、それを上海の銀行にバーニング契約で預けていた。細見の計画は、殺戮のない経済だけで国を支えていく社会を作ることだった。本来陸軍の金であったため、陸軍はその金を奪い返そうとするが、細見が年に一度の更新をしないと銀行の金になってしまう契約だった。それを阻止できるのは、細見の息子の指紋と、暗証番号が必要で、慎太を陸軍は追っていたのだ。細見欣也らは自らを盾にして慎太を逃したのだ。

 

小曽根は店にくる元海軍士官で弁護士の岩見と協力して、細見欣也の目的を達成するため慎太を守ることにする。そして暗証番号がある寺に保管されているのを突き止め、小曽根たちはその寺に向かうが、そこで、慎太は自らの証明もために家族写真を見せる。そこに写っていたのは小曽根が愛した水野寛蔵だった。水野寛蔵は細見欣也だった。少しづつ糸が繋がって来た中、陸軍は小曽根たちに迫ってくる。岩見は海軍大佐の山本五十六に保護を求める。山本は小曽根と慎太が自力で海軍省までたどり着いたら守ると約束をするが、実は保護するつもりなのは慎太だけだった。

 

陸軍が待ち構える中、小曽根と慎太、さらに小曽根の仲間が陸軍に立ち向かっていく。そして瀕死の中、小曽根は慎太を海軍省に逃す。小曽根が山本五十六に詰め寄る中、山本五十六は、この金で十年、戦争を回避してみせると約束する。全てが終わり半年が経つ。慎太は勉強にため海外に行くことにし、見送りにきた小曽根に、必ず平和な世の中を作ると約束する。汽車の中、小曽根と岩見が乗っている。岩見が告白する寸前、片目の男が現れ小曽根に撃たれて映画は終わる。

 

クライマックス、陸軍の軍隊の人数が異常にしょぼいので、せっかくの見せ場がスカスカになってしまった。脚本の配分も今一つエンタメ感が弱いし、演出もありきたりに平坦すぎてどうにも迫力がない。古い日本映画を見ていると、最近のこの手の映画のみすぼらしさが目に余ります。ブカブカの軍服姿の軍人たちや、今風の台詞回ししかできない若手、役者層の薄い配役、どうしようもないのですが、寂しい限りです。まあ退屈はしなかったけれど、大した映画でもなかった。