くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゆとりですがなにか インターナショナル」

「ゆとりですがなにか インターナショナル」

ごった煮のように始まるにも関わらず、ちゃんとメッセージをさりげなく盛り込んだ上に、ホームドラマ的な感動も生み出していく緩急の効いた物語作りは、ほんまにクドカン上手いと頭が下がります。今回も、お話はあちこち飛びまくりで一見一貫性はないのですが、LGBTを語りながらもあっさり批判的な流れも入れ、中韓を批判しながらも公平な目線で描くところは描いて偏らせない、ネット社会を揶揄しながらも認めるべきは容認する。その中で、ドタバタ家族のほんのり温かみを感じさせる場面で締めくくる。天性の才能だと思います。テレビレベルといえばそれまでかもしれないけれど、楽しいひと時を過ごせました。監督は水田伸生

 

ゆとり世代の主人公たちもはや三十代半ば、夫婦中も家業もうまくいかないと坂間正和、未だ童貞の小学教師山路一豊、中国事業で失敗したものの逞しく前向きに日本へ戻ってきた道上まなぶ、一通りの人物紹介の後、今回は坂間家の酒造りが危機に瀕していた。それは、販売先の会社が韓国企業に乗っ取られ、日本酒を拒否されたため。契約延長の条件にノンアル日本酒開発を求められる。

 

一方、山路の勤める学校にはアメリカやタイからの転校生がやってきて大騒ぎになる。道上は坂間の酒蔵の仕事をすることになるが、隠れて坂間家をネット配信して話題になり始める。坂間家のゆとりは仕事を辞めて輸入雑貨の仕事をオンラインで始める。そんな諸々がドタバタ劇で展開していくのが前半。

 

後半、いけ好かない韓国企業のリーダーの女性チェと坂間が飲み比べをきっかけに急速にチェもまた一人の女性だったことが見えてきて親しみが湧いてくる。山路の小学校ではクラスの男の子がさりげなく同じ男の子が好きだという事件が起こるものの、まだまだ小学四年生で、LGBTと考えるのは大人の勝手で子供達にとっては時期尚早だと山路が教えられる。

 

坂間夫婦の仲も、坂間が飲み比べの後佐倉悦子のの部屋で目覚めて不倫してしまったという疑念から、実はそこは母国に帰れない外国人のシェアハウスで、そこでクダを巻いた坂間が妻茜の事を愛していると連発したことがわかり夫婦仲はラブラブに戻る。とまあ、そんなこんなを道上がネット配信していたらしく、最初は皆怒るが、坂間が、このままの家族を誇りに思うと叫んで皆思わず納得。こうして物語は終わり、エンドクレジットでは仏壇に仕掛けられたカメラを通じて登場人物の様々な本音が語られて映画は終わって行きます。

 

素直に上手いというしかない見事な脚本です。いつのまにか上質のホームドラマを見ているような感覚に引き込まれてしまいました。面白かった。