くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「カンダハル 突破せよ」「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」

カンダハル 突破せよ」

何が何だかという映画。イラン、イスラエルを舞台にすると、現地の派閥が全く把握できないので、あれよあれよと流れで見ているだけになってしまう。タイムリミットサスペンスの面白さはほとんどないし、主人公以外は顔の判別はつかないし、人間関係とか組織関係も把握できないままに、結局争いは良くないという虚しさを見せて締めくくる映画でした。監督はリック・ローマン・ウォー

 

核施設を破壊する任務でイランに潜入したCIAのトムたちがネット回線増設と称して工作活動をしている場面から映画は始まる。兵士らが一瞬疑うがトムの機転で難を切り抜けその場を脱出。間も無くCIAの遠隔操作で核施設が大爆発を起こす。その様子を遠目で見るトム。自国に帰り娘の卒業式に出る予定だが、短期の新たな任務が提案される。トムは、卒業式までに片付けるつもりで現地通訳モハメドを伴って任務に着くが、国防総省の職員がCIAの過激活動をリークし、その結果潜入捜査官の顔と偽名がイラン側にバレてしまう。

 

核施設を破壊した犯人を拉致すれば金になると判断するイラン民兵やISI、イランの精鋭集団ゴッズ、などが一斉にトムに迫ってくる。トムはアフガニスタン南部のカンダハルにあるCIA基地に民間人輸送で一時着陸する輸送機に乗るため30時間後の到着目指すことになる。敵か味方かわからないままにかつての仲間を頼りながら南へ向かうトムたち。映画はひたすらそのバトル戦を描いていく。

 

途中、仲間が死んでしまったり、モハメドの息子を殺した武装組織と関わったり、西側へ定住する希望を持って追ってくるISIのカヒルのエピソードを交えながら展開、そして基地間近で間一髪で友軍の攻撃で無事基地に辿り着き脱出して映画は終わる。

 

何のことはない、平凡なアクション映画でした。

 

「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」

サスペンスとして非常に面白い映画でした。テンポの良い展開と重々しくならない演出、イザベル・ユペールの意味ありげながら自然な演技に嘘か誠かこちらが騙されたのではないかとさえ思わせられました。難をいうと、クライマックス部分の配分を増やして前半をもう少しコンパクトに構成を見直したら傑作になったかもしれません。監督はジャン=ポール・サロメ

 

原子力企業のアレバ社のハンガリー工場、女性従業員の訴えを受けて敢然とと経営者側に向き直るモーリーン・カーニーの姿から映画は幕を開けます。2017年12月、モーリーンの家に家政婦がやってくるのですが突然悲鳴を上げる。地下室でモーリーンが椅子に縛られていて下腹部にAのナイフ傷と股間にナイフの柄を挿入されたのを発見したからです。そして物語は数ヶ月前に遡る。

 

モーリーンはアレバ社の組合書記長の立場にあったが、中国とのハイリスクな極秘取引を知る。モーリーンを信じてきたアンヌ社長は解任され後任にウルセル社長が就任すると、ますますモーリーンへの風当たりが強くなり、自宅への嫌がらせが増え始める。そして12月、突然顔に覆面を被せられ拘束されてしまった。警察はモーリーンへの妨害行動だと捜査を開始するが、室内に指紋も他人のDNAも見つからない中、担当のブレモン曹長は事件に疑問を抱き始める。しかし、助勤だった部下のジュリーは過去に同様の事件があったと進言するが無視されてしまう。

 

詳細な医療検査がモーリーンに行われ、ブレモン曹長らの尋問も強引になってきて、結局、モーリーンは自白することになる。そして四年が経ち、モーリーンは弁護士を通じて控訴をしたものの結局有罪が確定してしまう。しかし、正式な職員となったジュリーがモーリーンに、自分が見つけた同様の事件の記録を持ってくる。モーリーンはその事件の被害者と会い、自分と似ていると判断し、別の弁護士を立てて再度控訴、そして、事件の直前、廊下で転けて右肩に怪我をしていたにも関わらず一人で両手にテープを巻くことの不自然さをはじめ、当時の捜査の矛盾が指摘されて無罪となる。

 

その後、モーリーンは学校で教師をしていた。ウルセル社長は病気で急死し、アレバ社は解散して政府企業になり中国との契約を正式に受け入れていた。その現実についての聴聞会に出席しているモーリーンが、カメラに向かって意味ありげな微笑みを投げかけて映画は終わる。

 

果たして、自作自演だったのかどうかは本人のみぞ知るというエンディングで締め括ったのは若干あざといが、実話を元にした作品ゆえこれくらいの遊びはあってもいいかと思います。中国が世界中で原発を作っているというテロップはちょっとメッセージ性を押し出してきて、あれ?と思ってしまいますが、サスペンス映画としてはそこそこ面白かった。