くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「法廷遊戯」

「法廷遊戯」

原作は良いのだろう、相当見事に組み立てられたサスペンスと奥の深いメッセージが織り込まれているのですが、いかんせん役者が弱いためにストーリーをなぞっただけの薄っぺらいミステリードラマに仕上がってしまったのは本当に残念な作品。杉咲花一人頑張っている感があって、主役の永瀬廉や脇役を含め非常にアクがなさすぎて、勿体無いとしか言いようがない仕上がりだった。ただ、娯楽映画として軽く見るには大変面白い映画だった。監督は深川栄洋

 

駅のプラットホーム、突然、階段下に男女が落ちてきた騒ぎで映画は幕を開ける。場面が変わるとロースクールの説明から、一人称カメラでテーブルの下に落ちているスマホにカメラが移る。この学校では敷地内の地下室の洞窟で無事(ムコ)ゲームという擬似裁判をするゲームが流行っていた。主催しているのは、在学中に司法試験に合格していた秀才結城薫だった。さっきのスマホ事件をゲームにかけ、どういうゲームかの説明場面となる。

 

結城のクラスメートの久我清義の机の上に、かつて養護施設にいた頃の傷害事件の写真が載った記事が置かれているのを久我が発見する。それは、養護施設で一緒に育った幼なじみの織本美玲が施設長にセクハラを受けていてそれを助けた際に施設長を久我が刺した事件だった。織本の証言で、施設長から日常的に久我が暴力を受けていたということになり久我は少年院へ行くことを免れた。

 

ある時、電車の中で織本は痴漢被害にあい、目撃した久我と共に加害者からの金で始末をつけられた事件が起こる。以来、二人は虚偽の痴漢事件を作って大人から金を取るようになる。ところが、いつものように織本が痴漢被害を訴えるとその相手は刑事の佐久間で、以前からマークされていたことを知る。そして駅の階段で言い争いになったが、突然佐久間が階段から落ち、一緒に織本も落ちて二人とも重傷を負う。それが冒頭のシーンだった。

 

その後、佐久間は現職刑事が痴漢をしたというスキャンダルになりそのまま佐久間は自殺していた。学校では織本のアパートにも嫌がらせの記事や、ナイフがドアに突き立てられる事件が起こり、久我も一緒に調べる中、織本の部屋の上階で沼田という男が織本の部屋を盗聴していることを突き止めるが、沼田はネットで依頼されたので、依頼人は知らないと答え逃げてしまう。しかし、その後久我や織本への嫌がらせがなくなり二年が経つ。

 

久我は無事司法試験に合格し弁護士をしていた。そんなある日、結城から最後の無事ゲームをするからスクールに来て欲しいと連絡が入る。久我が約束の時間に行くと、そこに結城の死体と返り血を浴びた織本がいた。織本は久我に一枚のSDカードを手渡し、自分の弁護をしてほしいとたのむ。そして、殺人事件の裁判が始まる。しかし、久我が手渡されたSDカードにはパスワードが設定されていて、開くことができない。しかも久我にも織本は黙秘をしていた。

 

やがて、公判が開始される。久我が調べていく中、結城が学生時代、もし自分に何かあったら父親の墓に花をたむけてほしいと言っていたのを思い出し、結城の墓に行くが、そこで、結城の父親はかつて自殺した佐久間だと判明。佐久間に墓にはUSBメモリーが残されていた。佐久間の事件が冤罪であることを知っている久我と織本は、この裁判が結城が仕掛けた、父親の事件の冤罪を証明するものであることが見えて来る。

 

公判が始まり、織本はSDカードのパスワードを開示、法廷でその映像が公開される。そこには、結城に呼び出された織本との会話と、結城が織本に刺されるように仕込んだ芝居の一部始終が写っていた。一方、久我は結城の墓で見つけたUSBメモリーの中の結城の日記を読んで、全てを把握していた。

 

判決前の最後の面談で、久我は織本に、全てのことを話す。結城は父の冤罪を再審させるために織本に傷害事件を起こさせるつもりで呼び出したが、織本は急所を外さず結城を殺害したのだ。しかし、そういう場合に備えて結城は久我に、自分の日記をUSBメモリーに入れて託すように二重の計画を立てていた。実は、結城の父佐久間が駅の階段から落ちる際、結城はその場にいたのだ。佐久間を引き落としたのは久我で、それを知る織本は結城も殺すことで久我を守ろうとしたのだ。しかし、久我は弁護士を辞める決意をして、織本を責め、織本は自分の気持ちを久我に察してもらえなかったことで絶叫してしまう。やがて判決で無罪が下されるが、織本はその場で笑うだけだった。久我は下宿を出て警察署へ向かい映画は終わる。

 

二転三転する面白さは堪能できるのですが、意味深な法理論を持ち出す奈倉教授や沼田のエピソード、結城が訴える、無罪と冤罪への疑問など、セリフやシーンのあちこちに散りばめられた原作のメッセージがほとんど映画になった時点で機能しておらず、結局、薄っぺらな法廷ドラマで幕を閉じたのは本当に残念。演出と脚本が甘いのと役者が弱いのが映画全体のクオリティを下げた感じの仕上がりになった。勿体無いの一言の映画でした。