くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「気まぐれ渡世」「アラブの嵐」「PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ」

「気まぐれ渡世」

90分の尺にするために無理やりその場その場のシーンを追加していったような安直そのものの映画。いくら映画全盛期とはいえ、駄作と言える一本でした。呆れてしまう作品。でも、これも、古き良き映画なのでしょうね。監督は西河克己

 

主人公譲次がクレー射撃場に行き、一人の男と知り合う。うだつの上がらない風体ながら射撃の腕前が一流で、譲次はその男と飲み明かし、うまく煙に巻いて一軒のバーに行く。そこで変な男に赤ん坊を押し付けられた後その男は殺される。譲次は赤ん坊の父親の仇を撃つために奔走し始める。

 

一方冒頭の男は実は刑事の日高で、最近起こる殺人事件に使用された拳銃は、戦後すぐに譲次が作った拳銃に似ていたため譲次を尾行していた。譲次は、アパートに赤ん坊衣を連れ帰るがそこで一人のシスター路子と出会う。赤ん坊は教会の孤児院に引き取られ、譲次は殺された男の家に行きそこで一人の女と出会う。しかし、その女麻子はある男の女だった。

 

殺された男はおもちゃ工場の黒木という男で、その工場で密造拳銃を作っていた。譲次はおもちゃ工場のに行きその全てを知るが、麻子がトランシーバーで連絡をとっていた愛人に譲次は連絡をする。そして待ち合わせの場所へ向かう。

 

実はその男は終盤、譲次の戦友の鷲尾だとわかる。鷲尾は戦後すぐ亡くなったと思っていたが実は生きていて、密造拳銃を作って裏社会にいた。その真実を知った譲次は鷲尾を責めるが人が変わってしまった鷲尾は譲次を仲間にしようと提案する。しかし揉み合う中鷲尾は仲間に撃たれ死んでしまう。警察が駆けつけ、赤ん坊も教会の孤児院で暮らすことになり、譲次は去って映画は終わる。

 

適当な展開と、脈絡のないエピソードの数々、ダラダラした時間稼ぎのような流れに正直辟易としてしまう映画だった。

 

「アラブの嵐」

これまた時間合わせで展開するなんともいえない映画。今はなきパンナム全面協力で、エジプトロケ実施した無駄な大作風の作りはまさに映画全盛期の作れば売れる時代の一本。ストーリーがあちこちに飛ぶしほとんど意味がない。石原裕次郎芦川いづみのスターコンビながら脚本はお粗末そのもので、こういうものが通用していた時代の空気を感じることができました。監督は中平康

 

大企業の総帥が亡くなり、会社役員や親族が後継者になる孫を疎ましく思い、真太郎を体良くパリの出張所に飛ばしてしまう。しかし元々適当な性格の真太郎はそそくさと日本に戻って来るが、彼の仕事の失敗を押し付けられてクビになった木村と出会い、自分の愚かさを知る。たまたま祖父の遺言の格言書を見つけた真太郎は単身日本を飛び出す。飛行機の中でゆり子という父を探しにカイロへ向かう女性と出会い、付かず離れずの冒険が始まる。

 

空港で鞄をすり替えられた真太郎は、その鞄に入っていたある民族の独立の鍵を握るペンダントを手にしたことから、独立阻止を図る帝国主義者たちにも追われる羽目になる。行く先々で命を狙われたり謎の人物に絡まれたり、さらに現地で姑息なことをしている男と出会ったりしながら、時にゆり子に助けられ、なんとかペンダントは独立を目指すリーダーライラの手に渡り、無事日本への飛行機に乗って映画は終わる。

 

あれよあれよと訳もわからず出て来る登場人物と事件に翻弄されながら、冒頭の話はいつの間にか消えて、ヒロインとのアバンチュールもなく大団円。開いた口が塞がらない一本ですが、時代を感じさせられてかえって癒されてしまいました。

 

「PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ」

映像のクオリティはそこそこ良いのに、物語の構成配分が悪いために、平凡なアクションエンタメに仕上がった感じです。前半のユリョンを探すサスペンスの配分をしっかり描いてドラマ性を見せられたら、後半のひたすら銃撃戦を繰り返すエピソードの繰り返しが生きただろうに、何度もシチュエーションを繰り返してワンパターンで撃ち合いしたので最後には飽き飽きしてしまってラストの処理もどうでも良くなってしまったのは残念。監督はイ・ヘヨン。

 

1933年朝鮮総督府に新しい長官山形が赴任して来ることになる。その宴席で潜入していた黒色団のスパイユリョンが発砲、殺戮には失敗して逃亡するが結局、殺されてしまう。警護隊長の高原は、ユリョン捜索と黒色団撲滅作戦を開始する。そして、海辺に建つ巨大ホテルにユリョンと思われる怪しい人物を集め、ユリョン特定することにする。集められたのは、通信士チャン、政務官秘書佑璃子、チャギョン、前警護隊長の息子で一族に朝鮮人の血が混じっているという村山、ウノらだった。翌日に長官の就任式を控え、その場で作戦実行を指示されていたユリョンは時間との戦いに身を投じることになる。

 

高原はお互いに自身がユリョンでないことの証明をさせる一方で、誰がユリョンかの密告も推奨させる。この場面をもうちょっとしっかり描けば良いのだが、なぜか、前半三分の一でユリョンが佑璃子とチャギョンであることが明らかになってしまい、かなり無理やり二人は脱出に成功する。無能な高原を殺戮した村山は、自身がユリョン討伐と黒色団撲滅の指揮権を得て、偽の就任式を開催して朝鮮人を集める。

 

そこに集まった黒色団七名、実際はすでに二名とらえているので残り五名を拿捕しようとするが、チャギョン、佑璃子らが乱入し、銃撃戦が始まる。そして、結局、村山も殺され、黒色団はアジトへ逃亡、実際の就任式は無事終わるがその帰り道、山形はユリョン二名に殺されて映画は終わる。

 

無理やり感が強すぎて、クライマックスの様式美にこだわった銃撃シーンは面白いのにそれまでに何度も銃撃シーンが繰り返されたので生きていないのがとっても残念。ドラマ部分も描く力量があれば傑作になったろうに勿体無い典型的な韓国映画でした。