くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サムシング・イン・ザ・ダート」「サンライズ」

「サムシング・イン・ザ・ダート」

いろんな映画があるもんやなというのを実感する作品で、ドキュメンタリータッチでもなくフィクションでもなく、監督二人が二人のキャストになって超常現象をカメラに収めるくだりを描いていくというものですが、結局なんなのかというラストへの流れが全く掴めないままに終わってしまった。と言っても独りよがりの映画ではなかった気もする。不思議な作品でした。監督はジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッド。

 

不自然なカメラアングルから一人の男リーヴァイがベッドで目を覚ますところから映画は幕を開ける。このアパートに一時的に越してきた彼は窓の外にジョンという男を見つけて降りていく。タバコをもらって少し話をする。リーヴァイの部屋にあったクリスタルの置物を灰皿にしていた。

 

翌日、ジョンがリーヴァイの部屋から出ようとしたら突然光が差してクリスタルの置物が浮かび上がるのを見る。何か超常現象が起こっていると感じたジョンは、自身ドキュメンタリー映像作家でもあったことからこれを映像として撮影することをリーヴァイに提案する。

 

その後も、クリスタルが浮き上がるのを目撃、どうやら重力が関係しているのではと推測する。さらに室内のサボテンに異様な実がなったり、突然、地震のような揺れを感じたり、アパートの地下に古いテープレコーダを発見し、そこに録音されていた名前の男の墓を探ったり、クリスタルが壁に映し出す光の模様がLAの街並みの都市計画と一致していたりと、謎が謎を呼んで二人はのめり込んでいくが、リーヴァイは危険を感じ始める。

 

ジョンは放射能宇宙線が放出されているのではないかと言い出したり、リーヴァイの体重が減り始めたり、様々な出来事が起こる。映画はこの二人の行動を描く一方で、この映像作品に関わった編集者や、カメラ担当のインタビュー映像も挿入される。リーヴァイはこのアパートを出る時期が近づいたことをジョンに語るが二人は過去を詮索して言い争うようになる。

 

リーヴァイは以前、性犯罪で捕まったことがある前科がある。ジョンには亡くなった妻がいて高齢の母と連絡をとっている。そんな様々が超常現象の中で表立って歪みを生み出していく。やがて、クリスタルのみならず様々なものが浮かび上がり、ジョンがある朝目覚めると自分が浮かんでいた。すぐにベッドの上に落ちたが、リーヴァイのところに行くと、彼がいつもタバコを吸いながら座っていたベランダにタバコだけが残っていた。空には異常なくらいの花火が上がっている。ジョンのインタビュー映像で、リーヴァイはどこかに生きているだろうというコメントで映画は終わっていく。

 

結局なんなのだという作品で、なんとも感想しづらい一本でした。

 

サンライズ

映像表現の面白さを堪能できる傑作。サイレント映画ゆえ物語はシンプルですが多重露出を使った映像表現と長回しを繰り返すリズム作りが素晴らしく、映画ってこんなに面白いものかと堪能してしまいました。監督はF・W・ムルナウ

 

とある田舎の村、夏、避暑で長期滞在している都会から来た女はこの村の一人の男と濃密な関係になっていた。男には妻と子供がいたが、都会からの女との逢瀬ですっかり家庭は荒んでいた。妻に笑顔がなくなり、夫は妻を蔑ろにして、今夜も都会からの女が口笛で男を呼んでは夜の闇に連れて行った。女は男に、妻を殺して農地を売って都会に行こうと誘う。方法は、妻をボートに乗せて沖へ連れ出し、転覆させて事故に見せかけたら良いと勧める。そしてフトイという葦の束を隠しておいて男はそれを抱いて岸に流れつけばいいと計画を話す。

 

翌日、夫は妻をボートに乗せて向こう岸にわたりデートしようと誘う。妻は久しぶりに夫に誘われ嬉々として大喜びでおしゃれして夫のボートに乗るが、なぜか愛犬が柵を飛び越えて駆けつけて来る。いつもと何か違うと思った妻だが夫の漕ぐボートで池の沖まで出る。しかし、突然夫は妻に迫って来る。しかし夫は気を取り直して反省し、自分を責めるが、対岸についても妻は怖がって逃げてしまう。

 

夫は必死で追いかけるが、妻は路面電車に乗る。夫もその電車に乗り妻に謝る。やがて都会についた電車から二人はは降りるが、妻は夫が怖くて逃げるようにする。夫は花を買ってみたり宥めたりしているうちに次第に二人の思いは絆されていく。たまたま結婚式に遭遇して式に同席した二人は若き日を思い出し、また愛し合う気持ちを取り戻す。

 

車が行き交う中、二人は抱きしめ合い口づけをする。このスクリーンプロセスを多用したシーンが素晴らしい。さらに、美容室で夫は髭を剃り、遊園地で遊び、レストランでダンスをして楽しく過ごした二人はボートで帰路に着くが、折しも嵐がやってきてボートは転覆、夫は積んでいたフトイの束を妻にくくりつけるが自分は流されてしまう。

 

岸に流れ着いた夫は妻を探すが見当たらない。村人たちと一緒に沖に出るが、ちぎれたフトイを見つけて、夫は諦め村人と岸に戻る。しばらくして、都会から来た女が男のところへやって来るが、改心した男は女の首を絞めようとする。そこへ、諦めずに探していた老人が妻を救出して戻って来る。無事戻った妻をベッドに寝かせた夫は妻に寄り添う。やがて目覚めた妻は夫と抱き合う。翌朝、都会から来た女は街へ帰っていく。日が昇り幸せな日々が戻ってきて映画は終わる。

 

奥行きのある構図とオーバーラップさせる多重露出で描く画面作り、さらに冒頭の都会の女と男の逢瀬の場面の長回し、背景の月など、実に多彩な映像表現を駆使した演出が素晴らしい。まさにサイレント映画末期の傑作というに値する一本でした。