「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」
シンプルなストーリーになった分、荒唐無稽な茶番劇が普通になった感がないわけではないけれど、なんで埼玉?的な仕上がりの無理矢理感を楽しむにはそれなりのエンタメでした。前作も私としてはそれほど評価してないのですが、今回もそこそこのノリとツッコミの映画だった。監督は竹内英樹
埼玉が平穏になったとはいえ、さらに日本中を埼玉にする一環で、新たに武蔵野線を作ることで横のつながりを求める麻実らだが、鉄道マンらの反対でストが起こる。さらに発展を図るべく埼玉に浜辺を作らんという計画を提案、和歌山の白浜の砂浜を持ってこようということになる。
百美を留守に残し、早速大船団を組んで和歌山に向かうが嵐で難破し、白浜にたどり着く。しかし、そこは日本中を大阪にしようとする大阪府知事に嘉祥寺によって大阪が占拠していた。麻実は滋賀県解放戦線の桔梗に助けられ、大阪の陰謀を砕くべく、そして滋賀、奈良、和歌山の威厳を回復するべく奔走を開始する。
一方嘉祥寺らは京都や神戸と協力して、粉物の白い粉で難破した埼玉県民や、滋賀県民らを大阪漬けにし、奴隷のように使っていた。その粉は琵琶湖から川に流れる途中で栽培されていたので、麻実らは琵琶湖の水を止めることを考える。さらに甲子園で行われた高校野球で、記念の砂を持って帰る高校球児らには、実はその砂が大阪漬けにする粉で、着々と日本大阪化計画を進めていた。
琵琶湖の水を止めると滋賀県は水浸しになるが、それでも大阪の陰謀を止めるべく大阪からの侵攻を迎え撃つ。滋賀県のトビタ君を使って大阪軍を翻弄し、ご当地スター合戦をしたものの、大阪軍に抑え込まれる。
嘉祥寺らは、ミサイルに粉を乗せて東京都へ発射し、東京を大阪化して日本を治めようとする。しかし、埼玉に唯一あったタワーに仕掛けられた迎撃ミサイルを麻実の留守をあづかる百美に指示、無事迎撃され嘉祥寺の計画は阻止される。最後に京都や神戸を裏切った嘉祥寺らは逮捕される。無事麻実らは埼玉に帰り、小さなビーチを作って百美とダンスをして映画は終わる。
なんのことはない悪ノリ茶番劇エンタメを楽しむ一本。至る所に小ネタを盛り込んでの脚本は面白いのですが、大阪と埼玉の二局で進むストーリーにやや無理があった気がします。いっそ関西一本で行き切ったほうが荒唐無稽さが際立ったかもしれません。
「ロスト・フライト」
シンプルそのもののB級アクションという感じで、余計な人間ドラマを廃してひたすらサバイバル劇に徹底した作りがエンタメ映画としてうまくまとまった気がします。あれよあれよと進む展開は、やや都合良すぎる感もありますが、観客に余計なハラハラを抱かせないので、ストレスなく楽しむことができます。面白かった。監督はジャン=フランソワ・リシェ。
この日のフライトに遅れそうになりやってきた機長のトランスが、娘に連絡をしながら乗機するところから映画は幕を開ける。燃料を節約するため、嵐の上空を飛ぶ最短距離を指示されたトランスらは、指示通りフライトを開始する。この日乗客の中に殺人犯ルイスも移送のため同乗することになる。
嵐の真上を飛んでいた飛行機は落雷で電気系統が破壊されて、なんとかフィリピン南部のホロ島に着陸するが、そこは反政府組織が支配する無法地帯だった。連絡手段を探したトランスは廃墟でなんとか連絡をするものに直後襲われる。そこへルイスが駆けつけ助けられる。しかしトランスとルイスが飛行機を離れた隙に反政府組織が乗客らを拉致してしまう。一方、航空会社ではフィリピン政府が当てにならず、救出のため民兵を派遣しホロ島へ向かう。
トランスとルイスはなんとか乗客を救い出したが、反政府組織のアジトから脱出できない。そこへ会社が雇った民兵が駆けつけ、銃撃戦の後、飛行機まで戻る。副操縦士が電気系統をなんとか修理していたため、飛行機で脱出することにする。追ってくる反政府組織と銃撃戦をしながら飛行機はなんとか離陸、無事近くの空港へ着陸して大団円。ルイスは民兵が非常用に持ち込んだ大金を持ってそのまま脱走してしまう。
非常に単純な映画でわかりやすい。ひたすらアクションと銃撃戦の連続で見せ場が途切れない上に余計な人間ドラマを描いて時間稼ぎしていないので素直に楽しむことができました。面白かったです。
「無鉄砲大将」
傑作とまでは言わないけれど、小予算で、歌謡曲を効果的に挿入したリズム作りと、シンプルな中に娯楽性を詰め込んだ作りはさすがに職人芸、面白かった。監督は鈴木清順。
空手の練習シーンにタイトルが被り、カットが変わるとローラースケート場でバイトをする主人公英次の姿へ移る。友人と一緒に夜のパトロールをしている英次はこの日も友達二人と街へ出る。そこで、一人の男が殺されているのを目撃する。その男はある会社の労働組合の書記長だった。殺したのはこの界隈のヤクザ新界組の男だった。英次は、カフェで働く雪代のことを姉さんと呼んで慕っていたが、実は好きだった。しかし雪代には新界組の幹部五郎という恋人がいた。
英次の母は新界組の親分の世話になってバーをやらせてもらっていた。この店にはアル中の雪代の父が入り浸っていた。新界組の親分は雪代を次の愛人にするために執拗にちょっかいを出してくる。五郎は雪代と結婚するために堅気になろうとしていた。そんな五郎が親分は気に食わなかった。一方、書記長を殺した男がほとぼりが覚めたのではと現れる。三つ巴四つ巴の話が絡まり始め、親分は雪代の父親を拉致して雪代を誘き出し力づくで自分のものにしようと迫る。それを知った英次らが親分の家に乗り込んで五郎も含めた大乱闘の末、新界組の悪事が明るみになって警察が乗り込んでくる。五郎と雪代は結婚を決めて旅立ち、切ない思いで見送る英次のカットで映画は終わる。
たわいないアクション映画ですが、歌謡曲を歌う歌手やダンサーを巧みに挿入した映像テンポがとっても楽しい。これが鈴木清順の世界かなと思える一本でした。