「ラ・ポワント・クールト」
アニエス・ヴァルダ監督の長編デビュー作で、とってもしゃれた映像世界が展開する素敵な作品でした。アラン・レネが編集しているので、所々に彼の存在が見え隠れするカットが漂いますが、それもまたいい味を出して映画が輝いてきます。
海辺の街に衛生局の検査員がやってくるという噂で、それを追い返す住民の素朴なシーンから映画は幕を開けます。ここに住む一人の男は妻がここに自分を追ってやってくるのを待っている。間も無くして、妻がやってきて、二人の夫婦間の愛の物語がセリフと編集で見せていく。
所々にこの街の祭りや、住む人々の生活場面を挿入し、その空気感がなかなか美しい。結局、二人は破局することなくボートに乗ってパリに帰っていって映画は終わる。
洗練された映像に魅了される一本で、派手な展開がある物語ではありませんがフランス映画らしい空気感を持ったいい映画でした。
「ダゲール街の人々」
ダゲールという街の人々の日常を描いたドキュメンタリー映画の傑作。扉の後ろから街の方を見る人々の姿を短いカットでつないでいく演出はなかなかのものです。ドキュメンタリーでありながら街の人々のドラマが見えてくる。評価されるだけの作品だと思います。監督はアニエス・ヴァルダ。
一人のマジシャンの立つ姿から映像が幕を開け、そのまま街に入っていって、様々な店の人々を扉のこちらからのカット、さらに店の中の物語を細かく紡いでいきます。
クライマックスは、あるマジシャンのショーと街中の物語が交互に描かれて映画は幕を閉じていく。ドキュメンタリーは本来見ないのですが、優れた一本ということで見に行きました。
「男と女 人生最良の日々」
「男と女」のジャン=ルイとアンヌの53年後を描いたいわゆるノスタルジーもの映画で、過去の名シーンを織り交ぜながら、今や老人ホームで暮らすジャン=ルイのところをアンヌが訪ね、懐かしさを回顧する。さすがに画面は美しいものの、淡々と過去を思い出すだけの展開は眠くなってきてしまった。オリジナリを知るものだけが味わえる一本だった感じです。監督はクロード・ルルーシュ。
獣医をして暮らすアンヌのところに、かつての恋人ジャン=ルイの息子が訪ねてくるところから映画は始まる。老人ホームで暮らし、記憶も頼りなくなった父に会ってほしいということだった。
53年の記憶が蘇るアンヌはジャン=ルイを訪ねるが、あれだけ愛し合った自分のことさえわからなかった。それでも、お互いにさりげない懐かしい話を繰り返していく。
最後に息子がホームの担当看護師に、本当は全て覚えているのではないかという話を聞く。なにもかも覚えていて、忘れたふりをしているようにしか見えないのだという。
夕日に向かってアンヌとジャン=ルイがたどり着く。それは二人の物語も終盤に来たのかと思わせるラストシーンに思えなくもなかった。