くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ショータイム!」「ザ・ヒューマンズ」

「ショータイム!」

シンプルでたわいない映画ですが、脳天気で楽しい映画だった。ドラマ性もエンタメ性もこれと言って秀でたものはないが、人工の灯りを使った演出が農場という舞台にもかかわらず華やかさを醸し出しているのはとっても綺麗だった。監督はジャン=ピエール・アメリス。

 

経営危機の農場を父から受け継いだダビッドが、農場の法的処置を引き延ばしてもらうために判事のところへ向かう場面から映画は幕を開ける。夢ばかり追っているという祖父に叱咤されながら車で出かけたが、農場の処分期限は二ヶ月後だと言われる。落胆したダビッドは華やかなネオンのキャバレーに立ち寄る。そこで、華麗なダンスを見せるボニーの舞台に魅了される。ダビッドは農場をキャバレーにしようと思いつき、ボニーの楽屋へ行くが、踊っていた店は閉店で、ボニーたちはクビになったことを知る。

 

ダビッドはボニーをスカウトするが、ボニーは農場でキャバレーというのに乗り気ではない。そこを強引にダビッドが連れてきて、この地方の芸人リストを元に個性的な芸人を集め始める。耳の聞こえないマジシャン、歌が上手いオカマ、胡散臭い催眠術師、自意識過剰なダンサーなどが集まり、ボニーを中心にリハーサルが始まる。

 

先祖代々の農場を卑猥なキャバレーにするというのでダビッドの母も祖父も最初は疑心暗鬼だがいつのまにかダビッドの熱意に巻き込まれていき、いよいよ明日が本番という日、小屋が火事になる。ダビッド以下みんな一旦は諦めるが、ダビッドの元妻の励ましで勇気を出して焼け跡での舞台を開幕して農場キャバレーは見事開店して映画は終わる。

 

紆余曲折の展開でのヒューマンドラマ部分はすっ飛んでしまって、なんの厚みもない物語でとりあえずラストまで走る映画ですが、そのために単純に楽しむことができました。これも映画の作劇かもしれません。

 

ザ・ヒューマンズ」

A24特集の一本。語らんとすることはわかるが、暗い画面と、一部屋手前から遠くにとらえるカメラ、せせこましい廊下を抜けるアングルなど、窮屈な感覚に征服されてしまう作品で、舞台劇なので舞台劇で見る分には面白いのだろうが、映像として見るとかなりのストレスになった。監督はスティーヴン・カラム。

 

ブレイク家が次女のブリジットがパートナーと暮らすニューヨークの新居に集まってくるところから映画は幕を開ける。車椅子がやっと通れる廊下を父のエリックが認知症の母を押して部屋に入る。ブリジットの相手はリックという中国系の男性で、エイミーは最近キャロルという彼女(どうやらレズらしい)と別れて落ち込んでいる。エリックの妻も何やら膝を痛めている。上の階ではどんどんと不穏な音が繰り返され、水漏れなのか壁のシミや壁紙が盛り上がっている。時々、軋むような音が繰り返され、電球が切れては暗闇になったりする。

 

そんな中で、ブリジット家は食事をし、たわいない家族の話をし、一見平穏な家族を装うが実のところ、その裏ではすでにギクシャクして崩壊している。映画はメゾネット風の部屋を上に下に移動しながら、異常に狭い廊下を通り抜けたり、携帯の電波が入らず窓際まで行くと窓の外に何者かがいたりする。最後の最後、エリックは職場だった学校で不倫をしてクビになったことを娘たちに話す。そして、夜もふけて、それぞれが帰って行って映画は終わる。

 

とにかく、息苦しいほどに窮屈な映画で、薄暗い映像と狭い空間美術に疲れ果ててしまう作品でした。