くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「みなに幸あれ」「ヴェスパー」

「みなに幸あれ」

古川琴音が出ているというだけで、なんの期待もなく見に行ったホラーですが、予想を裏切らずにクソホラーでした。下手くそな脚本と、あざといほどにもったいぶるだけの稚拙な演出、何を語りたいのかその行先が見えない展開、意味のないスプラッターシーン、質のいいジャパンホラーはどこに行ってしまったのかと情けなくなる映画でした。なんで古川琴音が出てるの?という疑問だけの一本。監督は下津優太。

 

田舎の一軒家、一人の少女とその両親、その祖父母が食事をしている場面から映画は幕を開ける。意味のないシンメトリーな構図の後、夜、トイレに立った少女は奥の部屋で呻き声が聞こえるので恐る恐る近づいて悲鳴と共に一人の女性がベッドで起きる。この女性は祖父母の田舎に行くことになっているが、両親が急病で行けず、一人先に行くことになる。途中、老婆が横断歩道を渡ろうとするのを手伝ってやったりした後、目的地の故郷にやって来る。

 

幼馴染の青年と再会し、いかにも虐められている風な中学生と出会ったりして、祖父母の家に着く。しかし、祖父母の態度がどこかおかしい。奇妙な言葉、二階での物音、ぼーっとしている祖父母、夜中、二階の奥の部屋を見ようとした女は、突然祖母が現れ、ドアに体をぶつけ始める。

 

朝、食事をしていた女は廊下を這って来る半裸の男を目撃。祖父母が部屋に引きずって行くのを見た女は、そこで目も口も縫われ、拘束された男を見つける。女は幼馴染に助けを求めその男を助け出す。しかし、ふらふらと道を行く男についていった女と幼馴染は、突然きたトラックに男が跳ね飛ばされるのを見てしまう。

 

それでも、やってきた女の両親も、祖父母も平然と見ていて、死んだ男を燃やしてしまう。女の両親と弟は何事もなく祖父母の家で食事をし始めるが弟もおかしい。女は、父に姉がいることを聞いて写真を使って居場所を見つけ、山奥で暮らす叔母に会いに行く。しかし、薪割りを手伝っていると突然叔母の頭を斧で割ってしまう。女は慌てて逃げ帰るが、祖母のお腹がなぜか大きくなっている。

 

弟は目をつぶして訳のわからないことを叫んでいる。幼馴染のところに行った女は、幼馴染の父が亡くなり、女に自分を絞め殺させる。祖父母の家に戻ってきた女は、幼馴染の目と口を縫って拘束している。場面が変わり、女は街に戻ってフィアンセらしい男と待ち合わせ、フィアンセの実家に向かうような映像で映画は終わって行く。

 

とまあ、いったい何を言いたい、何を描きたい、どうやって観客を楽しませたいのか、全く理解できない上に、シンメトリーな画面で、いかにも映画を作っていると言わんばかりの素人のような演出に辟易としてしまう。これはが今流行りなのか、なんともこれ以上書けない映画でした。

 

「ヴェスパー」

壮大なテーマの割には地味で低予算のスケール感の小さな映画でした。しかも、それほどの長尺ではないのに無駄にダラダラする場面が散見されて、引き伸ばさざるをえない脚本の弱さをなんとか仕上げた感のある凡作でした。監督はクリスティーナ・ブオジーテ&ブルーノ・サンペル。

 

生態系が崩れ、富裕層は城塞都市シタデルに暮らし、平民たちは外界でシタデルからの種子を頼りに生活しているが、その種子は遺伝子操作で一年しか成長しないものだった。寝たきりの父と暮らすヴェスパーは、この日も、荒れた土地で食料を探していた。父は人工器具でなんとか生き延びていてヴェスパーにはサッカーボールくらいのドローンが話し相手となって寄り添っていた。ある時、発電機が壊され、父の生命維持装置が危険になり、叔父のヨナスのところへ血を売りに行く。子供の血はシタデルでは商売になるらしい。

 

その帰り、森で倒れている一人の少女を発見する。彼女の名はカメリアと言って、父と一緒にシタデルを脱出したが輸送機の故障で墜落したのだ。カメリアは、瀕死になって暴れるヴェスパーの父に息を吹きかけて眠らせる。ヴェスパーはカメリアに頼まれて輸送機を探しにいき、ヨナスと遭遇、ヨナスは輸送機の中で瀕死のカメリアの父エリアスを殺害してしまう。さらに同乗者の存在を確認したヨナスはヴェスパーに詰め寄るがヴェスパーは答えなかった。

 

ヴェスパーは、古びた研究所で植物の研究をしていて、なんとか遺伝子操作して通常の植物を再生させようとしていた。そんなある時、カメリアの背中に人造人間ジャグの証拠を見つけてしまう。カメリアは人間ではなく人工物だった。知能ジャグの開発は禁止されていたがエリアスが作り出し、追手を逃れてシタデルを脱出したのだった。さらにヴェスパーは、カメリアの奏でるハーブの音が、種子の繁殖を妨げる遺伝子情報を解放することを発見する。ヴェスパーはその図式を取引にしてシタデルに行こうとするが、ヨナスはカメリアの存在を北シタデルに連絡したため追手が迫る。

 

シタデルからの追手はヨナスを殺し、ヴェスパーらは父の指示で南のシタデルを目指して逃亡、追手を倒したヴェスパーらだが、これ以上の追跡を阻止するためカメリアはヴェスパーを眠らせて投降する。目覚めたヴェスパーは森の中の砦に登り、遺伝子操作して制限を解放した種子をばら撒いて映画は終わる。

 

どうにも地味でダラダラ進む作品で、ヴェスパーとカメリアがやたら抱き合ったり泣き叫んだり、そこまでくどくど描写する必要があるのかというシーンが散見され、壮大なテーマが浮かび上がってこない上にエピソードの辻褄も合わないところがある。典型的なB級SFという作品だった。