「白鳥」
今となっては廃れてしまった純愛悲劇ドラマの典型的な作品。若き日の吉永小百合が抜群に可愛らしく、その魅力だけでも見た甲斐のある映画でした。監督は西河克己。
主人公麗子は、父を大学教授に持つ女子大生。幼馴染小宮山と婚約をし幸せな日々を送っている。ある雨の日、叔父で古本屋をしている研二のところへ本を探しに行き、留守番をしている時に一人の青年近藤の万引きに遭遇、知り合ってしまう。
後日、麗子の家に荷物を配達に来た近藤を見て、麗子は次第に心惹かれていく自分を知る。近藤には不治の病の妹がいて、その病院に通ううちに麗子はどんどん近藤が好きになり、小宮山と二人への愛に悩み始める。
一方麗子には、自分の本当の父への疑問があった。戦地に父親が行っていたときに自分が生まれたという素性を知り、本当の父は研二だと思い始める。そして、父に近藤と小宮山の二人が好きで、小宮山との婚約を破棄してほしいと打ち明けた時、父の激怒とともに全てを麗子は悟る。
麗子は小宮山を訪ね自分を与え、そのまま病院へ行くが近藤の妹は死んでいた。麗子は近藤を訪ね、彼にも抱かれる。そして、どうしようもない自分の心を清めるかのように海に入り死んでいって映画は終わる。
文学的とも言える純愛ドラマで、吉永小百合のあの清らかな姿がないとなり立たないような映画です。作品としては普通ですが、どこか懐かしさを感じる一本でした。
「真紅な海が呼んでるぜ」
日活得意な船乗りアクション。ワンパターンのお話と男と女のドラマで、特に深いものもなくありきたりに展開。懐かしい通天閣の景色が今となっては見ものの作品でした。監督は松尾昭典。
一艘の船の中で仲間同士の喧嘩に始まり、主人公了次の登場。兄雄作がこの船の船長で小遣い稼ぎに密輸をしている。この船が神戸についてひと騒動が起こるというのが本編。
港のダンサー真弓と雄作の恋ドラマに、了次が若い頃に事故で死なせた友人の妹葉子の借金問題も絡んで、いかにも悪役の港を仕切る男たちのと喧嘩シーンの後、了次は真弓と仲良くなり結婚を決めるが、間も無くして、また了次は雄作の船に乗り旅立っていってエンディング。
恥ずかしくなるほどのワンパターンの物語ですが、いわゆる渡哲也のスター映画だからこれでいいのです。これが映画黄金期というものだと思います。
「恐怖への旅」
巻き込まれ型のサスペンスで、わかりやすい展開と、影を多用した画面作りはまさにフィルムノワールの世界。監督はノーマン・フォスター。
一人の太った男が何やら支度をして出ていく。執拗に流れる蓄音機の音。第二次大戦下、トルコで武器援助の仕事をしたグレアムは妻と帰路に着こうとしていたが、トルコ支社長の男が無理やりグレアム一人をクラブに連れていく。そこでマジックの相手をして舞台に上がったグレアムは、暗闇で誰かに撃たれる。撃ったのは冒頭の太った男バナットで、どうやらドイツの間諜の一味らしく、グレアムの帰国を阻止しようとしているとわかる。
グレアムはホテルに戻ることもできず、妻を一人先に行かせて、ハキ大佐の指示で船で帰ることになる。ところが舟の中ではバナットがいて、危険を感じたグレアムは、なんとか港まで行こうと、様々な手を使う。ここのサスペンスが物語の中心になる。
なんとか無事に済むかと思われたが、港に着く直前で、ドイツの間諜らに脅され、港に降りた途端車に拉致される。ところが、なんとか車から脱出、妻の待つホテルの部屋に行くと、そこには先回りした間諜がいて、グレアムは再びピンチに。妻を先に行かせて、グレアムは窓をでてベランダに逃げるが、バナットが追ってくる。
土砂降りの雨の中で、足元の危ないベランダ伝いの逃亡がクライマックスとなり、バナットは転落、駆けつけたハキ大佐に助けられ大団円。ヒッチコック映画を見ているような面白さと、わかりやすい展開が映画は娯楽だと見せつけてくれます。面白かった。