さすがにデビュー作だけあって、荒削りでギラギラした作品ですが、スタイリッシュなカメラワークと洒落た色彩演出、音楽センスの良さはのちの傑作を彷彿とさせる作品でした。物語が同じ展開を繰り返すので、少々中盤以降しんどくなって来ますが、ラストへ向かってストーリーが整理されていく作りのうまさはなかなかの映画だった。監督はウォン・カーウァイ。
一人の若者アンディがベッドでまどろんでいると電話が鳴る。相手は従姉妹のマギーで、何度も電話をした挙句家の前までやってくる。風邪を引いたとマスクをしたマギーをアンディが入れて休ませる。まもなくして電話が鳴りマギーが出るとジャッキーという男だった。ジャッキーはアンディの弟分で、金の取り立てにきているから来て欲しいというものだった。何度目かの電話で、目が覚めたアンディはジャッキーの所へ行き、金を手にしてやる。その帰り、アンディは恋人のメイベルに振られてしまう。
ジャッキーは田舎から出てきてチンピラまがいのことをしているが血気盛んすぎていつもアンディに尻拭いしてもらっていた。ジャッキーは弟分のサイの結婚式の金をトニーという男に借りるが、返済の当てもなく、トニーはジャッキーの兄貴分のアンディのところに来る。何かにつけてトニーはアンディに敵対心をむき出しにしていた。
アンディは次第にマギーに惹かれるようになり、恋人同士になっていく。しかし、マギーと逢瀬を重ねるたびにジャッキーがトニーとトラブルを起こし、アンディが駆けつけることが繰り返される。次第に疲れてくるアンディはマギーに誘われランタオ島でしばらく平穏に暮らす。その頃、大物になりたいという思いからジャッキーは地元ヤクザのボスからヒットマンになる事を持ちかけられ、その仕事を受けてしまう。そして大金をもらったジャッキーはサイにその金を与えるが、おかしいと思ったサイはアンディに連絡する。
アンディはマギーに別れを告げてジャッキーの元へ向かう。ジャッキーは、仕事の前に母に会いに実家に行くがそっけなくされてしまう。そこへアンディが現れ、仕事を辞めるように忠告される。しかし、アンディにこれ以上迷惑をかけたくないジャッキーはアンディをまいて、ターゲットのところへ行く。ボスが指定したターゲットは警察と取引をした裏切り者らしく、警官に護衛されて出てくる。ジャッキーは銃を発砲するが、ターゲットに致命傷は与えられず警官に撃ち殺される。そこへ駆けつけたアンディがターゲットを射殺するも警官に射殺されてしまい映画は終わる。
ジャッキーがトニーに痛めつけられたり痛めつけたりを繰り返す中盤が若干しつこいので、間延びしてくる感がないわけではないものの、次第にアンディが疲弊していきクライマックスへ向かう展開のスピード感が加速していく構成は面白いと思います。一級品の完成度とは言わないまでも、なかなか個性あふれる秀作だった。