くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マッチング」「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」

「マッチング」

雑なミスリードを繰り返すホラーサスペンスだと物語を追いかけて行ったら、最後の最後で騙されてしまったのは非常に悔しい。決して一級品の鮮やかさや起承転結のテンポの良さは見えないのだけれど、B級テイストを貫きながら必死で工夫を凝らしていくストーリー構成は面白い。この手の映画はこう言う出来栄えで十分と言えば十分かもしれない映画でした。監督は内田英治

 

マッチングアプリで結婚したカップルが惨殺されている現場から映画は幕を開ける。ブライダル施設で働く輪花は父と二人暮らしで、未だ独身で少々焦りを感じるとともに、恋愛を極端に避ける性格でもあった。仕事に不平を漏らしながらも同僚で親友の尚美と仲良くやっていたが、高校の恩師の挙式をセッティングする機会を得て、彼らがマッチングアプリで知り合ったと言うのを聞き、興味半分で登録する。しかし、引っ込み思案な輪花はなかなか前に進まない。そんな彼女に尚美が後押しし、マッチング率97%の見た目も良い吐夢という青年と接点を作る。

 

輪花は吐夢と初デートをするが、現れたのは写真と全く違う雰囲気の暗い青年だった。輪花はすぐに吐夢と関係を遠ざけるが、吐夢はストーカーのように輪花に接触してくる。しかも、自宅にまで押しかけてくるに及び輪花は恐怖さえ覚え始める。そしてマッチングアプリプログラマー影山剛に相談するようになる。吐夢というのは他のマッチングアプリでも問題を起こした人物らしかった。というかそういう入会を許可するこのアプリサイトはどうなのだという展開である。

 

以降も吐夢は何かにつけ輪花に近づいてきて、影山剛に接近しない方が良いと忠告めいたことをしてくる。さらにマッチングアプリ殺人事件が輪花の恩師のカップルも殺されてしまう。葬儀に行った輪花は影山剛に励まされながらも、次第に親しくなっていく。刑事たちの捜査も進まない中、吐夢や輪花にも聞き込みをするも埒があかなかった。

 

そんな時、輪花の自宅に無言電話が入る。その電話以降、父芳樹の様子が変わり始める。父芳樹は輪花が幼い頃、ネットのチャットで知り合った女性節子に執拗に迫られていて苦しんでいた時期があった。輪花が保育所で一人遊んでいると節子が四葉のクローバーを輪花に与えたりして接近してくる。節子のアパートへ行った芳樹が別れることを告げると狂ったように包丁で芳樹に襲いかかる。その際、帰ってきたら節子の息子に、もうすぐ兄弟ができると笑って叫んだりする。まもなくして、輪花の母美知子は公園に輪花を残して行方不明になっていた。

 

ある日、輪花の父は突然行方をくらまし、渓谷で自殺してしまうが、警察は他殺と考える。さらに、吐夢は尚美にも接近し、尚美から輪花に話があると連絡が来る。輪花が尚美のマンションに行くと突然尚美が階上から落下して死んでしまう。身近な人間が次々と死んでいく中、輪花は影山剛に、一軒の廃墟になった団地に連れて行かれる。そこで影山は、自分の母は輪花の父芳樹に執拗に迫った女性節子だと告白する。そして芳樹に捨てられ苦しんだ節子を見て娘の輪花への復讐の機会を探っていたのだと言う。影山剛は輪花に迫ってくるが駆けつけた吐夢に助けられる。マッチングアプリ殺人事件の犯人は影山剛だった。影山は駆けつけた警官に逮捕される。

 

全てが終わったかに見えたが、吐夢から、真実を知りたいかと輪花に連絡が入る。そして吐夢は山深い施設に輪花を連れていく。現れたのは車椅子に乗った女性とその世話をする女だった。話をする中、その世話をしている女こそ影山の母節子で、芳樹の不倫相手だった。しかも、車椅子の女は、両足に足枷をはめられた輪花の行方不明になった母美知子だった。輪花を公園に残して美知子は節子に話をするつもりだったが、節子は輪花の母を拉致して二十五年暮らしていたのだ。そして節子は輪花も殺そうと鋏を振り上げるが、すんでのところで吐夢が飛び込み身を挺して輪花を守る。

 

刺された吐夢が入院している病院に輪花が現れる。輪花は吐夢に新しい靴とシャツをプレゼントする。吐夢は留置所の節子に会いにいく。吐夢はロッカーに捨てられていたのだが、手にクローバーの入ったロケットを握っていた。節子が芳樹と付き合っていた頃にできた影山剛の弟が吐夢だった。

 

その頃、取り調べを受けている影山剛は、自分が殺したのは輪花の恩師の高校教師のカップルと尚子だけだと言う。そして新たなマッチングアプリ殺人事件が起こったと連絡が入る。殺害に使ったカッターナイフを洗う犯人の足には輪花が送った靴、血だらけのシャツがあった。吐夢は輪花と再びデートをしている。二人は顔を合わせて微笑んで映画は終わる。輪花もまた吐夢と同じくカップルを殺害する同じ精神状態の持ち主だった。97%のマッチングの意味がそれだと言わんばかりで映画はエンディング。

 

なるほど、二転三転させるのはしつこいほどに凝っているが、鮮やかさのテンポにはちょっと欠けるし、脇役が完全に死んでいるのは勿体無い。さらに、凝りすぎたために微妙な矛盾が見えなくもないのは残念。輪花が殺せない恩師と親友以外は吐夢らが殺したと言う裏読みも面白いし、良くできたB級ホラーサスペンスとしては楽しめる映画でした。

 

「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア

とってもテンポが良くて、それでいてユーモア満点な上に、ほろりと感動させる名作に出会いました。死期が迫った二人のアウトローロードムービーの傑作。音楽もいいし、ストーリー展開もとっても楽しい。それでいて絵作りも面白くて、どんどん引き込まれていく。エンタメ性も抜群で、憎めないキャラクターがとにかく最高の映画だった。監督はトーマス・ヤーン。

 

トゥルーロマンスという派手な風俗店の看板、店内でセクシーなダンスをする女性たちの傍で床掃除をする二人のギャング、一方が言うジョークを全く理解できないアラブ人の相棒。幹部のフランクが女たちのダンスにハッパをかけ、二人の手下に仕事を依頼する。かっこいいベンツをあてがわれ、何やら輸送するように指示されて映画は始まる。

 

一方列車の中、禁煙なのにタバコを吸うマーチンの前にルディという真面目そうな男が座る。二人はこれから病院で検査をするらしいが、それぞれ病院で、マーチンは脳腫瘍でいつ死んでもおかしくないと宣言され、ルディは骨肉腫で末期癌だと告知される。そしてたまたま二人は同じ病室になって再会する。マーチンはそこでもタバコを吸う。

 

一方ベンツで仕事をするギャング二人は、途中で不良少年を跳ね飛ばしてしまい病院へ連れていく事になる。少年は悪ガキで、ギャングたちに妙に絡む。その頃、この病院にいたルディとマーチンだが、病室にたまたまあったジンを飲むのに厨房へ行きレモンと塩をアテに飲んでいて、ルディが海を見たことがないと聞いたマーチンが、それなら海を見に行こうと地下の駐車場へ行く。そこでかっこいいベンツを見つけた二人は、ドアが開いていたこと、キーも中にあったことからちゃっかり盗んで走り始める。出口で、ようやく解放されたギャング二人に道を聞いてそのまま逃走、自分たちの車だと気が付いたのはそのあとで、フランクに叱られ、ギャングたちは車を取り戻しに向かう。

 

マーチンたちはベンツのグローブボックスで拳銃を見つけ、ガソリンスタンドで店主を脅して金を奪い、逃げる途中、車を中古屋へ預けて銀行強盗に入ってとりあえず逃走資金を工面する。一方ギャングたちは中古屋で自分たちの車を見つけたが買い戻す金がなく、銀行強盗に入るが、そこはマーチンたちが先に襲った後だった。

 

マーチンたちは中古屋でベンツを買い戻して逃走するが、ベンツのトランクにアタッシュケースに入った大金を発見する。マーチンたちは衣装を買い揃え豪華なホテルに泊まり、贅沢三昧しようとする。マーチンは時折発作を起こし、劇薬を飲んで抑える。

 

翌朝、ベンツを追ってきた警官たちがホテルでベンツを発見し乗り込んでくる。マーチンはルディを人質だと偽ってその場を脱出、警官の制服を奪ってパトカーで逃走するが、途中でオーバーヒートし、出くわした自家用車をうまく騙して再度逃走。一方ギャングたちはようやく車を取り戻すがフランクに報告に行くとトランクに金がない。フランクは手下にマーチン達を追うように指示する。

 

こうしてマーチン達はギャングたちと警官に追われる事になる。フランクは、手下に任しても埒があかないので無法者ギャング団を呼び寄せる。無法者たちとパトカー軍団に挟み撃ちにされるマーチン達だが、トウモロコシ畑に逃げ、警官隊と無法者の銃撃戦が起こる。しかし逃走したマーチン達の車は崖から車が落下してしまう。

 

それでも、逃げおうせたマーチンたちは、手にした大金で死ぬまでにやりたいことを書き出し、お互いに何をするか決める事にする。マーチンはエルビス・プレスリーの大ファンの母親に、プレスリーがしたのと同じようにピンクのキャデラックを送るのだが、実家に行ったところで待ち構えていた警官に捕まりそうになる。

 

ところが突然マーチンが発作を起こして倒れ、救急車に乗せられることになるがルディも同乗したいと言う。ヘルシンキシンドロームだと警官たちが納得し、ルディも同乗するが実はマーチンのお芝居で、二人はまんまと救急車を奪い海へ向かう。途中、ルディのやりたいことの一つ、女二人とSEXするというのを叶えるために通りかかりの風俗店へ入る。ところがそこはなんとトゥルーロマンスだった。

 

女を選んで部屋に行く途中、ギャング二人に見つかり、マーチン達はフランクらに追い詰められるが、そこへ大ボスのカーチスがやってくる。新聞記事でマーチンたちのことや病気のことも知っていたカーチスは、二人を送り出してやる。マーチンとルディは救急車で海にやってきて浜辺に立つ。やがて太陽が昇る中、マーチンは事切れて死んでしまう。ルディが寄り添って映画は終わる。

 

とにかく、映画が面白い。詰め込まれたストーリー展開が抜群の音楽センスとテンポ良い流れであれよあれよと進んでいく心地よさと、エロと毒を織り交ぜているのに憎めないほどにユーモア満点で、切ないラストと相まって映画が本当に心に残る感動を呼び起こしてくれます。生涯好きな映画の一本が増えた気がします。本当にいい映画だった。