「海街奇譚」
個性的なカット割と大胆な編集、鏡や窓ガラスを効果的に使った見事なカメラワークと美しい構図で、相当映像クオリティの高い作品なのはわかるのですが、いかんせん物語が追いかけていけなかった。現実なのか回想なのか妄想なのか、過去と現在を繰り返す展開に翻弄されてしまう。映像が美しいのでさらに目眩く混乱に苛まれてしまいました。非常にいい映画だと思いますが、難しかった。監督はチャン・チー。
フォルムカメラを持った一人の男が海辺の港町にやって来る。学校の中に入れてもらおうとするが門で職員に止められ、写真を撮ろうとするが顔を隠される。職員が気がつくと男はいなくて、いつのまにか教室の中を撮影している男。教室では消しゴムスタンプを作っている少年が先生に咎められ、スタンプを窓の外に捨てられて、窓の外のカメラの男が拾う。生徒たちが帰る中に美しい女教師を見つけて声をかけるが女教師は走り去ってしまう。
桟橋で写真を撮っていたら、頭にカブトガニを被った村人たちが何やら儀式をしているように通り過ぎ、その先に飲んだくれの男がいてその男に、村で無くなった仏像の頭が見つかったのか問い詰めている。問い詰められた男は町長と呼ばれ、仏像の頭が見つからないと漁に出れないし、漁に出た人たちも戻ってこないのだと儀式に男たちに言われる。さっきに消しゴムスタンプを作っていた少年はペットボトルに水を入れそれを通して覗くと真実が見えるらしい。その少年の父が町長らしい。町長はことあるごとにカラオケにうつつを抜かしている。カメラの男は町長のいるクジラのネオンのクラブに行き、ホステスとダンスをする。
カメラの男は泊まるところを探していて、太った女主人に勧められて、そのホテルに泊まることになる。さっき拾った消しゴムスタンプを窓に押し付けてみる。押し付けられた文字を通して光が部屋に差し込む。カメラの男は妻を探しにこの村に来たのだと言う。彼は映画俳優で「オアシス」と言う作品で変態殺人鬼を演じたと女主人に言うが女主人は見ていないのに適当な返事をする。
女主人には双子の妹がいて、このホテルを経営していたがうまくいかず、自分に変わったら繁盛しているという。8月5日に妹が出ていったのだが、カレンダーはその日のままにしているという。カメラの男が夜食を頼んだので、女主人はカブトガニとタコを料理しようとする。女主人はかつてバレエをしていたと言い踊り出す。場面が変わると、女主人はカメラの男に殺され、死んでいるかのカットになり傍にカメラの男がいる。映画のワンシーンなのか現実なのか妄想なのかわからない。
村の若者が、仏像の頭が見つかっていないから危険だと村人に言われながらも一人漁に出ていく。カメラの男は、学校帰りの女先生を呼び止め写真を撮らせて欲しいと頼む。二人は映画を見に行き生徒たちに見つめられる。カメラの男はこの村に来る前、大都会で美しい妻と暮らしていたが、妻はある朝、男に別れを告げる。丸い鏡に映る男の姿と妻の会話場面がシュールで美しい。妻は投資会社にいるようで、カメラの男が外から妻のいるビルを撮っていると妻が窓に映し出される。カメラの男が妻を殺害したかのように部屋のガラスに赤い血飛沫らしきものがあるが真相は不明。
村では女教師とカメラの男は体を合わせている。この女教師は実は男の妻の若き日なのか、出会った頃の物語なのか、はたまた不倫相手なのか、同じ女優さんが演じているので混乱して来る。村ではカメラの男は船に乗り沖に出る。一人漁に出た男が戻ってきて、消しゴムスタンプの少年と父が大喜びで出迎える。船に乗っていたカメラの男がカメラを構え、船から消えたような遠景になって映画は終わる。男は自殺したのかと思うがそれも違う気がする。
なんともシュールな展開に混乱してしまう作品ですが、真上から捉えるカットを効果的に挿入したり、クレーン撮影を独特の使い方で映像にしたり、鏡や窓に映される人物や、スタンプ消しゴムを通して光が通る場面、横長の画面で船と人物を左右に配置した構図など、映像のクオリティは相当なセンスである。しかしとにかく物語がわかりづらくてほとんど理解できないほどしんどかった。映像としてはなかなかの映画だったと思うけれどもストーリーテリングはなっておらず、なんとも言えない一本だった。
「ミニオンの月世界」
月に追いやられてしまったグルーの敵役ベクターの月からの生還を果たすべく奔走する姿を描いた短編作品。そこへミニオン達もやってきて大騒ぎ。ベクターはなんとか月を脱出したが、たどり着いたのは火星だったとなって映画が終わる。「FLY!」と同時上映の添え物作品です。
「FLY!フライ!」
子供向けのシンプルなエンタメ映画だと割り切ってみる作品で、普通に楽しめばそれでいい。あえて言えば、鳥たちの家族の物語なのに画面の視点が人間の高さというのはどうなのかと思う。でも、そんなことはどうでもいい映画なのかもしれません。監督はバンジャマン・レネール。
渡り鳥の生活をせずに年中同じ池で暮らすマックたち家族、マックが池の外には恐ろしい色々が居るというのを子供のダックスと幼いグェンらに聞かせている場面から映画は幕を開ける。何かにつけ臆病な夫のマックにいつも文句を言うのは冒険好きな妻のパムだった。
そんな彼らの池に渡り鳥の一行が通りかかる。ダックスはその中のキムに一目惚れしてしまうが渡り鳥一行は目的地へ旅立つ。一緒に行こうと誘われたが、マックが思いとどまってしまう。そんなマックにパムはとうとうキレてしまい、叔父のダンをグェンらが説き伏せてジャマイカを目指して旅立つ事にする。
途中ニューヨークに立ち寄ったマック達は、都会の鳩のボスチャンプと出会い、人間のレストランで籠の鳥でジャマイカ出身のおうむのデルロイを助け出して、一行はジャマイカを目指す。途中、レストランのシェフに料理にされる寸前の水鳥を助けたマック達は、一旦はシェフのヘリコプターに捕まってピンチになるが、ダックス達の活躍で脱出、無事ジャマイカについて映画は終わる。
キャラクターの個性が全く描けていないので映画が面白くないと言うのが正直なところで、お話のシンプルさは構わないのですが、全体にワクワク感が感じられない普通の子供向けアニメでした。