くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「四月になれば彼女は」

「四月になれば彼女は」

原作が弱いのか脚本が弱いのか演出が弱いのか、次の展開に行く動機づけが全く見えないために唐突にストーリーが流れていく感がラストの真相まで拭えなかった。それと、それぞれの役者は芸達者を揃えているのですが、完全な配役ミス。森七菜は流石に長澤まさみ佐藤健と歳が離れすぎていて、どう見ても妹にしか見えない。もちろん年上を演じればいいのだろうが、そこは演出でもカバーしないといけない。終盤へ向かうミステリー感が完全に失敗しているので物語が盛り上がってこない。いいたいメッセージの押し付けだけが目立つ作品だった。監督は山田智和。

 

ボリビアのウユニ塩湖に立つ春の姿から映画は幕を開ける。主人公藤代俊の元恋人の春は、ボリビアからプラハアイスランドを旅しながら藤代に手紙を送っている。場面が変わり、現在の藤代はフィアンセ弥生と結婚式場を見学に来ていた。パイプオルガンを引いてみる弥生の姿に少し驚きを感じる藤代。

 

同棲している自宅に戻った二人は、四月一日を迎える。この日は弥生の誕生日だった。そして翌朝、藤代が起きると弥生の姿がない。動物園で獣医をしている弥生の事だから忙しいのだろうと流すのだが、三日経っても弥生は戻ってこない。ここ二年ほどセックスレスになり、お互いの愛に疑問を感じていた。勤務先の動物園に行ったが休暇届を出しているという。弥生の妹純に会いに行っても行方はわからなかった。原作では藤代は純に誘惑されたエピソードもあるらしいが映画では削除されているので、非常に薄っぺらい展開になる。

 

精神科の医師をしている藤代は職場の先輩に相談したりする。藤代は弥生とは患者と医師という関係で知り合った。眠れないという弥生の相談を受けているうちに次第に藤代は弥生に惹かれるようになり、やがて結婚することになったのだ。そんな藤代は春から届いた最初の手紙を弥生に見せる。

 

学生時代写真部だった藤代は部員勧誘で春と出会い、先輩のペンタックスと三人で遊ぶのが日課になる。藤代はいつか世界中を回って写真を撮りたいという春に惹かれるようになる。原作ではペンタックスもまた春に恋心を抱くも成就しなかったがこのエピソードも削除されている。

 

藤代と春は交際を始め、一緒に海外旅行をするために計画を立てるが、父と二人暮らしの春は父の許しを得ることができなかった。それでも海外へ旅立とうとしていたが、空港へいった藤代は結局行くのを断念した春と会い、それをきっかけに二人は別れてしまった。藤代はこの時春を諦めたことを後悔していたが、その辺りの描写も映画では弱い。やがて10年の月日が経ち医師となった藤代は弥生と出会ったのだ。

 

弥生の行方の見当がつかなくなったある日、ペンタックスから電話が入る。春が死んだのだという。春はアイスランドで倒れ、日本へ戻ってきていた。そんな藤代に春から手紙が届く。ペンタックスは藤代に行って欲しいところがあるという。藤代が向かった先は終末を過ごすホスピスの施設だった。春は、不治の病となり、この施設で患者たちの写真を撮りながら最後を迎えたという。そして藤代は施設の職員から春のカメラを譲り受ける。藤代は、母校の大学に勤務するペンタックスに無理を言って暗室を借り、春のカメラの中の写真を現像する。そこには弥生の写真があった。

 

弥生は、春がアイスランドから出した手紙をつい読んでしまい、春が入っている施設の存在を知る。藤代との結婚に何か踏ん切れないものを感じていた弥生は、かつて藤代を愛した春と会うことでその理由を見つけようと考えた。施設の職員として勤務し始めた弥生は春と親しく話すようになり、やがて、弥生は春に会うためにここに来たと告白して、その際、春は弥生の写真を撮ったのだ。

 

全てを知った藤代はペンタックスに無理を言って、ある海岸へ行って欲しいという。藤代がついた海岸に弥生はいた。ここが原作と完全に違い、かなり無理のある展開になっている。藤代は弥生とようやく再会し、欠けていた愛の何かを確かめ合い、ようやくお互いを認め合って歩いていく姿で映画は終わる。

 

どうにもうまくストーリーテリングができていない作品で、前半のミステリー部分と春の存在、弥生や藤代の心のわだかまりが全く見えてこないために、いったいどういう話なのかとわからないまま映画が終わってしまう。しかも、年齢差が中途半端な配役で、何もかもチグハグで、言いたいことがモヤモヤと全く見えないどうしようもない仕上がりの作品だった。ネットで原作を検索してみたら相当な部分が削除されていること、舞台となる場所が無理やり変更されているのが見えてきて、要するに予算不足と脚本の中途半端さによる不出来な仕上がりの映画になったことがわかりました。本当に残念な作品だった。