くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ペナルティループ」「ロッタちゃんと赤いじてんしゃ」(2Kリマスター版)「真夜中の虹」

「ペナルティループ」

面白いと言えば面白いのですが、テレビレベルの小手先のストーリーという感じの作品で、それを無理やりシュールな映画作品に仕上げようという軽いタッチの作品だった。結局なんの話かといえばその程度の話かという映画ですが、気楽に見れたのでいいとしましょう。監督は荒木伸二。

 

ベッドで目を覚ます岩森、傍に恋人の唯がいてこれから仕事に出かけるようで、岩森が引き止めるがそのまま家を出ていく。岩森は自宅で建築パースを作ったりしている。夕方二人の男が訪ねてきて岩森はある河岸に連れて行かれる。そこで唯の死体を検分させられる。どうやら唯は殺されたらしい。

 

6月6日朝、岩森はベッドで目を覚ます。職場の植物工場へ行き、いつものように勤務をこなす。駐車場に一人の男がやってきて、機械の点検をする。岩森は自動販売機のカップに何やら細工をし、さっきの駐車場の男溝口が自動販売機のコーヒーを飲む。溝口は車に戻るが急に気分が悪くなり車を停める。そして深夜、目を覚ました溝口の車に岩森が飛び込んできて滅多刺しにして殺し死体を川に沈める。

 

再び6月6日朝、岩森はまた目を覚まし、職場へ行き、同じようにコーヒーに仕掛けをするが、溝口はそのコーヒーを食堂にいた別の女性に与える。岩森は無理やり溝口の車に飛び込んで殺す。そしてまた6月6日朝、岩森はまた職場へ行く。溝口はコーヒーを岩森に渡し次のコーヒーを飲むが気分が悪くなり、また岩森に殺される。何度も繰り返すうち二人は会話を交わすようになり、溝口は当たり前のように岩森に殺される。

 

以前、岩森は、車を走らせていて、たまたま唯が何かを燃やしている現場に遭遇して知り合った。ファミレスで一夜を明かし、唯を駅に送っていくが、何者かに追われるように唯が駆け戻ってきて車に乗る。こうして二人は恋人同士になったようである。そして、また6月6日朝、岩森の周りには謎の男が出没し始め、ラジオからのニュースで今日が最後だと伝えられる。

 

岩森は溝口を唯が殺された河岸に連れていく。そこで、溝口は、実は唯は死にたかったのだと話す。岩森はいつものように銃で溝口を撃ち殺す。気がつくと岩森は謎の男の前にいた。謎の男との契約で時間を繰り返しながら、溝口への復讐を繰り返すことになっていた。そして契約が終わり、元の世界に戻る手続きに入る。いきなり戻らない方が良いと言われ、岩森は最後に、唯と再会し別れていく。目が覚めると岩森の部屋に張り巡らされたシートを何者かが剥がして片付けていく。

 

元の世界に戻った岩森は車で外に出るが。前方のバイクを避けて道の脇に突っ込む。血だらけになって出てきた岩森のアップで映画は終わる。

 

一見、シュールなのだが、次第にSF色を帯びてくる。植物工場という職場設定もどこか近未来感があるし、謎の男も、何かの実験の研究者のようでもある。前半のオカルト的な出だしからの展開が奇妙な違和感になっていく後半、結局、唯の復讐劇のどろどろ感はどこかへ吹っ飛んで、岩森の周りの人物描写もあまり効果を生まず、まるで世にも奇妙な物語の一編のような気分で映画館を後にしました。

 

「ロッタちゃんと赤いじてんしゃ」

さすがに三作目になると、ちょっと工夫の見られない展開と、ほのぼの感が薄れてしまった仕上がりでした。前作の方が心温まる感動がありましたが今回は普通でした。監督はヨハンナ・ハルド。

 

雨の日、風邪をひいているロッタは兄ヨナスと姉ミアがお菓子を買いに行くのについていけず、ママと喧嘩をしているところから映画は幕を開ける。ところが、お菓子屋さんでヨナスらがいると、一人でやっていたロッタがいた。帰ったらママに叱られて部屋を出れなくなるロッタ。

 

家族でハイキングに行くことになり、パパの車で川沿いのハイキング場へ。そこでヨナスが川に落ちて、助けたパパと一緒にずぶ濡れで帰る。ロッタの5歳の誕生日、ロッタはヨナスらと同じように自転車が欲しいがまだ早いからと貰えない。ロッタは隣のベルイおばさんの物置から自転車を持ち出して乗るが、大きいのとブレーキがわからず生垣に突っ込んでしまう。がっかりしているロッタに、パパは中古の赤い自転車を持って帰ってくる。

 

ロッタ、ヨナス、ミアはママと一緒にママの実家へ列車で出かける。ロッタは一年ぶりにおばあちゃんらに会い大はしゃぎ。それでもママに怒られて、一人で帰ると言い出すが。そこへ車でパパが駆けつける。ロッタはおばあちゃんに本を読んでもらって映画は終わる。

 

前作と違い、淡々とエピソードが流れるだけで、全体のリズム感がいまいち盛り上がらないままにエンディングだった。

 

「真夜中の虹」

抜きん出た音楽センスと、シリアスドラマを笑い飛ばしてるんじゃないかというコメディセンスに楽しくて仕方がない感覚を味わわせてくれる秀作。何気ないシーンがよく考えると常識はずれなユーモアが溢れているのがとっても面白い。監督はアキ・カウリスマキ。さすがです。

 

炭鉱が閉抗になり、爆破して穴を埋めている場面から映画は幕を開ける。カスリネンとその父がカフェで話していて、父はカスリネンに自分の車を与えて、一人銃を持ってトイレに入り自殺してしまう。父が言っていた南へ行けという言葉通り、カスリネンは車で南へ向かう。しかし途中のカフェで暴漢に襲われ金を巻き上げられてしまう。

 

無一文になってカスリネンは日雇いの仕事をしながら安ホテルに泊まるが、そこでイルメルという女性と知り合う。イルメルには息子も一人いた。ある日、カスリネンは、金を奪った強盗に再会し、その男を襲うが逆に警察に捕まってしまう。カスリネンは刑務所でミッコネンという男と知り合う。

 

ある日、カスリネンの誕生日だからとイルメルが誕生日ケーキを差し入れてくるが、カスリネンの誕生日はずっと後だった。なんとケーキの中に金切りノコギリが入っていて、それを使ってミッコネンと脱獄する。カスリネンはイルメルにプロポーズするが警察の追っ手が迫る。カスリネンはミッコネンに立ち合いを頼んで結婚式を挙げる。一方、ミッコネンは裏社会の知り合いにパスポートと海外逃亡の船の手配を頼む。

 

ミッコネンとカスリネンは、パスポートを作る金のために強盗しようと計画するが、ミッコネンの知り合いが、半分金をもらえるなら車や銃の準備をしてやると言われ条件を飲む。そして金を奪ったカスリネンらはパスポートをもらうためにミッコネンが一人掛け合いに行くが、金を全部よこせと言われ、ミッコネンがビンを割って脅そうとしたのだが逆に刺されてしまう。

 

カスリネンは、ミッコネンがなかなか出てこないので銃を持って中に入っていき、刺されたミッコネンを発見して、裏社会の男を撃ち殺す。そして、イルメルを呼んで、ミッコネンを助け出すが、ミッコネンはもうダメだから埋めてくれと頼む。

 

カスリネンはイルメルとその息子を連れて、ミッコネンが段取りした密航船に乗るべく港に行く。そして、メキシコ行きのアリエルという船に向かっていくところで、背後に「虹の彼方に」が流れて映画が終わる。

 

シリアスな犯罪映画なのに、なぜかユーモア満載に展開する軽いタッチの映像がとにかくユニークで楽しい。これぞカウリスマキと言わんばかりの秀作でした。