くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「次郎長富士」「モリのいる場所」

kurawan2018-05-23

「次郎長富士」
本当にたわいのない娯楽映画で、オールスター勢揃いというのだけが売りの一本。それぞれのスターが次々と次郎長物語の名場面に登場、そのエピソードの羅列という作品である。監督は森一生

街道でどんどんその名を挙げている清水次郎長が宿敵黒駒の勝三と最後の大立ち回りをしてのエンディング。クライマックスまでに吉良仁吉の名シーン、森の石松の名シーンなどなどが次々と脈絡もなく展開していく。

ちらっとでるだけの大スターも数限りなく、最後は広大な富士山をバックに大チャンバラ。見事打ち果たして次郎長の時代を打ち立てて映画が終わる。これというものはないが映画黄金期の娯楽大作を堪能する。これで良いのですね。


モリのいる場所
とっても素敵な映画でした。淡々と展開するストーリーと散りばめられるさりげないユーモアが絶妙のリズムを生んで、なんとも言えない心地よさを作り出していく。魅力的な映画という感じの一本でした。監督は沖田修一

30年余り自宅の庭から外に出たことのない画家森谷守一、通称モリの家にはいつのまにか誰とも分からない人たちが集まっている。森と妻秀子が碁石を使ってオセロをしている場面から映画が始まる。その名声ゆえに表札を何度つけても持っていかれてしまうがどうということもなく次の表札を描いてもらうお手伝いのおばさん。

この日、信州から旅館の看板名を描いてもらおうと一人の男がやってくるが、旅館名と無関係な一言をモリに書かれて、仕方なくすごすご帰る。近所にはマンションが建つ計画が進んでいる。誰かわからない人が混じっていても、全く気にしないモリの家では、なぜか静かなはずなのに騒がしい。

当のモリは庭に出て虫を眺めたり、石を眺めたりして過ごす。また彼を撮影しているカメラマンが助手を連れてやってくる。最初は戸惑う助手も、次の日もきても良いかと尋ねたりもする。

マンション建設に来ている現場監督なども訪ねてくるが、何故かここの魅力に溶け込んでしまったりする。文化勲章の贈呈の電話が来てもそんなものはいらないと断る。

妻秀子のくしゃみに金だらいが落ちてくるドリフギャグが出てきたり、現場監督がマンション建設を貶すとボソッとモリが突っ込んだり、いたるところに見せるユーモアもまたこの物語の魅力でもある。

痩せようとプールに行ったお手伝いのおばさんは、思わず大量の肉を買ってしまい、その処理のためにマンション建設現場の若い衆を集めたりする。ふとモリが外を見ると頭に電気のついた男がいて、宇宙へ一緒に行かないかと誘われる。それを断り戻ってみれば客は帰った後で、妻と碁石を使ったオセロをする。

夜もふけると、学校へいかないといけませんと妻に促されたモリは二階の部屋に行く。そこは彼のアトリエである。夜が明けるとまた表札が持っていかれていて悔しいと嘆くお手伝いさん。彼女をなだめる郵便配達。

やがてマンションか完成、やってきたカメラマンはその屋上からモリの家を見下ろす。いつもと同じような景色が見えてカメラはゆっくりと舞い上がって行ってエンディング。

なんとも言えない空気感にすっかりこの映画にはまってしまう。そんな素敵な魅力に溢れた作品でした。