くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「乱」(4Kリマスター版)「Life work of Akira Kurosawa 黒澤明のライフワーク」

「乱」

初公開以来の再見、初めて見た時は、ただ長いだけの印象だったが、今回見直して、恐ろしいほどの傑作であることがはっきりわかりました。まず、三時間近くあるのに全く退屈しない作劇のうまさ、そして役者を使い切る見事な演出力、さらに徹底的に様式美に拘りながらもその中に日本的な無情を描き切る絵作りのうまさ、当然ながら今や二度と作れない超大作の貫禄、これこそが世界に誇る黒澤時代劇の白眉の一本だと思いました。黒澤明の大ファンではありますが、そんな偏見をものともしない圧倒的な存在感に引き込まれてしまいました。素晴らしかった。監督は黒澤明

 

一文字秀虎らが狩をしている場面から映画は幕を開ける。そして、隣国の綾部、藤巻、秀虎の重臣たちや太郎、次郎、三郎の三人の息子を前に、自分の引退と家督を太郎に譲る宣言をして物語は幕を開ける。しかし、その場で父の言葉に異論を唱える丹後と三郎だが秀虎はその場で二人を追い出してしまう。三郎は綾部に請われて綾部の入婿へ、丹後は秀虎の行く末を見守るべく野に降る。

 

秀虎は太郎の城に住まいするが、太郎の妻楓は、秀虎を追い出そうと太郎を巧みに操る。太郎の城を追い出された秀虎は次郎の元に行くが、そこでも程よく断られる。仕方なく三郎が収めていた城に身を落ち着かせるが、楓の謀略で次郎と太郎がその城に襲いかかる。そのどさくさで太郎は次郎の腹心鉄に殺され、次郎は晴れて城主となる。そして今度は楓は次郎に言い寄ってくる。

 

楓は次郎の妻となり、次郎の正妻末を追い出そうとするが、楓は殺してほしいと次郎に言いよる。次郎はすっかり楓の色香に毒され、鉄に末を殺すように命じるが鉄は末を巧みに逃し、神社の狐の首を楓のところに届けて次郎を戒める。一方、秀虎は道化の狂阿弥、丹後と共に彷徨っていた。途中末の弟で、今は盲目になった鶴丸と出会い、一夜の宿を得る。末は次郎からの追っ手から逃れるべく鶴丸と共に小屋を出るが、鶴丸が小屋に忘れた笛を取りに行った侍女が戻らないので末が小屋に引き返す。

 

三郎は、秀虎を匿おうと次郎に交渉を持ちかけてくる。三郎と次郎が対峙するところへ、綾部、藤巻の軍が遠目に陣を張り見つめていた。次郎は楓の進言で三郎と戦をする手筈を整える。楓にとっては、かつての父の城が秀虎に攻め落とされ、父が殺されたことへの復讐しかなかった。

 

三郎は、狂阿弥が見失った秀虎を探しに腹心と本陣を離れるが、その隙を次郎の軍が襲いかかる。しかし、三朗の腹心の巧みな戦術で追い返された挙句、次郎の留守を狙って藤巻の軍が一文字の城へ襲いかかっていた。三郎は秀虎を見つけ、自分の馬に乗せて連れ帰ろうとするが、次郎が送り込んでいた鉄砲隊の一人に撃ち殺されてしまう。秀虎はその場でとうとう狂い死してしまう。一文字の城に次郎は戻るものの、すでに城は落とされ、楓の謀略は成功していた。楓の面前にやってきた鉄は次郎の静止も聞かず楓を切り殺してしまう。

 

鶴丸は戻らない末を待っていた。末は小屋に戻った際斬り殺されていた。鶴丸が末にお守りとして託された阿弥陀如来を描いた掛け軸を落としてしまう。全て虚しさの中に物語は戦乱の世に戻っていって映画は終わる。

 

まさに諸行無常の世界観が画面の隅々まで描かれた傑作で、登場人物それぞれも生き生きと個性を発揮して物語を牽引していきます。当然ながら大軍馬のシーンは圧巻で、おそらく二度と作れない映像を生み出しているし、「リア王」を元にした重厚なストーリーに日本的な色合いを交えた展開は圧倒されます。黒澤明はこの後小品を作りますが、やはりこの映画が彼の集大成だったのだと思います。

 

「Life work of Akira Kurosawa 黒澤明のライフワーク」

「乱」のメイキング映像を元に、撮影班に参加した河村光彦が撮った150時間に及ぶ映像素材をデジタル再編集したもので、「乱」を見た後に見ると、なかなかのリアリティと、黒澤明の人物像を知る上でも非常に面白かった。監督は河村光彦。