くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サッドティー」

「サッドティー

今泉ワールド満載のとっても楽しい作品でした。人を好きにあるということを徹底的に淡々と描いていくリズム感が素敵で、さりげない展開が続くだけなのですが、いつの間にかどんどん引き込まれてしまいます。この監督の作品に傑作とか秀作とか名作とかいう言葉は全く当てはまらない。その空気感が最高なのです。監督は今泉力哉

 

画面が始まると、ある公園、一人の青年が競歩の練習を始める。カットが変わると、あるカフェ、バイトの棚子のアップ、そしてが映画始まる。暇で誰も客が来ない。店長のボンさんに「好きです」と告白する棚子。ボンさんは実は結婚していて、家に帰って妻に告白されたというと、何故か妻は怒る。それがよくわからず、翌日、棚子はボンさんに退職しますと封書を渡すが、どうやらラブレターらしく。別の日、冒頭と同じカットから画面が始まり、ボンさんの勧めで早めに帰ることにした棚子は客で映画の脚本を書いている柏木のところへ行く。

 

場面が変わる。柏木には緑と夕子という二人の彼女がいて、この日緑の部屋で一夜を明かして夕子の部屋に帰ってくる。夕子はネイルサロンに勤めていて、店長の夏はまもなく結婚を控えている。夏のフィアンセは夏に暴力を振るうようだが夏はそれは好きだという証だと受け入れている。夏が友達と飲みにいくというと、それならこの部屋に呼べと彼氏は命令口調。夏は友達の園子、緑を呼ぶ。

 

ここに早稲田という青年が古着屋で女物の服を探している。気に入ったのが見つかり店員がそれを自ら着てくれて、こんな感じだという。その店員は掛け持ちバイトをしている棚子だった。早稲田は彼女である園子の誕生日プレゼントに服を買ったのだが、園子に、古着屋の店員に一目惚れしたから別れようと言い出す。園子は実は柏木のことが好きだったが、彼女がいるからと身を引いた。

 

園子の友人夏の結婚祝いのビデオレターを柏木に編集してもらいに行った早稲田は、二股で平然と女性と付き合う柏木を非難する。ある日、柏木の親友の朝日が部屋に泊めてほしいとやってくる。朝日は十年以上も一人のアイドルのことを思っていて、彼女が最後に、アイドルを辞める決意をした浜辺に花束を届けるのを自分のイベントにしていたのだ。しかし、朝日が来た夜、柏木は緑の部屋にいた。仕方なく夕子に朝日を迎えにやらせ、夕子の部屋に泊まらせる。夕子と朝日は軽く飲みながら夜遅くまで楽しく過ごす。

 

翌朝、夕子の部屋に帰ってきた柏木だが、朝日の姿がないと夕子が言う。柏木は近くの公園にいるからと夕子を連れて行くと、なんと

競歩の練習をしていた。そして朝日は、目的の海岸まで競歩で行くからと、夕子の部屋を後にする。柏木は、二股していることの疑問を感じ、緑と別れる決心をして、緑に部屋に行くが、そこに緑の同級生の町田という男性がいた。柏木は別れようと言うが、緑は健気に返答するので結局別れられず夕子の部屋に帰ってくる。しかしそんな柏木に夕子は別れようという。

 

冒頭のカフェ、棚子は柏木に、今日、純粋な愛のシーンを観れるからと朝日がいく海岸へ一緒に行こうと誘う。一方ネイルサロンでは、夕子が柏木の友人が海岸で、十年間思い続けている元アイドルと会いに行くのだという。それを聞いた夏は、それは朝日という男性ではないかと聞く。実は夏は十年前にアイドルをしていて、それ以来自分のファンが一人いて、ある海岸で会うことになっているのだという。

 

こうして、棚子の車に柏木と早稲田が乗り海岸へ。夕子の車に夏と園子が乗って海岸へ向かう。海岸に着いて、早稲田は棚子が古着屋の店員だと気づき告白するが、振られてしまう。柏木は車の中で寝たまま。落ち込んで車の外に出た早稲田の前に別の車で来た園子がやってくる。

 

まもなくして花束を持って競歩でやってくる朝日。夕子と夏、園子と早稲田、棚子が見つめる中、朝日は「長い間あなた=アイドル、が好きでしたが、別に好きな人ができたのでこれは最後です」と言って花束を投げる。実は夏は十年以上も自分を慕ってくれた朝日に丁寧な言葉と感謝の気持ちを届けようと手紙まで準備していたのだ。夏は朝日の投げた花束を拾い、朝日に殴りかかる。棚子は、眠っている柏木を起こし、「好きになるってどういうこと何だろう」と離れていく。緑は寝ている柏木に「別れ話の後色々考えたので、また会って話したい」と電話をする。こうして映画は終わっていく。

 

背後に流れる音楽を効果的に消したり入れたりしながら、映像も含めてリズムを作りながら淡々と描いていく、男と女の好きというテーマ。本当に今泉力哉監督作品は独特の色があってとっても素敵ですね。京都の出町座まで見に行った甲斐がありました。