くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハピネス」「家出レスラー」

「ハピネス」

原作の嶽本野ばらのファンタジックで浮世離れした空気感が今一つ物足りなく、時折不可思議な面白さが出るのですが、脇役の配置ミスか、すぐにリアルな現実に引き戻されて平凡なお涙頂戴映画になる瞬間がちょっと目立ちすぎたのが寂しかった。橋本愛のキャラクターが今ひとつ生きていないし、みんな芸達者なのだが、方向性が違う気がしました。監督は篠原哲雄

 

ロリータファッションに身を包んだ少女由茉の横顔のアップから映画は幕を開ける。「あと一週間で私は死んでしまいます」と言う言葉に向かいに座っていた彼氏の雪夫が唖然とする。あと一週間しか命がないので、ロリータさんになることを決意したと言う由茉のあどけない仕草が、雪夫をと惑わせながらも次第に会話が繰り返されていく。心臓に欠陥があり、今になって急速に悪化し、手術も不可能で、あと一週間から10日の命だと宣言されたと言う。

 

由茉は完璧なロリータさんになり、残された人生を精一杯生きようとする。実は雪夫の姉月子もロリータさんだった。由茉はカレーが大好きで、雪夫と出会った時もカレー、何かあり度にカレーを食べていた。雪夫は何とか手術の方法はないのかなどと調べるも、人が死ぬのは宝くじで3千円が当たるのと同程度の確率なのだと笑う由茉だった。

 

雪夫の両親は海外に行っていて、雪夫は一人で生活していた。そんな雪夫の家に由茉はお泊まりに行きたいと言い、由茉の両親はあっさりと承諾する。そんな姿にかえって切なさを感じる雪夫だった。由茉がお泊まりにくる日、家を出て生活している雪夫の姉月子が戻ってくるが、由茉と雪夫のことを知り黙って出ていく。

 

由茉は最後の夢である、ロリータファッションの聖地、大阪にあるブランド店本店に行き、日本一贅沢なカレーを食べたいと雪夫を誘う。明日は死んでしまうのではないかと雪夫は苦しくて一度は断るが、二人が出会った奇跡を大切にしたく、由茉と大阪に行く。そして憧れのブランドの本店に行き、帰りに日本一のカレーを食べ、由茉はもう一晩雪夫の家にお泊まりしたいと両親に電話をする。雪夫の家に向かうバスの中で由茉は苦しむが、しばらくして落ち着き、雪夫の家のベッドに転がり込んで寝てしまう。雪夫は由茉を抱きしめ、夜が明けると由茉は冷たくなっていた。

 

由茉の両親は由茉が生前言っていた、ピンクの派手な骨壷を用意し、ピンクと赤の花で彩った祭壇を組み葬儀を終える。何か形見が欲しければと言う由茉の両親の言葉に、雪夫はカレーの鍋が欲しいと言う。自宅で一人カレーを食べる雪夫の姿で映画は幕を閉じる。

 

とにかく橋本愛以外の脇役があまり生きていなくて、ある種のファンタジックな色合いの中に、切ない悲恋ドラマを盛り込んだと言う作りが今ひとつわくわく感じられなかった。嶽本野ばら原作の映画「下妻物語」と言う傑作があるゆえつい比べてしまうが、ちょっと物足りなかった感が強い映画でした。

 

「家出レスラー」

人気女子プロレスラー岩谷麻優の半生を描いたドラマ。前半は、素人脚本、素人演技、素人演出で、帰りたくなるような稚拙な映画だったが、中盤を超えて終盤に入るといつの間にか画面をしっかり見ている自分がいました。決して出来の良い映画ではなく、どちらかと言うと出来の悪い作品ですが、不思議な魅力のある映画でした。監督はヨリコジュン。

 

2007年、主人公マユは高校の帰り痴漢に襲われそうになり泥だらけで家に帰るが、母はまともにマユのことに目を向けてくれず、以来彼女は引きこもってしまう。そして引きこもりから2年が経った頃、兄がプロレスの試合を見ていて、それを見たマユが興味を持ったのを見てチケットを手に入れてくれる。そして兄と二人で出かけたプロレスの試合でマユはすっかりプロレスにハマってしまう。

 

たまたま、女子プロレスもあるというのをネットで知ったマユは6000円のお金だけ持って家を飛び出す。そして駆け込んだのはスターダムという、新䂓女子プロ団体のオーディションだった。体力もなく、運動経験もないマユは最初から置いていかれるが、最後の面接で、ひたすら自分を訴えたのが功を奏して、スターダム第1期生として入団することになる。

 

最初は、ろくに稽古もせず、ひたすら負けるばかりで、それが彼女の魅力のようになっていくが、同僚が試合中に傷害事件を起こし、団体が危機に陥るに際し、マユは一念発起し、チャンピオンを目指すべく猛特訓を始める。そして去った仲間も帰ってきて、スターダムは一気に人気が回復、一部のメンバーはアメリカの団体から声がかかる。マユにも声がかかるが彼女はスターダムに残り、やがてアイコン的なレスラーになっていって、やがて地元山口に戻ってきて母に再会、映画は終わる。

 

同僚のレスラーが誰が誰か全く区別がつかない上に、それぞれの人間ドラマは全く描かれないというか描けていない演出は実に素人っぽいが、軽トラに跳ね飛ばされる冒頭シーンとラストシーンの繰り返しや、マユが怪我をして不戦勝になったレスラーがマユのグッズをリング上で宣伝する下りなど胸が暖かくなります。もうちょっと思い切った映画にしても良いかったかもしれませんが、まあ、私なりに見て損のないレベルでした。