くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バジーノイズ」「無名」

「バジーノイズ」

ベタな話をベタな演出で描いた普通の映画で、心のうねりが全く見えてこないのは役者の力不足か演出力のなさか、なんとも伝わってこない映画でした。監督は風間太樹。

 

スマフォで音を取る主人公清澄の姿から映画は幕を開ける。自宅のアパートの一室で作曲をし、昼は管理人のバイトをしているが、夜中に曲を流すので苦情が来ていて、次やったら出て行ってもらうと言われている。この日、上の階に住む潮が廊下の電気を変えてほしいと管理人の所にやってくる。そして自分の上の階に住む人を教えてもらおうとするが清澄は知らないふりをする。

 

後日、インタホンがなり、潮が彼氏に振られたからと清澄の部屋にやって来て曲を流してほしいと言うが清澄は断る。しかし、結局清澄は音楽を鳴らし始めると、ベランダを壊して潮が入ってくる。その後清澄はアパートを追い出されネットカフェに移るが、潮が自分の部屋に住んでいいと清澄を誘い、二人は親しくなる。清澄が河原で演奏するのを潮が動画に撮ってアップしたらいきなり人気になる。潮は知り合いで音楽プロモーションの会社にいる航太郎を紹介するが清澄は乗ってこなかった。

 

そんな清澄は、かつて一緒にバンドを組んでいた陸が参加しているバンドを見に行くが陸は楽しそうではなかった。陸は清澄の動画から清澄の河原にやってきて、今のバンドに疑問を感じていた陸がバンドを辞め清澄と組むことにする。そしてAZURというバンドを組む。航太郎は今の事務所で次の仕事を進めようとしていたが、社長の沖が清澄に興味をもちはじめる。清澄はAZURの楽曲作成のため陸の部屋に泊まる。楽しそうに陸らとライブをする清澄を見ていた潮は自分の存在はもう不要と考え部屋を出て行ってしまう。

 

突然潮が姿を消したので清澄は落胆、そんな時、沖は清澄を利用することを考え、自社のスタジオに隔離して作曲に専念させることにすり。そして次々と作曲を進める清澄だが、本人は全く楽しくなかった。航太郎は会社を辞め、陸と一緒に潮を探し出して三人で清澄を助け出しに行く。そして沖を説得して清澄を連れ出し、陸、清澄らがライブしている場面で映画は終わる。

 

心の変化が大きくうねったストーリーなのに全くそれが見えてこないのは明らかに演技と演出の力不足でしょうか。音楽がとってもいいにで見ていられるけれど、あとはひたすら淡々と話が進むだけのなんの取り柄もない映画だった。

 

「無名」

時間と空間を前後させたり同じシーンを繰り返したりしながらまるでジグソーパズルのように穴を埋めていく作りは面白いのだが、題名の通り、それぞれの登場人物に名前を呼びかけるセリフがなく、顔だけで物語を追っていくのはなかなか大変だった。これをクオリティの高さだと言いたいが、整理するシチュエーションも作るべきではないかと思うのも正直なところでした。監督はチェン・アル。

 

ベンチに座る一人の男の横からのショットから映画は幕を開ける。このシーンはラストで再度登場するから、いわゆる戦後すぐということらしい。中国汪兆銘政権のスパイであるフーは中国国民党に寝返るというジャンの取調べをし、中国共産党の幹部の名簿を手に入れる。フーは仲間のイエと日中戦争を勝利に導くべく、諜報活動を続けていた。

 

フーは日本軍の上海駐在のトップ渡部にイエを信頼させて近づける。フーはその上司タンらと日本料理店で戦況について話し合っていた。時は1941年。そして映画は1937年に遡り、中国国民党中国共産党、そして日本軍の諜報戦が繰り返される様を描いていく。時に終戦後のカットを挿入したり、日本軍の中国での非道を描いたり、さらに日本軍と行動を共にしていた華族の男が殺されるエピソードを挿入したりと時間と空間を前後させながら、やがて真珠湾攻撃からドイツのソ連侵攻、そして日本軍の敗戦へと流れていく。その間、イエの婚約者ファンがタンによって共産党員だという理由で暴行され殺される事件や、フーが国民党の女スパイを助けたことから日本人要人リストを手に入れたりするエピソード、イエがタンを銃殺するエピソードが繰り返されていく。

 

終戦ののち、イエと渡部は一旦収監されるが渡部は国民党に軍事訓練を依頼され、それを断るもイエに殺されるくだりなどが描かれていく。実はフーが段取りをしてイエを渡部に近づけたというシーン、戦後の香港でイエが女スパイだったチェンにコーヒーを奢る場面などが挿入され、フーが雑踏に消える場面で映画は終わっていく。

 

とまあ、さまざまなシーンが短いカットと前後させる編集で描かれていく。凝った作りなのはわかるのですが、ストーリーテリングはもうちょっとちゃんとしてもらえたら、もっとわかりやすかったかもしれません。