くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「青春18×2 君へと続く道」「鬼平犯科帳 決闘」

青春18×2 君へと続く道」

一級品の出来栄えではないけれど、清原果耶の実力を目の当たりにするキュンキュンのラブストーリーでした。岩井俊二の「LOVE  LETTER」をキーワードにしているだけあって、あちこちにそれらしいシーンがあるけれど、シンプルで、やや懐かしい物語ながら素直に涙ぐんでしまいました。良かったなあ。監督は藤井道人

 

会社の役員会議でしょうか、主人公ジミーが会社から追い出されるくだりから映画は幕を開ける。どうやらジミーはゲームソフトの開発をしてきて成功したらしい。何もかも失ったジミーは18年前もらった一通の手紙を見て日本へ行くことにする。そして映画は18年前、ジミーが大学受験の頃に戻る。

 

台南に暮らすジミーは大学受験を終え、徹夜でゲームをしていてバイト先のカラオケ店にいくのが遅れてしまう。店長らに怒られたものの、アットホームなカラオケ店だった。流行っていないカラオケ店なので庭でバスケットで遊んでいたジミーは、一人の日本人の女性が訪ねてきたのに遭遇する。訪ねてきたのは日本から一人旅できたアミだった。アミは旅先で財布を無くしてしまい、バイトさせて欲しいと頼んでくる。ここの店長は神戸からここへ移ってきた人で日本語を話せるのだった。

 

アミがバイトを始めると、彼女目当てに客が押し寄せ、カラオケ店は大繁盛し始める。彼女の歓迎会が催され、アミは旅の目的として、自分にしか描けない絵を描くためだと旅のスケッチを見せる。それを見たジミーはカラオケ店の壁のダサい絵を描き直してもらおうと提案する。やがてアミは壁の絵を描き始める。そんなアミにジミーは次第に惹かれ始める。歓迎会の帰り、ジミーは自分の大好きな夜景の見える展望台へバイクに二人乗りで連れていく。

 

ジミーはアミに交際を申し込むべく「LOVE LETTER」の映画に誘うが、映画に感動しすぎてタイミングを逃してしまう。現代のジミーはアミの故郷福島県只見を目指して列車に乗る。そこで幸次という若者と知り合い、途中下車して、雪景色の中に「LOVE LETTER」を思い出し映画について聞かせる。

 

18年前のある日、アミはそろそろ帰国すると言い出す。ジミーは落ち込んでしまうが、父の励ましもあり、気を取り直し、アミが見たがっていたランタン祭りに誘い出す。そしてそこで手を握り、アミは抱擁を返す。現代のジミーは列車の終点の駅について、深夜ネットカフェに立ち寄るが、そこで由紀子と出会う。そして、たまたま見たポスターからこの地にもあるランタン祭りに行くことにする。18年前のアミと出かけたランタン祭りの夜と交錯する。

 

その後ジミーは一路只見へ向かう。そして地元の人の案内でアミの実家へやってきたジミーはアミの母裕子に会う。そこで、アミが残した台湾でのスケッチブックを手渡される。アミは心臓病で余命いくばくもない中で台湾へ旅行に来ていたのだ。そして次はブラジルへという中亡くなった。そして、18年前にアミが帰国してからが、スケッチブックを見直すジミーの姿に被り、二人の物語としてフラッシュバックと共に描かれていく。その後、ジミーは日本を後にし、新たな旅立ちを決意して映画は終わっていく。

 

ベタなストーリーと言えばそれまでだが、岩井俊二の「LOVE LETTER」へのオマージュ満載で描かれるオーソドックスなラブストーリーは、真っ直ぐに心に染み込んでくる感動を生んでくれます。シンプルこそベストという典型的な映画でとっても良かった。

 

鬼平犯科帳 決闘」

古き良き時代劇を堪能させてくれる面白さだった。池波正太郎の原作がいいのだろうが、芸達者な役者陣を揃え、オーソドックスな台詞回しと間合い、そして勧善懲悪な展開の中に、人間味あふれるドラマの機微が散りばめられた脚本がとっても素晴らしく、特に前半は秀逸。後半から終盤、若干もたつくのが残念ですが、それぞれのキャラクターも立っているし、本当に楽しめました。監督は山下智彦

 

若き日の長谷川平蔵は本庄鬼と呼ばれるほど無頼の徒だった。彼があるヤクザもののところに殴り込みに行くところからジャンプカットして現在の鬼平となった平蔵の姿で火付盗賊改で乗り込むところへ移って映画は幕を開ける。夜、闇夜を走る一人働の九平はこの日も一軒の蔵に忍び込み小判を手にしていた。そこへ、網切りの甚五郎の一味が押し入り、主人ら家族を皆殺しにして蔵に押し入ってくる。そしてその様子を九平は目撃する。

 

長谷川平蔵の邸宅にかつての知り合いの娘で一時盗人をしていたおまさがやってきて犬=密偵にして欲しいという。しかし平蔵は足を洗ったおまさを犬にすることは承知しなかった。たまたま平蔵は勧められて芋酒を振る舞う店に立ち寄った際、一人の遊女おりんと知り合う。さらに芋酒の店の主人は九平だったが、平蔵は知る由もなかった。九平は密かに帰る平蔵をつけるが、平蔵に気づかれたので身を隠してしまう。

 

平蔵は、九平が先日の押し入り強盗の何かを知っていると踏んで探し始めるが、おまさが九平のことを探す代わりに犬にしてもらうことを提案する。実はおまさは九平のことを知っていた。九平は押し入り強盗を目撃した際、引き込み女を目撃、それはおりんだった。さらに主人を殺した甚五郎はその血で鬼平の文字を床に刻んでいた。おまさと九平は甚五郎のアジトを突き止めるが逆に捕まってしまう。二人は窮地を逃れるため仲間になりたいと申し出る。おまさはそこでおりんと言葉を交わすが、おりんが平蔵への憎しみはすでにないと告白したのを甚五郎に聞かれ殺されてしまう。甚五郎は執拗に平蔵を憎んでいた。

 

甚五郎は、次に押し入る店を段取りし始め、おまさは平蔵に連絡するべく九平に手紙を託す。そしておまさが引き込み女として準備するが、情報を聞いた平蔵ら火付盗賊改が甚五郎らを取り囲む。甚五郎はおまさや九平が裏切り者と知ったが、その場は逃げてしまい平蔵は甚五郎を取り逃す。

 

おまさは甚五郎の次のアジトを探すために自ら囮になって捕まり、九平に平蔵にアジトを連絡させる。平蔵はおまさを助けるべく単身乗り込みおまさを助けるがまたも甚五郎は逃げてしまう。甚五郎は平蔵が若き日に惚れていたおりくに手傷を負わせた男の息子で、若き日に平蔵はおりくの敵討ちにその男を殺した。これが冒頭の殴り込みシーンである。

 

しばらくして、平蔵のところに、旧知の京極備前守から使者が来て、料亭での会食に誘われる。平蔵が家を空けると知った妻の久栄は、おまさを自宅に呼んで一緒に夕食を食べようということにする。ところが、久栄から平蔵が行った料亭の名前を聞いたおまさは、甚五郎のアジトで見た絵図面にその料亭の名があったことを思い出す。その頃平蔵は招かれた料亭で甚五郎と対峙していた。甚五郎の罠だったのだ。

 

平蔵は刀を預け座敷に入った上、弓に狙われて窮地に立つ。そして必死の応戦をしているところへなんとか火付盗賊改の面々が駆けつける。竹藪に逃げた平蔵を追って甚五郎が襲いかかるが、おまさの機転もあり、平蔵は甚五郎を倒す。晴れておまさは平蔵に密偵となることが許され映画は終わっていく。

 

往時の時代劇ほどのスケールの大きさこそ見られないし、久世龍がいた頃の殺陣アクションの華麗さこそないものの、しっかりとした間合いと映像で見せる骨太のオーソドックスな時代劇の風格が十分出ていた作品でした。