くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「瞼の転校生」

「瞼の転校生」

何気ない話なのに、とってもテンポが良くて、しかも登場人物みんな気持ちがいいほどに素直で良い人。目の演技が、子役に至るまで素晴らしくて、決してシーンごとにだれることがない。友達に勧められなければ見にいっていない一本だったので、掘り出し物に出会った感じで、とっても良いひと時を過ごせました。監督は藤田直哉

 

一ヶ月ごとに転校を繰り返す悠貴は、この日やってきた街で、いつものように転入の手続きにやってくる所から映画は幕を開ける。悠貴の父は大衆演劇の座長で、一ヶ月ごとに次の公演へ移動するのでその度に悠貴は転校していて友達もいなかった。舞台の稽古があるのでいつも早退する悠貴に担任の先生は、不登校のクラスメート建へのこと付けを頼む。

 

帰り道という理由だけで頼まれた悠貴は建の家で連絡帳を手渡す。悠貴はいつものように舞台に立つが、悠貴の劇団の昔からのご贔屓の婦人が座長に、自分の娘浅香が地下アイドルをやっているのだが見にいくのは憚られるので偵察して欲しいと頼む。座長は悠貴に、そのアイドルの舞台を見てくるように指示する。

 

悠貴が浅香の所属するアイドルグループパティファイブのステージを見にいくと、なんと建も来ていた。建は浅香の大ファンだった。これがきっかけで悠貴は建と急速に親しくなる。その様子が気になった建の元カノの茉耶は、強引に悠貴について行き建と再会する。そして三人は事あるごとに過ごすようになり、悠貴が大衆演劇の役者だと知った茉耶は舞台を見にくるようになる。そんな姿に座長は、このまま悠貴を役者として育てることに疑問を抱き始める。しかし、悠貴はこの劇団が家族のようで大好きだった。まもなくして、浅香もこの劇団でしばらく暮らすようになる。

 

一ヶ月が経ち、劇団もこの地での最後の舞台が迫ってきた。劇団に浅香がいることを知らない建を誘い出すべく、茉耶は浅香を連れて建の家に行き、悠貴の最後の舞台を見にいこいと誘う。そしてその客席には浅香の母の姿もあった。やがて開演、悠貴の急な申し出で、両親を知らない建のために「瞼の母」を最後の演目にしていた。そして、お芝居の後の舞踏ショーでは、パティファイブの曲に合わせて浅香と悠貴が踊る。

 

悠貴の転校の日、茉耶も早退して、建と一緒に搬出を手伝う。最後に浅香は、もうしばらく劇団にいたいと座長に強引に迫る。悠貴は、きっとまた戻ってくるからと建と茉耶に約束し車に乗って去っていく。こうして映画は終わる。

 

悠貴を演じた松藤史恩他、役者陣の目の演技が実にいい。おそらく演出の指示が徹底されているのだろうが、そんな些細な気配りが映画をとっても引き締まったものにし、軽快な流れで展開するストーリーと面倒な人物描写を廃して素直な登場人物として描いたキャラクター作りも相まってとっても良い映画に仕上がっていました。小品ながら、見逃したくない一本でした。