くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブルー きみは大丈夫」「違国日記」「ディア・ファミリー」

「ブルー きみは大丈夫」

軽いタッチのファンタジーだった。特に綺麗な映像があるわけでもなく、CGで作られた愛くるしいキャラクターと一人の孤独な少女の物語で、それ以上でもそれ以下でもないシンプルな感動ドラマでした。監督はジョン・クラシンスキー。

 

父の心臓の手術のためにニューヨークの祖母の家にやってきた少女ビーは、ある夜、不思議な妖精のような少女を見かけ、後をついていくと、祖母のアパートの最上階に住むカル、ブロッサム、ブルーと出会う。子供の頃には見えていたIFと呼ばれる想像の生き物達はやがて相棒達が大人になると見えなくなり、IFが消える運命にあった。そんなIFを救おうとカル達が奮闘していた。

 

IFの姿が見えるビーはカルと共に、今は廃園となった遊園地に集うIF達の就職活動を開始。一匹また一匹とかつての思い出を思い出させてそれぞれの相棒の元に返していく。そんな中に、祖母の相棒のIFがブロッサムだとわかる。そしてビーの父の手術も終わり祖母の家をさる事になるが、ビーが幼い頃に描いた絵の中に、カルの元の姿ピエロのIFを発見する。

 

ビーがアパートの最上階に行くと、そこはすでに空室で誰もいなかった。しかし、目を瞑り過去を思い出せば時が戻ると言うIFのリーダールイスの言葉で目を瞑ると、出会ったIF達がカルの目の前に再び現れ、ビーはカルを抱きしめる。それまでに登場した様々なIFがカルの奮闘で次々と相棒の元に帰っていく映像にエンドタイトルがかぶる。

 

本当にたわいないファンタジーで、普通の映画と言えばそれまでですが、肩の凝らないほのぼのした映画でした。

 

「違国日記」

淡々とした日常を切り取っただけのような物語なのですが、監督瀬田なつきの独特の空気感が全編を彩って、どこか微笑ましくも繊細なストーリーにいつの間にか引き込まれてしまう映画でした。槙生を演じた新垣結衣と朝を演じた早瀬憩のコンビが心地よいバランスで映し出していく女性の心もちょっと楽しい映画でした。

 

卒業を目前にした中学生朝の姿から映画は幕を開ける。道路の向こうで母が手を振り、次の瞬間トラックが両親の車に突っ込んで朝の両親が亡くなってしまう。人気の小説家で一人暮らしをする高代槙生のところに姉が亡くなった連絡が入る。槙生は姉実里と仲が悪かった。朝の両親の葬儀の場、親戚は朝のこれからの養育などを噂話していた。そんなひそひそ話を聞いていた槙生は勢いで朝を引き取ると宣言してしまう。そしてそのまま槙生は朝を連れ帰る。

 

整理が苦手で仕事だけをしている槙生の部屋に踏み込んだ朝は、時々母の幻影を見ながらも生活を始める。しかし、卒業式で両親の死を隠すつもりが友達のえみりが口を滑らせたためにクラスメートに広がってしまい、それを嫌った朝は一人で帰ってくる。しかし、自然と足は自分の家に向かってしまう。

 

槙生の家に戻ってきた朝を槙生が家の前で待っていた。複雑な思いで朝を引き取ったものの、元彼で色々な手続きに詳しい笠町や親友の奈々らに助けられながら槙生は朝と生活を進める。朝は高校へ入学し、軽音学部に入り、中学からの親友えみりが性同一性障害だと知らされたりと、さまざまな出来事に遭遇していく。槙生は朝と接するうちにどこか自分の生活が微妙に変化していくのを感じるものの、実里を嫌っている気持ちに変化は訪れず、微妙なままにお話が先へ進んでいく。

 

そして、朝は軽音学部でボーカルを担当し、槙生は母に会いに行き、実里が残した日記を朝に手渡す。そして槙生と朝は実里が亡くなった場所に花をたむけて映画は終わる。

 

さりげない展開で淡々と進むのだが、ちょっとした女子トークや槙生や奈々、朝との会話、朝とクラスメートらとの会話がどこか心地よい空気を生み出していく。抜きん出たクオリティとか劇的な展開もないけれど、肩肘張らない日常の一ページを感じさせてくれる心地よい映画だった。

 

「ディア・ファミリー」

世界で17万人を救ったと言われるIABPバルーンカテーテルの誕生にまつわる実話を元にした作品で、映画としてはテレビクオリティ程度だったけれど、こう言う物語があったということを知る上では見逃してはいけない作品という感じの一本でした。素直にラストは涙ぐんでしまいました。監督は月川翔

 

文化勲章の授与式でしょうか、その控え室でIABPバルーンカテーテルを完成させた坪井宣政と妻の陽子が記者のインタビューを受けている場面から映画は幕を開ける。開発の理由を聞かれ言葉を失う坪井の姿から物語は1970年代へ遡る。町工場の経営者宣政はこの日アフリカに持参した髪留めの大量販売に成功して戻ってきた。

 

幼い次女の佳美は生まれながら心臓に欠陥があり、あと十年生きられたら良しという余命宣告を受ける。父の宣政は、あちこちの有名病院を訪ね周りアメリカにまで行って治療できないか奔走するもどこも断られてしまう。宣政と陽子はそれならばと人工心臓を作ることを決意する。そして、医療機関に熱意で頼み込み、人工心臓の開発を進め数年が経ってしまう。ところが、アメリカで開発された人工心臓で大きな問題が起こり、医療機関でもこれ以上宣政の研究を続けられないと主任教授石黒に言い渡されてしまう。しかも、佳美は心臓疾患のせいで他の臓器も弱っていて、万が一人工心臓が出来ても救うことはできないと言われてしまう。

 

八億近い費用を費やしたものの、足元を掬われた思いの宣政はすっかり落胆するが、佳美は、自分の事はいいから先に進んで欲しいと言う。たまたま、人工心臓の研究を進めていた際知り合った医師から海外製のバルーンカテーテルの事故が相次いでいると聞いた宣政は、日本人の体型に合ったバルーンカテーテルを開発することを決意し、人工心臓研究で身につけた知識を駆使してバルーンカテーテルを完成させる。しかし、石黒教授はそれを使うことを躊躇する。ところが、かつての研究仲間の医師が、自身の患者に使用してその有効性を実証、やがて石黒教授にも受け入れられ、宣政の作ったバルーンカテーテルは広まる。冒頭シーン、会場へ向かう宣政夫婦に、冒頭の記者が、自身もバルーンカテーテルで助かったと言うことを告げて映画は終わる。

 

なんのことはない映画ですが、映画を見ていなければこういう出来事を知ることはなかったかと思うと、物語の内容も相待って涙が止まりませんでした。見てよかったです。