![]() | キングダム・オブ・ヘブン 公式完全ガイド 三沢 洋 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
アカデミー賞に輝いた「グラディエイター」に続いてリドリー・スコット監督が描いた歴史絵巻は11世紀の十字軍の物語。
主演は「ロード・オブ・ザ・リング」で人気爆発したオーランドブルーム。
まず不安はオーランドブルームだった。「トロイ」ではやや頼りない王子を演じていたが、いかんせん、彼は歴史大作の役柄を演じるにはスケールが小さいのである。今回の作品もCGを多用した超大作、それにふさわしいスケールが必要なのだ。
しかし、そんな不安もリドリースコットの映像美が十分カバーしていて、最後までしっかり見せてくれました。
なんといっても圧巻はクライマックスの戦闘シーン、大きなスクリーンを最大限に生かした騎馬軍団の疾走、飛びかう弓矢、無数の投石、それぞれがまさに芸術的に様式化されて描かれるのである。
上空から俯瞰で撮った軍団の威容はすばらしい。遠くまで延々と伸びる大軍団(もちろんCG)はもちろん、手前には円形に疾走する一段もあって、その対比がすばらしい効果を読んでいます。
屍の山に群がるようにカラスが上空を舞っている映像も今までの合戦映画にはなかった映像日です。このカラスの群れどこかヒッチコック監督の「鳥」を思わせるほどに大群衆なのだからなおさら興味をそそられます。
屋内シーンなどには煙を光に反射させるなどした技巧的なシーンも多々挿入し、単調な映像を劇的に演出しています。
リドリー・スコット監督の演出スタイルは抗した光を有効に利用したものが多いですね。
「エイリアン」でも上記に煙るノストロモ号船内を描いているし「1492コロンブス」でも陽光を逆光にしてコロンブスが建つシーンが用いられています。
ただ、今回の「キングダム・オブ・ヘブン」ではそのスケールが思い切り拡大されているのです。
特に戦闘シーンに効果的に採用されているのは前述のとおりです。
砂煙が馬の足元をさえぎり、覇者を隠し,剣を光らせる。一方で独特の馬の軍団の撮影方法を採用する。
とはいえ、この馬の大軍団の撮影手法、よく見ると黒澤明監督の「影武者」や「乱」などを思い起こすとも言えなくもありません。実際、リドリー・スコット監督は黒澤映画の大ファンですから。
そうした映像美の世界の卓抜さはすばらしいのですが、ストーリーテリングの点で、ちょっと厳しいでしょうか?
今回の物語は十字軍の物語。その歴史背景は100年ほどの期間にわたる上にさまざまな形の十字軍が存在するために、どの部分を扱ったものかわかりづらい。
パンフレットを読んだり、後で思い起こしたりするとなるほどと思いますが、まったく予備知識なしで見るとつらいですね。この点が今回の作品の難点でしょうか。
長短あるにせよ、一見の価値のある秀作であることは間違いないし、リドリー・スコット監督ファンであれば必見の作品でしょうね