くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「インサイドマン」

インサイドマン

スパイク・リー監督の久しぶりの作品である。私は特にスパイク・リー監督のファンというわけではないが、あの独特の映像感覚は人によれば結構癖になる。

スクリーンがラップになって踊り始める。そんな感覚にとらわれるような個性豊かな映像世界。その映像世界の中で銀行強盗というサスペンスと、その展開の中で様々に浮き上がってくる謎解きの妙味、そして犯人の仕掛けたトラップの数々が交錯して、一種独特の空間に入り込んだかのように錯覚してしまうのだ。

まず、軽快なリズムをバックにクレジットが流れ、カメラは地面すれすれから主人公が歩く足下を静止で捕らえる。そしてその足下が動き始めると共にカメラは軽快にラップ音楽に乗せて踊り始めるのだ。

あとはもう、ストーリーを見ているのか、音楽に踊らされているのかわからないテンポで物語の展開を追いかけている。

銀行強盗に入る冒頭シーンから、スピーディーに本編にはいると、次の瞬間はデンゼル・ワシントンの登場。そして犯人たちの行動が謎だらけのままに進んでいくのであるが、このあたりはほんのわずかに警察側との心理戦も混じっている。

警察側の所轄の担当がウィリエム・デフォーなんて個性の固まりが演じているところもみそ。
さらに、なんとナチスに協力して大銀行を設立したという企業家にあのクリストファー・プラマーを起用するなんて遊びが満載である。なんせ、「サウンド・オブ・ミュージック」ではヒトラーに逆らう将校を演じているのだから、もう知ってる人にはたまらない。

ジョディ・フォスターの登場も本当に素っ気なく、さらりとでてきて、犯人と交渉するかと思えばあっさりと締めくくってきたりして、それでいて重要な謎を私たちに見せてくれたりと、本当に軽く演じているのである。

こんな風に銀行強盗犯の本当の目的などを謎解きする物語で、警察側と犯人との駆け引きがスリリングに展開するかと期待してみていると拍子抜けするのかもしれないが、そこはスパイク・リー監督、クライマックスにデンゼル・ワシントンをまるで台車に乗せるように動かしてみたり、あっと驚く仕掛けを用意したり、この感覚には何とも頭が下がる。

あっさりとしたどんでん返し、というか、種明かしが終わると、何事もなかったかのようにエンドクレジットになる下りはなかなかくせ者なのです。
こんな個性的な映画とれる人はやはりスパイク・リーの世界ですね。おもしろかったです