くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「悪夢探偵」

悪夢探偵

この「悪夢探偵」を作った塚本晋也監督は1960年生まれ、私と二歳違いなのだからいわゆる同年代というやつである。つまり、ウルトラマン鉄腕アトムなどで育った世代である。

そう思うと、もうちょっと感覚が似ていても良さそうなものであるが、どうも本日見た「悪夢探偵」ははまることができなかった。ちょっとスプラッター的すぎる、というのもあるが、hitomiがあまりにも演技下手!全く、どういうキャラクターを演じようとしているのか全然わからない。それは塚本晋也監督の演出ミスでもある。

一方の悪夢探偵である松田龍平、いつまでたっても父松田優作の暗いメンだけのイメージで登場してくる。松田優作は「太陽にほえろ!」でアクション俳優として登場したのである。それに「家族ゲーム」や「それから」などの映画にも出ているし「陽炎座」のような芸術系にも出ている。いいかげん、松田龍平を起用する側にも考え方を改めてほしいものである。

この「悪夢探偵」、夢の中に入る能力のある青年が悪夢を見て苦しんでいる人の夢の中に入ってその苦しみから解放してやるのかと思っていたら、そういうわけではない。ヒーロー像ではないのだ。そのあたり、先入観で見ていた性もあって、ちょっと入り込めなかった。
それはともかく、物語の本筋である夢で人を殺す超常的な殺人者(塚本監督自ら演じている)が、どんな形で現れて、どんなきっかけで、被害者に迫っていくのかという一番おいしい部分がほんのクライマックスでしか登場しない。それももう一つインパクトに欠ける。

だいたい、デジタル処理して、人の顔がゆがんだり、やたら手持ちカメラを多用して、不思議世界を作り上げようとしたり、冒頭の原田芳雄のシーンも全く生きてこないし、いったい、映画は奇妙な映像を乱発すれば個性的な独創性あふれる映画を作れると勘違いしているのではないだろうか?

いま、はまっているイングマール・ベルイマンの映像を見てみると、いかに独創性に富んでいるかが一目瞭然である。それはただ、クローズアップが多かったり、長回しが多かったりだけではないと思う。そのあたりをはき違えて、同じパターンで作り続けている塚本晋也監督はどうなのだろうか?

この「悪夢探偵」、「デスノート」同様、コミックの実写かと思っていたがそうではなくオリジナルらしい。オリジナルならそのアイデアはすばらしいと思う。それをどうして生かせないのだろう。
夢で人を殺すのは「エルム街の悪夢」ですでに存在するが、あれよりは数段みごとに発想していると思うのですが、なぜ、ああもちぐはぐなリズム感の悪い作品に仕上がったのでしょうね。

それぞれの登場人物の個性が見えてこない。それに一貫性もない。悪夢探偵のキャラクターの設定がインパクトに欠ける。殺人者の殺人の着かけが弱い。ラストの謎解きももう一つ頼りない。全体に演出にリズム感が整っていない。意味のないデジタル処理、手持ちカメラ、これらに一貫して貫かれて一本の作品としての仕上げるという意識がない。

こうして書いていくと、本当に駄作であるかのように聞こえるが、確かに駄作である。シリーズ第一作だというコメントがあったので、第二作ができるのか?それなら、hitomiははずすべきだ。

ぁぁいい映画が見たくなった。