「櫻の園」の中原俊監督の作品と会って、そして、最近結構渋く名手北津川雅彦さん、ミムラさん、主演とあって期待ありで見に出かけた。
物語は、この落語をすると必ず死ぬという題目「緋扇長屋」を演じるクライマックスを用意して、非凡ながら天才肌の落語家三々亭平佐(津川雅彦)と彼に弟子入りする、落語バカの少女香須美(ミムラ)のなんとも、ほほえましくも、コミカルな展開の物語。
とにかく、軽妙に物語が進んでいくのだが、そこは異端中原俊監督、どこか日活時代のB級的な素朴さを覗かせながら、気楽に、また一方で支障と弟子の細いようで暖かい絆なんかも織り交ぜての作品に仕上がっています。
なんといってもみどころはミムラの落語シーン、といっても高座で話すシーンはほんのわずかですが、公園で演じる「寿限無」のシーンは圧巻。まるで立て板に水を流すがごとく、自然と口をついて言葉が出てくるさまは、女優魂が生み出した演技の賜物シーンです。
一方の津川雅彦もまさに非凡な天才ながら、札付きの不良師匠を見事にコミカルに演じている様はさすが、ベテランとうなってしまう。
映像はでも技巧派でもない監督ゆえに、これといった芸術性は表立って見えませんが、小品ながら秀作と呼べるにふさわしいいい映画を完成させたと思います。
ラストシーン、堅苦しいと思われた益岡徹ふんする師匠も、粋な計らいで三々亭平佐師匠を賞するあたり、好感度抜群。見終わって、気持ちのいい作品でした