くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アンドレイ・ルブリョフ」

アンドレイ・ルブリョフ

アンドレイ・タルコフスキー監督の歴史大作である。
天才画家アンドレイ・ルブリョフの半生を描いた作品ということでみていたのだが、どちらかというと彼が生きた時代、土地柄の歴史の一ページを描いていく大河ドラマのようなストーリーでした。しかも、タルコフスキーならではの繊細な詩情あふれるシーンはほとんど見あたらず、これが大作だといわんばかりの壮大なシーンが続いていきます。

映画が始まると、なにやら気球らしきものをぼろ切れで作っているシーンから始まります。それに暖かい空気を送り込んで、あわや飛び上がろうとするときにカメラは一気に空中へ、そして一人の男が気球にぶら下がっています。空中をしばらく飛び回ったあげく地面に落下。そしてタイトルバックと、なかなか引き込むシーンの見事さはさすがにタルコフスキーならではの非凡なシーンで幕開けです。

続いて1400年のタイトルと物語が過去へ飛んだのか修道院の場面へ。ここからが本編で、アンドレイ・ルブリョフと仲間二人が歩く姿から始まるが、最初は全く物語や登場人物が把握できず訳のわからないままに映像を追うことになってしまった。
キネマ旬報のデータベースからストーリーを復習してようやくフィードバックしてこの作品を理解したような形になってしまった。

作中にタタール人が押し寄せる騎馬シーンがあるが、ここは黒澤明を信奉するタルコフスキーらしく、黒澤明監督作品の馬のシーンにどこかにているように見えたのは私だけだろうか。

いずれにせよ、昨日の「僕の村は戦場だった」などの初期のファンタジックな映像は見られずに、ひたすら大作を貫いてきた演出で、物量が注がれているのは納得できるが、といってタルコフスキーらしい映像を楽しむ形になっていないと思う。
クライマックスの釣り鐘を作るシーンはまさにスペクタクルの域であり、それに続くルブリョフが再び絵筆をとると告げるカットは見事なものであるが、どちらかというと凡々としていなくもない。

ラストはカラー画面になってアンドレイ・ルブリョフの絵画が延々と紹介され、さらにオーバーラップして雨の降りしきる中にたたずむ馬のシーンで幕を閉じる。