くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「闇の子供たち」

闇の子供たち

タイにおける外国人による幼児買春、臓器売買、その実態を衝撃的な物語として取り扱った梁石日の原作を阪本順治監督が映画化した作品がこの「闇の子供たち

冒頭、大きな満月がゆっくりと夜空を動く、背後に流れる心臓の鼓動のようなドンドンという効果音。
対のとある貧しい村から一人の少女が、いかにも胡散臭そうな男につれられて出てくる。すでに物語の本筋を知る私たちは、これが、人身売買された少女であり、連れている男がその仲買人であることを知る。

あまりにもショッキングに始まるオープニングから、子供たちを監禁した売春宿、それに群がる見るからに醜く太った外人、異常性愛者の夫婦、などなどが、なんのえんりょもなくドキュメンタリーのごとくスクリーンに映し出されていく。

一方で、日本から心臓移植でタイにやってくる日本人の情報と、その提供するタイの子供が実は生きたまま臓器を摘出されるという情報を聞き込んだ主人公の物語が絡んできて、ストーリーは徐々に核心に触れていくのです。

ところどころに見せる手持ちカメラのリアル感と、すこし、一歩下がったような始点で見せるカメラワークは、一方で虐待される子供をクローズアップで見せることで対比させ、胸に迫る映像となって、私たちに残酷な現実を見せてきます。

男くさい作品を得意とする阪本順治監督ですが、その骨太い演出が、かえって、このあまりにもむごくも汚れた現実の物語を、ある意味圧倒的な迫力に変えていきます。
しかもきっちりと練られた脚本。途中ワンシーンだけ見せるスローモーションの意味。なぜか、子供好きな主人公江口洋介の存在、一方で、感情的でストレートな登場人物として対比的に描かれる宮崎あおいを中心にした女性の登場人物。

<ここよりネタバレ>
すべてが、江口洋介の自殺、鏡に張り巡らされた新聞記事、江口の子供だと思わせるように物語に挿入された男の子供の写真、そして、清純派であるはずのイメージのある江口洋介の起用などをすべて明らかにするラストシーンの衝撃で、計算されつくされた物語展開と演出とはこういうものだと見せ付けてくるのがなんとも、すごい。一方でこの物語の現実に向き合ってしまった私の衝撃も並々ならぬものがありました。

宮崎あおい妻夫木聡江口洋介ともいい映画に出たと思います。
いい映画です。見ておいてほしい作品ですね