くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「MWームウー」

MW−ムウー

日本漫画界の巨人、手塚治虫が描いたサスペンス「MW−ムウー」。脚本は「デスノート」の大石哲也である。

冒頭からいきなり「デスノート」の導入シーンを思わせるスリリングな展開から物語が始まる。
タイのとある町で、誘拐事件が起こっている、そしてその被害者は日本人であるようで、その犯人の姿、それを追って日本から来た刑事石橋凌が端的に紹介されるのであるが、これにつづく犯人追跡シーンが、なぜかしつこいほどに長い。まるで「フレンチコネクション」を思わせるカーチェイスシーン、次々と刑事を巻いていく犯人(つまり玉木宏)が描かれるのであるが、ちょっとこだわりすぎのきらいがありました。
でも、ここで玉木宏石橋凌の出会いを描いたことでラストまでの展開がしっかりと見えてくるのも確かですね。

あとはもうノンストップで次々と、物語が進んで最後まで引っ張っていく迫力は「デスノート」とほぼ同じ。したがって「デスノート」を面白かった人なら、当然この「MW−ムウー」も面白いと思う。

物語が本題に進んでいくと登場する山田孝之演じる神父の存在、そして、ムウの謎を追う新聞記者、ムウの存在を隠蔽遷都する政治家たちの姿、それぞれが絡み合いながら、玉木宏の本当の目的とムウの謎を語っていく展開は、非常に面白い。
岩本仁志監督の映像感覚は独特で、時にスローモーション、時にデジタルストップシーン、そして俯瞰で空へカメラがパンしたりと縦横無尽にカメラワークと構図の妙味を見せてくるのは、テレビ監督ならではのテクニックですね。

ただ、あまりにも原作が壮大なドラマである成果、それぞれの登場人物が物足りないほど少ししか出てこないし、もったいないほど謎解きがわずかで、全体に細かくスピーディにまとまって面白いのですが、今ひとつ膨らみきれていません。思い切って原作のエッセンスのみをつかんでもよかったかもしれませんが、さすがに手塚治虫の作品を大胆にカットしづらいものがあったのでしょうか。

いろいろと理屈を書きましたが、サスペンスとしての面白さは「デスノート」を彷彿とされるほど面白く、二転三転する謎解きの展開は最近の日本映画ではトップクラスではないでしょうか。日本映画には少ないピカレスクロマンの傑作といってもいいかもしれないです。
もう一度見たくなるサスペンス、その面白さを満喫させてくれるエンターテインメントでした。